それでも、なぜ判断を間違える?
ファネルの外にある変化を探し、次の投資判断まで。データを増やすのではなく、見立てを更新する。

導入|その広告投資、本当に最適ですか?
CPAは改善した。サイトのCVRも上がった。それでも新規顧客の獲得は伸び悩み、リピート率の低さが気になる。こうした場面で、広告管理画面や自社のCRMだけを見直しても、次の打ち手が見つからないことがあります。
理由の一つは、顧客の行動が自社の管理する接点の外にも広がっているからです。まだ商品を知らない人が別カテゴリの情報を探している。以前は購入していた人が、競合商品や新しい暮らし方に関心を移している。こうした変化が、自社サイトへの訪問や購買として表れるとは限りません。
本記事では、IM-DMPの外部データ(3rd Party Data)と、データ・ディスカバリー・エージェント(DDA)による分析・仮説立案を組み合わせて、マーケティングの意思決定をどう変えられるか考えます。データ・ディスカバリー・エージェントとは、自然な言葉でデータに問いかけ、顧客の特徴の分析や施策の仮説づくりを支援するAIエージェント群のことです。
概念図:顧客の行動を完全に把握できることを意味しません。
なぜ、自社データだけでは顧客の変化を捉えきれないのか?

1st Party Dataでわかること・わからないこと
自社の1st Party Dataは非常に重要です。会員ランク、購入商品、購入間隔、サイト内の閲覧、メールへの反応は、実際に自社と接点を持った顧客を理解する確かな起点になります。一方、過去90日間に購入がない顧客を「休眠」と分類できても、その人が他社商品を比較しているのか、生活上の関心が変わったのか、そもそも商品を使い切っていないのかは、その分類だけではわかりません。
同様に、サイトから離脱した人が後日どんな情報に関心を寄せたか、認知段階にいる人が何を比較しているかは、自社の行動ログだけでは観測範囲が限られます。「見えない」とは顧客の行動が止まったことではなく、自社の観測範囲の外へ移った可能性があるという意味です。
ファネルの外で起きている顧客の行動
従来のファネルは、認知から比較、購入へと進む様子を整理するのに便利です。しかし実際には、生活者は商品カテゴリをまたぎ、検索、動画、記事、テレビなど複数の接点を行き来します。購入後も再検討や離反、別商品の購入といった変化が続きます。

だから、ファネルの入口を増やすことと同じくらい、ファネルに入る前の人を発見すること、そして購入後も適切な接点を保つことが重要になります。これは顧客を過剰に追いかけることではありません。「今、誰に何を届ける意味があるのか」を判断するための材料を増やす考え方です。
外部データは意思決定をどう変えるのか?

自社データと外部データの役割
役割を整理すると、自社データは「当社との関係のなかで何をしたか」を表し、外部データは「その外側にどのような属性・関心・行動傾向が見られるか」を補う材料になります。たとえば同じライト顧客でも、健康維持への関心が特徴的な集団と、食事の時短に関心を持つ集団では、同じ商品を再提案するより異なる訴求を試した方がよい可能性があります。
外部データを足せば一人ひとりの購買理由がわかるわけではありません。それでも、複数の集団を比べることで、次に試すべき仮説を絞り込めます。
| 保有データ | 既にわかること | 外部データによって検討しやすくなること |
|---|---|---|
| 購入履歴 | 何を、いつ買ったか | 同じ購入層の外部関心の違い |
| 会員ランク | 購入実績の多寡 | ランク別の特徴的な関心カテゴリ |
| サイト来訪 | どのページを見たか | 来訪者全体と他集団の属性・行動の差 |
| 広告CV | どの広告で購入したか | CVした人の傾向と新たな獲得候補 |
セグメント単位から始める顧客理解
最初から個人単位の複雑なID連携を目指す必要はありません。利用目的や契約条件を確認しつつ、GA4などで定義した集団と、IM-DMPのセグメント情報を適切な方法で比較するアプローチも考えられます。重要なのは、実務で使える分析単位を決めることです。匿名化・集計であっても、個人情報保護法や同意・契約条件の確認が不要になるわけではありません。
自社データのリッチ化に役立つIM-DMPの活用例
今回の実データ検証では、ある通販サイトのWeb行動ログとDMP属性を共通UIDで照合し、注文完了ページに到達したUIDの9割超で紐づけが成立しました。対象環境における技術検証の結果であり、本人の一致精度や購入の確定、F2転換の予測精度を意味しません。顧客単位の購買分析には別途、会員ID・確定受注履歴などとの連携が必要です。
一致率であり、本人識別の精度・確定購入・予測モデルの正確さではありません。
DDAの対応するエージェントへ自然言語で問いかけ、集団ごとの特徴を整理します。分析値に差が見られた場合には、そこから「この切り口の訴求を試そう」という施策仮説に落とし込みます。仮説の有効性は、その後の広告やCRM施策で確かめます。
DDAで変わる、データ分析から施策立案までのプロセス
DDAは、データソースと連携して顧客セグメントの抽出や施策案の検討を支援するAIエージェントの構想です。インティメート・マージャーはDDAを2025年に発表し、2026年にはデータ活用環境を自動設計するダッシュボードの提供も発表しています。どちらも「分析そのもの」より「データから意思決定につなぐ」点が重要です。

実務では「健康食品に関心がある集団の特徴は?」「購入者と非購入者で何が違う?」「次に試す訴求を3案挙げて」と問いかけ、返ってきた分析結果を人間が確認するという進め方ができます。ただし、具体的なデータ参照権限や利用できる分析はエージェント・環境ごとに異なります。
実演では、IM-DMPのオンライン関心をDDAで集計し、「健康・医療」関心セグメントの外から重複除去後796,925 UIDの潜在ターゲット候補を発見しました。そこからAIエージェントが3グループ計6つの広告訴求案を作成し、さらに1グループについて2種類のバナー・LP訴求案とA/Bテスト計画まで具体化しました。ここまでが今回の実演成果であり、広告配信による成果改善は未検証です。
UIDは実人数ではありません。広告配信による成果は未検証です。
外部データ×AIが変える3つの投資判断

① 新規顧客:誰に広告投資するか
既存のターゲット条件のなかだけで配信を最適化すると、潜在顧客の発見が後回しになります。IM-DMPの外部関心データを用いて、従来の顧客像と異なる集団を比較し、新しい訴求の優先順位を考えます。これは「潜在顧客の発掘に役立つIM-DMPの活用例」です。詳しい分析の進め方は、記事末尾の関連記事カードからご覧いただけます。
② F2転換:どの広告を伸ばすか
CPAが高い広告でも、2回目の購入につながる割合が高ければ、将来の利益で見た評価が逆転する可能性があります。そこで挑戦したいのが、初回購入時点で使える自社データと外部データから、F2転換の予兆を推定し、許容CPAを合理的に見直す考え方です。ただし、F2の購買実績に基づく学習・予測モデルの開発と精度検証は現時点ではPoC構想です。F2転換を扱う関連記事で、検証の設計を詳しく紹介します。
③ TV広告:追加投資で利益は増えるか
テレビCMの新規獲得CPAだけで判断すると、指名検索への波及や既存顧客の継続購入への影響を見落とす可能性があります。テレビ視聴データ×DMPの突合では、約300万UIDの共通識別子が確認でき、将来的には購買履歴と比較群を用いて増分利益の検証にトライします。目指すのはテレビ広告の正当化ではなく、追加予算によって利益が増えるかを判断できる状態です。テレビ広告を扱う関連記事で詳しく紹介します。
小さく始めるPoC:判断を変えるための3ステップ
第一に、決めたい意思決定を一つ選びます。「次の新規獲得ターゲット」「伸ばす広告訴求」「テレビ広告の追加出稿」などです。第二に、その判断に必要なデータがそろっているか確認します。第三に、AIの分析・仮説に対して、どの実績で答え合わせをするかを事前に決めます。

分析時間を短縮することと、事業成果が改善することは別の指標です。前者は実演で示しやすく、後者には実施後の検証が必要です。両方を区別すると、PoCのゴールが明確になります。
まとめ|データの量ではなく、判断の質を変える
自社データに外部データを組み合わせ、AIで仮説づくりを速めることは、マーケティングファネルの外にある顧客の動きを理解する一つの方法です。しかし、データを追加しただけでは収益は増えません。発見を施策に変え、結果を検証して、次の投資判断を改善してこそ価値になります。
番外編|iM(アイム)くんの休日
冷蔵庫の外部データ
休日、iM(アイム)くんは冷蔵庫の前で腕を組んでいた。牛乳がない。いつもなら「在庫ゼロ」で買いに行くところだが、今日は外部データの研究中らしい。
牛乳がない。でもコンビニの棚まで調べれば、次の一手が見えるはず!
それで、牛乳を買ったの?
いや、近隣3店舗の品ぞろえを比較しているうちに、おやつの時間になっちゃった。
顧客理解の前に、自分の空腹を理解したら?
データは便利。でも、買い物リストを作るのは自分。

外部データとAIの活用を、東京・福岡の会場でご紹介します。各会場の出展内容は公式案内をご確認ください。
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iM(アイム)くん|IMマーケティングニュースのデータ活用ナビゲーター
好奇心旺盛で、いつも前向き。「まずやってみよう!」がモットーなんだ!
IM-DMPをはじめとするデータやAIの活用方法を、マーケティングの身近な課題や具体例を交えながらわかりやすく解説するよ。
冷静で分析が得意なパートナー・Mia(ミア)と一緒に、データから新しい仮説やインサイトを発見し、マーケティングの次のアクションにつなげていくんだ!





