2026年10月、Webサイトや業務システムで広く使われるプログラミング言語「PHP」の重大な脆弱性が公表されました。悪用された場合、外部から不正なコードを実行されるおそれがあり、自治体などでは安全確保のため一部サービスを予防的に停止する動きもありました。なお、こうした停止措置は情報漏洩が実際に起きたことを意味しません。例えば東京都港区は、10月30日時点で今回の脆弱性に起因する個人情報の漏洩等は確認されていないと公表しています。
このニュースは、システムの安全性だけでなく、企業が抱えるデータのあり方を考えるきっかけにもなります。
企業が保有する顧客データは、本当に多ければ多いほど価値があるのでしょうか?
CRMの顧客件数が増えた。メール配信リストも充実した。では、その中で実際に活用されているデータと、何年も使われていないデータを区別できているでしょうか。
データは企業の資産です。ただし、保有するだけで価値が生まれるわけではありません。管理コストや漏洩時の影響も踏まえ、「どれだけ持っているか」ではなく「何のために、どのデータを使うのか」を再設計する視点が必要です。
もちろん、PHPの脆弱性そのものはソフトウェアの更新など適切なセキュリティ対策で対処すべき問題です。データ保有を減らすことが、その代わりになるわけではありません。そのうえで、「本当に必要な情報だけを、必要な目的のために保有する」という問いも、いま見直す価値があります。
この記事では、こうした問題意識を出発点に、インティメート・マージャーが提唱する「個人情報レスマーケティング」という新しいデータ活用の選択肢を考えます。
顧客データは「多いほど価値がある」のか?
メールアドレス、商談履歴、購入履歴、Web行動などの1st Party Dataは、企業と顧客の関係を理解するうえで重要です。一方、データが増えるほど、利用目的の把握、アクセス権限の管理、情報更新、保存方針の確認にも手間がかかります。
例えば、メールを長期間開封していない顧客がいたとしても、即座に「価値がない」と決めつけることはできません。担当者が変わっただけかもしれず、将来の購入機会が残っているかもしれません。ただし、反応の有無を確かめず一律に保有し続ければ、管理の必要性を説明しにくくなります。
データの価値は、件数ではなく利用目的・利用可能性・成果・負担の組み合わせで考える必要があります。
保有に伴う3つの負担
| 観点 | 現場で起こりやすい課題 | 判断の問い |
|---|---|---|
| セキュリティ | 権限管理や漏洩対策の対象が広がる | この情報を持つ必要性は明確か? |
| 運用・費用 | CRM・MAの契約費、名寄せ、更新作業が発生 | 活用価値に見合う負担か? |
| 施策品質 | 古い宛先や不要な配信が顧客体験を損ねる | このデータは適切な接点につながるか? |

個人情報保護委員会のガイドラインでも、利用する必要がなくなった個人データは遅滞なく消去するよう努めることが示されています。一律の保存期限が定められているわけではなく、利用目的や法令上の保存義務などを踏まえた判断が必要です。
保有すべきデータをどう見極めるか
最初からシステムを入れ替える必要はありません。次の4つをデータ種別ごとに見える化するところから始めます。
- 利用目的:どの顧客体験、施策、業務、法令対応に必要か。
- 利用実績:過去一定期間でいつ、誰が、何に使ったか。
- 成果と代替案:保有が必要なのか、集計値や外部データで足りるのか。
- リスクと負担:漏洩時の影響、権限管理、費用、維持作業はどうか。
例えば「メールアドレスは個別連絡のために必要だが、見込み顧客の市場規模把握には集計データで足りる」という整理も可能です。目的に対して情報の持ち方を変えることが、再設計の第一歩です。
「個人情報レスマーケティング」という選択肢
インティメート・マージャーでは、氏名・メールアドレスなど個人を直接識別できる情報への依存を抑え、適法に利用できるID、行動・興味関心データ、統計情報などを目的に応じて活用する考え方を、「個人情報レスマーケティング」と呼びます。これは当社が提唱する名称です。
「個人情報を一切扱わない」「匿名なら無条件に利用できる」という意味ではありません。Cookieや端末識別子も、利用方法や他の情報との照合状況によって、個人情報または個人関連情報としての取扱いが必要です。
考え方の核心は、マーケティングを成立させるために、企業自身がすべての直接識別情報を保有する必要があるのかを問い直すことです。
自社データを補完するIM-DMPの活用例
インティメート・マージャーのIM-DMPは、属性や興味関心などの外部データを用いたセグメント設計を支援します。自社のCRMに詳しい個人属性を蓄積するだけでなく、課題に合う市場や見込み層の傾向を捉えるために外部データを使う、という発想です。
どのデータをどのように連携・利用できるかは、契約、同意、利用目的、媒体・技術仕様などの条件により異なります。データが増えれば必ず成果が上がるわけではなく、改善仮説を検証することが欠かせません。
小さく始めるPoC:何を比べるか
初回のPoC(概念実証)は、大規模なデータ移行よりも一つのマーケティング目的に絞った比較が適しています。
例えば「既存の顧客リストだけで設計した施策」と「目的に合う外部データを参照した施策」を比較し、対象リーチ、反応、運用工数、リスク対応の必要性を整理します。施策効果を比較する場合は、対象・期間・配信条件の差もそろえます。
成功の定義は、必ずしもCPA改善だけではありません。「追加保有すべき情報が減った」「どの情報が成果に寄与するか分かった」といった意思決定の前進も検証対象になります。
まとめ|データの量より、判断の質を高める
顧客データを減らすこと自体が目的ではありません。必要なデータは守って活かし、不要な保有を見直し、足りない視点を適切な外部データで補えるか確かめる。 それがデータ活用を経営判断につなげる道筋です。
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参考資料・出典
- 情報処理推進機構(IPA)「PHPの脆弱性対策について(PHP2shell)」2026年10月22日公開、11月2日更新 https://www.ipa.go.jp/security/security-alert/2026/alert20261022.html
- 東京都港区「PHPの重大な脆弱性への区の対応状況」(2026年10月30日現在) https://www.city.minato.tokyo.jp/senryakukouhou/phptaiou202610.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 個人情報保護委員会「Cookie等の端末識別子は個人関連情報に該当しますか」 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q8-1/
- インティメート・マージャー「IM-DMPとは」 https://dmp.intimatemerger.com/service/materials/

iM(アイム)くん|IMマーケティングニュースのデータ活用ナビゲーター
好奇心旺盛で、いつも前向き。「まずやってみよう!」がモットーなんだ!
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冷静で分析が得意なパートナー・Mia(ミア)と一緒に、データから新しい仮説やインサイトを発見し、マーケティングの次のアクションにつなげていくんだ!


