「生成AIを業務に取り入れたいが、どのデータを使えばよいのか分からない」「CRMやSFAには情報があるものの、部署ごとに分かれていて活用できない」「AIに自社データを使わせたいが、入力してよい情報の範囲が整理されていない」。
企業のAI活用では、AIツールの選定より前に、このようなデータ活用の土台を確認する必要があります。
データ活用とは、データを集めたり可視化したりすることだけではありません。必要なデータを使って判断し、マーケティングや営業などの施策を変え、その結果を次の判断へ戻すところまで含めて考えることが重要です。
本記事では、ポッドキャスト「データの神様」で提示されている「データの価値はどこにあるのか」という問題意識も参考にしながら、企業がAI活用を進める前に確認しておきたいポイントを、データ活用チェックリストとして7つに整理します。
データ活用チェックリスト|AI活用前に確認したい7つのポイント
企業がAI・データ活用を始める際に、最初から大規模なデータ基盤を完成させる必要はありません。
一方で、少なくとも「何のために使うデータなのか」「どのデータを信頼するのか」「AIや分析結果を誰がどう判断へ使うのか」が曖昧なままでは、ツールを追加しても実務につながりにくくなります。
まずは、以下の7項目を確認してみてください。
| 確認項目 | チェックする内容 | 未整備の場合に起こりやすいこと |
|---|---|---|
| 目的 | データを使って何を判断したいか明確か | 分析やAI利用そのものが目的になる |
| データの所在 | 必要な情報がどこにあるか把握できているか | 使えるデータを探す作業に時間がかかる |
| データ品質 | 欠損・重複・更新日・定義を確認しているか | 誤った前提で分析やAI処理を行う |
| データ接続 | 必要なデータ同士を組み合わせられるか | 顧客や施策を一つの数字だけで判断する |
| 判断・実行ルール | 結果を見たあと誰が何をするか決まっているか | レポートを作って終わる |
| AI・データ管理 | 利用範囲、権限、人による確認ポイントが明確か | 入力してよい情報やAIの利用範囲が曖昧になる |
| 改善サイクル | 施策結果を次の分析・判断へ戻しているか | 同じ分析を繰り返し、判断精度が蓄積されない |
チェックできない項目が多い場合は、AIツールを増やすより先に、データと業務の流れを整理したほうが進めやすいケースがあります。
なぜAI活用前にデータ活用の状態を確認する必要があるのか
生成AIは、文章作成、要約、分類、比較、仮説作成など、多くの業務を支援できます。
しかし、「どの顧客を優先すべきか」「自社でどの施策が成果につながっているか」「どの顧客課題が増えているか」といった自社固有の問いに答えるには、自社の顧客・営業・マーケティング・商品に関するデータが重要になります。
例えば、AIへ「BtoB企業の営業施策を考えて」と依頼すれば、一般的な施策案は生成できます。
一方で、以下のような情報を組み合わせれば、より自社の状況に近い仮説を検討できます。
- 過去の問い合わせ内容
- 商談履歴
- 失注理由
- Webサイト上の閲覧行動
- 検索クエリ
- 資料ダウンロードやウェビナー参加履歴
- 広告やメールへの反応
- 企業属性
- 外部で高まっている興味・関心
つまりAI時代のデータ活用では、「AIを使えるか」だけではなく、AIや担当者が判断に使えるデータが、適切な状態で流れているかを確認することが重要です。
Podcast「データの神様」から考える、データの価値はどこにあるのか
ポッドキャスト「データの神様」では、番組そのものの問いとして「データに神様は宿るのか」「データに神様がいるならば、それはどこにいるのか」という問題提起が置かれています。
第1回のタイトルも「第一回・データの神様どこにいる?」です。
ここから企業のデータ活用を考えると、「データを持っていること自体が価値なのか。それとも、別の場所で価値が生まれるのか」という問いに置き換えられます。
なお、以下は第1回出演者の個別発言を逐語的に要約したものではありません。確認できる番組の問題提起を、企業のデータ活用というテーマへ編集上置き換えて整理しています。
データ量ではなく「判断まで流れているか」を見る
CRMに何万件もの顧客情報が蓄積されていても、マーケティングや営業の担当者が利用できず、施策の判断にも反映されていなければ、事業で利用できる価値は限定的です。
反対に、データ量が多くなくても、顧客の行動を確認し、施策を変更し、実施結果を記録する流れがあれば、データは意思決定の材料として機能します。
確認したいのは、データ件数だけではありません。
- どこから取得したデータなのか
- 何を表すデータなのか
- いつ更新されたのか
- 誰が使うのか
- 何の判断へ使うのか
- 利用した結果をどこへ戻すのか
まで含めて考える必要があります。
一つの数字を「顧客の答え」にしない
BtoBマーケティングでは、サイト閲覧数、資料ダウンロード、メールクリック、リードスコアなど、一つの数値だけで顧客の状態を説明することは難しい場合があります。
例えば同じ企業でも、次のような情報があります。
- 企業規模や業種などの属性
- 自社サイトでの閲覧行動
- 過去の問い合わせや商談
- ウェビナーやメールへの反応
- 営業担当者が把握している課題
- 外部での興味・関心の変化
複数の情報を組み合わせることで、顧客をより立体的に理解しやすくなります。
AI時代ほど「何を判断したいのか」が重要になる
AIによって大量のデータを整理・要約しやすくなると、「使えるデータはすべてAIへ渡せばよい」と考えてしまうことがあります。
しかし、目的が曖昧な状態では、分析結果や仮説が大量に生成されても、次の行動を決めにくくなります。
AI活用の前に、例えば以下のような問いを設定します。
- 問い合わせにつながりやすい記事テーマを知りたい
- 今アプローチすべき企業を絞りたい
- 失注企業へ再度接触するタイミングを判断したい
- 顧客から増えている課題を商品改善へ反映したい
「AIで何ができるか」ではなく、「どの判断を改善したいか」から考えることが、AI データ活用の出発点になります。
企業のデータ活用で確認したい7つのポイント
目的|何を判断するためのデータなのか
最初に確認したいのは、データ活用の目的です。
「データドリブンな会社にしたい」「AIを使いたい」といった大きな目標だけでは、必要なデータや担当者を決めにくくなります。
まずは、一つの問いへ絞ります。
- どの記事テーマを優先して制作すべきか
- 営業が優先すべき企業はどこか
- 商談化しやすいリードにはどのような特徴があるか
- どのウェビナーテーマが商談へつながっているか
- 顧客が導入を見送る主な理由は何か
目的が決まると、「本当に必要なデータは何か」を逆算しやすくなります。
データの所在|必要な情報がどこにあるか
次に、社内外にどのようなデータがあるかを棚卸しします。
| データ | 主な例 | 確認しやすいこと |
|---|---|---|
| 顧客・取引データ | CRM、SFA、契約履歴 | 顧客属性、自社との関係、過去接点 |
| Web行動データ | アクセス解析、閲覧ページ、流入元 | サイト内での興味・関心 |
| マーケティングデータ | 広告、メール、資料DL、ウェビナー | 施策に対する反応 |
| 営業データ | 商談記録、質問、失注理由 | 具体的な顧客課題や判断基準 |
| 定性データ | インタビュー、アンケート自由回答 | 背景、理由、文脈 |
| 外部データ | 企業情報、統計、外部行動・関心データなど | 自社接点外の市場・顧客状況 |
すべてのデータを集める必要はありません。目的に必要な情報から確認します。
データ品質|欠損・重複・古さ・定義を確認する
AIを利用する場合も、入力するデータの品質は重要です。
最低限、次の項目を確認します。
- 同じ企業や顧客が重複して登録されていないか
- 必要な項目が欠けていないか
- 更新日が古すぎないか
- 企業名や業種などの表記が統一されているか
- 取得元が分かるか
- 部門ごとに用語の意味が異なっていないか
例えば、マーケティング部門の「リード」と営業部門の「有効リード」の意味が異なる場合、同じ数字を見ていても判断がずれる可能性があります。
AIへデータを渡す前に、データそのものだけでなく、データの定義を揃えておくことも重要です。
データ接続|一つのデータだけで判断しない
企業のデータ活用では、データを一つのシステムへ完全統合することだけが正解ではありません。
重要なのは、判断に必要な情報を必要なタイミングで組み合わせられる状態です。
例えば営業対象企業を選ぶ場合、次の情報を組み合わせる方法があります。
- 企業属性
- CRM上の過去接点
- サイト閲覧履歴
- 資料ダウンロード
- ウェビナー参加
- 営業担当者のメモ
- 外部の関心データ
最初からCDPや大規模なデータ基盤を構築しなくても、対象企業や対象施策を限定して手動でデータを組み合わせ、効果を検証することもできます。
判断・実行ルール|データを見たあと何をするか
データ活用で止まりやすいのが、「分析」から「判断」へ移る部分です。
レポートで「この数値が上がりました」と報告しても、その後の対応が決まっていなければ業務は変わりません。
例えば、次のように判断条件を具体化します。
- 特定テーマの検索表示が増えたら、関連記事候補を検討する
- 既存リードの特定テーマ閲覧が増えたら、営業担当へ共有する
- 商談で同じ質問が増えたら、記事やFAQを追加する
- 失注理由が特定項目へ集中したら、営業資料やサービス説明を見直す
さらに、「誰が判断するのか」「誰が実行するのか」「いつまでに確認するのか」まで決めます。
AI・データ管理|何をAIへ渡し、どこを人が確認するか
AI活用では、利用するデータの範囲と人による確認ポイントも整理します。
- どのデータをAIへ入力するのか
- 個人情報や機密情報を含むか
- どのAI環境を利用するのか
- 誰がデータへアクセスできるのか
- AIの出力を誰が確認するのか
- AIへ任せる範囲と人が判断する範囲はどこか
例えばAIが営業対象企業を抽出する場合でも、「AIが高スコアを付けた企業へ自動で連絡する」のではなく、営業担当者が理由や過去接点を確認してから対応する設計も考えられます。
AIは判断を支援する有効な手段ですが、どこまでを自動化し、どこで人が確認するのかを業務ごとに決めることが重要です。
改善サイクル|実施結果を次のデータへ戻す
最後に確認したいのが、施策結果をデータへ戻す仕組みです。
例えばAIやスコアリングによって「営業すべき企業」を選んだのであれば、その後の結果も記録します。
- 実際に接触できたか
- 想定していた課題は合っていたか
- 商談へ進んだか
- 対象外だった場合はなぜか
- 提案内容は適切だったか
SEOやコンテンツマーケティングでも同様です。
検索順位やPVだけでなく、「問い合わせへつながったか」「セミナーへ遷移したか」「営業で利用されたか」まで確認すると、次に制作・改善すべきコンテンツの判断材料を増やせます。
データ活用は、一度分析して終わるプロジェクトではありません。
データ取得 → 分析 → 判断 → 実行 → 結果記録 → 次の判断という循環を作ることが重要です。
自社のAI・データ活用を、実務へどう落とし込むか確認したい方へ
データ活用では、ツール選定だけでなく、顧客データ、外部データ、AI、マーケティング・営業業務をどのようにつなぐかが重要です。IMデジタルマーケティングニュースでは、AI・生成AI、データ活用、顧客理解、BtoBマーケティングなどをテーマに、実務担当者向けのセミナー・ウェビナー情報を掲載しています。
チェック結果から考えるデータ活用の始め方
7項目を確認した結果、すべてが整っていなくてもAI活用を諦める必要はありません。
重要なのは、自社の不足している部分を把握し、対象業務を限定して改善することです。
| チェック状況 | 考えられる状態 | 次の進め方 |
|---|---|---|
| 6〜7項目 | 目的・データ・運用が比較的整理されている | 対象業務を限定したAI活用やPoCを検討する |
| 3〜5項目 | 一部のデータや運用ルールが分断されている | 不足項目を絞り、既存データの接続や判断ルールを整える |
| 0〜2項目 | データ収集・可視化が中心で、利用目的が整理されていない可能性がある | ツール追加より先に「改善したい判断」を一つ決める |
この点数は成熟度を厳密に評価する指標ではなく、社内で議論を始めるための目安です。
データが少ない企業は何から始めればよいか
データ活用という言葉から、大量の顧客データや高度な分析基盤が必要だと考えることがあります。
しかし、初期段階では対象を限定したほうが検証しやすくなります。
一つの問いを決める
例えば「問い合わせにつながりやすいコンテンツテーマを知りたい」と決めます。
関連する3種類程度のデータを見る
検索クエリ、記事別コンバージョン、営業や問い合わせで聞かれている質問など、問いに近いデータを確認します。
仮説を一つ作る
例えば、「AIエージェントの記事閲覧者は、一般的なAI記事閲覧者よりBtoB営業に関する具体的な情報を求めているのではないか」と仮説化します。
施策を一つ変える
関連記事、CTA、セミナー導線、営業資料などを変更します。
結果を確認する
PVだけでなく、遷移、問い合わせ、商談、営業利用など、目的に近い結果を確認します。
この小さなサイクルを回したうえで、必要に応じてデータ種類や対象部署を広げていく方法が現実的です。
BtoBマーケティング・営業ではデータ活用をどう使えるか
マーケティング|「誰に何を伝えるか」を決める
検索クエリ、サイト閲覧、資料ダウンロード、ウェビナー参加などを組み合わせることで、関心の高まっているテーマを整理できます。
さらに問い合わせ内容や商談質問と照合すると、「検索されているテーマ」と「実際の顧客課題につながっているテーマ」を分けて考えやすくなります。
営業|「誰にいつ連絡するか」を判断する
CRMにある企業属性や過去接点だけでなく、現在のWeb行動や興味・関心情報を組み合わせることで、営業対象の優先順位を検討できます。
ただし、単一のスコアで購買意欲を断定するのではなく、企業適合度、関心度、過去の関係、タイミングなどを分けて確認することが重要です。
SEO・コンテンツ|検索データと顧客課題をつなぐ
SEOでは検索ボリュームやSearch Consoleの表示回数だけでテーマを決めることもできます。
一方で、営業現場で増えている質問、問い合わせ内容、セミナー参加者の課題などを組み合わせれば、事業成果へ接続しやすいコンテンツテーマを見つけられる可能性があります。
まとめ|AI活用の前に「データが判断まで流れているか」を確認する
企業のデータ活用では、データ量やツールの多さだけで成熟度を判断することはできません。
AI活用前に確認したいのは、次の7項目です。
- 目的:何を判断したいのか
- データの所在:必要な情報はどこにあるのか
- データ品質:信頼できる状態か
- データ接続:複数の情報を組み合わせられるか
- 判断・実行:結果を見たあと誰が何をするのか
- AI・データ管理:どこまでAIへ任せ、人が確認するのか
- 改善:実施結果を次の判断へ戻せるか
AIの性能が高まるほど、「大量のデータを処理できるか」だけではなく、何を判断するために、どのデータを、どの業務へ使うのかを設計することが重要になります。
最初から完璧なデータ基盤を目指す必要はありません。まず一つの業務課題を決め、必要なデータを整理し、判断と実行、その結果の記録まで小さくつなぐことがデータ活用の始め方になります。
AI・データ活用の具体的な事例や進め方をさらに知りたい方へ
AI・データ活用では、顧客理解、外部データ、営業・マーケティング連携など、目的によって必要な設計が異なります。IMデジタルマーケティングニュースでは、AIやデータ活用を実務へ取り入れるための最新セミナー・ウェビナー情報をまとめています。
データ活用に関するよくある質問
データ活用は何から始めればよいですか?
最初に「何を判断したいのか」を一つ決めることがおすすめです。データを集めることから始めるのではなく、営業対象の優先順位、コンテンツテーマ、失注理由など、改善したい判断を決め、その判断に必要なデータを整理します。
AI活用前にデータ基盤を完成させる必要がありますか?
必ずしも大規模なデータ基盤を完成させてから始める必要はありません。特定の業務や顧客群に対象を絞り、必要なデータだけを手動で組み合わせてPoCを行う方法もあります。
データが少なくてもAIを活用できますか?
活用できる場合があります。少量でも、自社の問い合わせ、商談、顧客の声、Web行動など、目的に関連するデータがあれば仮説づくりや整理に利用できます。ただし、データ量が少ない場合はAIの出力を事実と捉えず、仮説として検証することが重要です。
社内データだけでデータ活用はできますか?
目的によっては可能です。ただし、自社データは既存顧客や過去接点のある企業に偏りやすいため、潜在顧客や市場全体を理解したい場合は、統計、企業情報、検索傾向、外部の関心データなどを組み合わせる選択肢があります。
データ活用の担当者は誰にすべきですか?
データ分析担当者だけに任せるのではなく、実際に判断や施策を行うマーケティング、営業、商品企画などの担当者を含めることが重要です。AIや個人情報、機密情報を扱う場合は、必要に応じて情報システム、セキュリティ、法務などとも利用条件を確認します。

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