「ChatGPTや生成AIから、どれくらい自社サイトへ流入しているのか」。AI検索への対応を進めると、まず確認したくなるのがAI経由のセッション数ではないでしょうか。
AI検索から実際にWebサイトへ訪問したユーザーは、GA4などを使って一定範囲で計測できます。しかし、AI検索の影響を流入数だけで判断すると、顧客がWebサイトを訪れる前にAI上で行った情報収集や比較検討を見落とす可能性があります。
AI検索では、ユーザーが複数のWebサイトを自分で回る代わりに、AIが情報を収集・整理し、候補や比較結果を提示する場面があります。そこで企業名や商品を知ったユーザーが、AIからリンクをクリックせず、後日指名検索や直接訪問、問い合わせへ進むことも考えられます。
本記事では、海外AdTech企業ID5が2026年に提起した「Identity Gap」という考え方を一次情報の一つとして参照しながら、AI検索からの流入、その前後にある顧客行動、Identity、インテントデータ、CRM/SFAをどのようにつなげて考えるべきか整理します。
- 結論|AI検索の流入は「顧客理解の一部分」として見る
- AI検索からの流入とは何か
- AI検索から流入しなかった顧客は見えにくい
- ID5が指摘する「Identity Gap」とは
- 「37%がAIから検索開始」という数字はどう見るべきか
- 2026年は「AI上の表示」と「AIからの流入」を分けて確認しやすくなっている
- IM視点ではIdentityだけでなく「顧客の状態」を考える
- AI検索前後の顧客理解を5段階で考える
- AIエージェントが比較・購入する時代には何を計測するのか
- 日本企業では「AI流入」からCRM・営業までつなげて考える
- AI検索時代の顧客理解チェックリスト
- まとめ|AI検索流入は「入口の数字」ではなく顧客理解の一つのシグナル
- FAQ
結論|AI検索の流入は「顧客理解の一部分」として見る
AI検索からの流入は、AI検索施策を評価するうえで重要な指標です。ただし、AI検索が顧客の意思決定へ与えた影響のすべてを表す指標ではありません。
AI検索時代には、少なくとも次の段階を分けて確認する必要があります。
- AI上で自社や自社コンテンツが表示・参照されたか
- AIからWebサイトへ実際に流入したか
- 流入後にどのコンテンツを閲覧したか
- 顧客の関心や検討度に変化が見られるか
- 指名検索、資料請求、問い合わせ、商談などにつながったか
つまり、「AIから何セッション来たか」だけを見るのではなく、AI上の可視性からWeb行動、インテント、CRM/SFA、最終成果までをつなげることが重要です。
AI検索からの流入とは何か
AI検索からの流入とは、ChatGPTなどのAIアシスタントや生成AIを利用した検索体験から、ユーザーがリンクをクリックしてWebサイトへ訪問したアクセスを指します。
英語圏では「AI referral」「LLM referral」などと呼ばれることもあります。
2026年5月、Google AnalyticsにはChatGPT、Gemini、Claudeなど、認識されたAIアシスタントからのアクセスを分類する「AIアシスタント」チャネルが追加されました。
これにより、外部AIアシスタントからクリックされた後のアクセスについては、従来より確認しやすくなっています。
一方で、Google検索内のAIによる概要やAI Modeは、GA4の「AIアシスタント」チャネルとは別に扱われます。
さらに重要なのは、GA4で確認できるのは基本的に「Webサイトへ来た後」の行動だという点です。
AI検索から流入しなかった顧客は見えにくい
例えば、見込み顧客がAIに「BtoB向けのAI検索対策には何があるか」と質問したとします。
AIが複数の記事を参照し、企業や施策を比較して回答したとしても、ユーザーが自社サイトへのリンクをクリックしなければ、その時点ではGA4上のセッションは発生しません。
その後、ユーザーが企業名を覚えてGoogleで指名検索したり、URLを直接入力したり、別の経路でサービスページへ訪れたりする可能性があります。
この場合、最終的なWebアクセスだけを見ると、AI検索がその前段階で果たした役割を把握しにくくなります。
| 確認する段階 | 分かること | 主な確認方法 | 見えにくいこと |
|---|---|---|---|
| AI上の可視性 | AI回答や生成AI検索で自社情報が使われているか | Search Consoleの生成AI検索関連データ、AI上の定点確認 | その情報を見た人の全行動 |
| AI referral | AIからWebサイトへクリックされたか | GA4 | クリックしなかったユーザー |
| サイト内行動 | 訪問後に何を読んだか | GA4、サイト行動データ | 訪問前の比較検討 |
| 関心・検討度 | 何に関心を持ち、検討が変化しているか | Web行動、インテントデータ、MAなど | 行動だけでは分からない背景・理由 |
| 事業成果 | 資料請求、問い合わせ、商談、受注など | CRM、SFA、営業データ | 各接点の厳密な寄与度 |
AI検索の効果測定では、一つの数字にすべてを集約するより、この段階を分けて観察する方が実態を把握しやすくなります。
ID5が指摘する「Identity Gap」とは
海外AdTech企業のID5は、2026年3月に公開した「The 2026 Identity Gap: Is Your Strategy Built for Machines?」で、AI検索やAIエージェントが普及することで、従来のIdentityと購買行動の間にギャップが生じる可能性を問題提起しています。
ID5はDigital Identity関連技術を提供する企業であるため、以下は業界全体で確定した事実ではなく、ID5側の問題提起として捉える必要があります。
ID5が注目しているのは、AIがサイト訪問より前に情報収集や推薦を行うことで、従来Webサイト上で発生していた広告接触、ユーザー識別、行動計測などが発生しないケースです。
従来であれば、検索結果からWebサイトを訪問し、ページ閲覧や広告接触などのシグナルが残りました。
しかし、AIが複数サイトから情報を収集して回答を作り、ユーザーがその回答だけで候補を絞り込めば、企業側からは比較検討の一部が見えなくなります。
ID5はさらに、Shopping Agentなどが比較や購入を代行する環境では、人間だけでなくAIエージェント自体が情報を読む場面が増えると予測しています。
こうした将来像は現時点で確定した市場構造ではありませんが、「サイト訪問やクリックを前提にした計測だけで購買プロセスを理解できるのか」という問いは、日本のマーケティング実務にも関係します。
「37%がAIから検索開始」という数字はどう見るべきか
ID5の記事では、37%の検索がLLMから始まるという趣旨の数字が紹介されています。
ただし、この数字の元となった2026 AI and Search Behavior Studyは、AIツールをすでに利用している500人を対象にした調査です。データは2025年11月に収集されています。
したがって、「全インターネットユーザーの37%がGoogleを使わなくなった」と解釈することは適切ではありません。
むしろ注目したいのは、AI利用者の中で「最初はAIで調べ、その後に検索エンジンや他の情報源で確認する」という複数チャネル型の情報探索が生まれている点です。
同調査では、AI回答を別の情報源で確認すると回答した利用者も多く、AIと従来検索を単純な置き換え関係だけで考えることはできません。
マーケティング側も「GoogleかAIか」という二択ではなく、AI検索、検索エンジン、Webサイト、口コミ、営業接点などが連続する顧客行動として考える必要があります。
2026年は「AI上の表示」と「AIからの流入」を分けて確認しやすくなっている
2026年には計測環境も変化しています。
Google Analyticsでは2026年5月から、認識されたAIアシスタントからWebサイトへ来たアクセスを「AIアシスタント」チャネルとして分類できるようになりました。
さらにGoogleは2026年、Search ConsoleにGoogle検索の生成AI機能における自社ページの表示状況を確認する専用レポートを展開しています。
ここで重要なのは、両者が見ているものが違うことです。
- Search Console側:Googleの生成AI検索機能で自社ページが表示された状況
- GA4側:AIアシスタントから実際にWebサイトへクリックされた後のアクセス
外部AIサービス内で自社名を見たもののクリックしなかったユーザーまで完全に把握できるわけではありません。
そのため、AI検索では「露出」と「流入」を同じ指標として扱わないことが重要です。
IM視点ではIdentityだけでなく「顧客の状態」を考える
ID5の問題提起は、Digital Identityを中心にしています。
Identityは、広告・データ活用において「誰、あるいはどのユーザー・デバイスなのか」を整理するための重要な基盤です。
しかし、マーケティングの意思決定には、それだけでは不足する場合があります。
例えば、同じ企業や顧客だと識別できても、その人が現在何について調べているのか、検討度が高まっているのか、比較段階に入っているのかまではIdentityだけでは判断できません。
| 項目 | Identity | Intent Data |
|---|---|---|
| 主に答える問い | 誰・どのユーザーやデバイスなのか | 何に関心を持っている可能性があるか |
| 分かること | ユーザー・端末・企業等の識別や紐付け | 関心テーマや検討兆候 |
| 主な用途 | 識別、広告配信、計測、名寄せ | ターゲット選定、ナーチャリング、営業優先順位 |
| 注意点 | Identityだけでは検討意図は分からない | 関心があっても購買意思が確定したとは限らない |
そこで顧客理解では、次のような情報を組み合わせて考えます。
Identity + Web行動 + インテントデータ + CRM/SFA + 企業属性 + AI
Identityで「誰なのか」を整理し、Web行動やインテントデータで「何に関心があるのか」を確認し、CRM/SFAから「過去にどのような接点があったか」を加えます。
さらにAIを使えば、大量のシグナルを整理し、「どの企業を確認するか」「どのテーマへの関心が変化しているか」「次に何を確認すべきか」といった判断を支援できます。
AI検索前後の顧客理解を5段階で考える
AI上で何が見られた可能性があるか
まず確認するのは流入ではなく、AI上の可視性です。
自社名、記事、サービス、調査、事例などが、顧客が尋ねる質問に対してどのように扱われているかを確認します。
AIから実際に訪問したか
次にGA4などでAI referralを確認します。
セッション数だけではなく、ランディングページ、エンゲージメント、関連記事への遷移、資料やセミナーページへの遷移なども確認します。
訪問後に関心が深まったか
一回のアクセスだけで「検討度が高い」とは判断できません。
同じテーマの記事を複数閲覧している、比較・導入・事例など具体検討に近いページへ進んでいる、一定期間内に再訪している、といった行動の変化も見ます。
自社との過去接点を確認する
BtoBでは、Webサイトへの一回の訪問だけで購買判断が完了することは多くありません。
ウェビナー参加、資料ダウンロード、展示会、メールへの反応、過去商談などをCRMやSFAと照合すると、「今回のAI経由接点が既存の顧客関係の中でどの位置にあるか」を考えやすくなります。
最終成果と中間シグナルを分ける
問い合わせや受注だけをAI検索の成果にすると、検討期間が長いBtoBでは評価が遅れます。
AI上の可視性、AI referral、再訪、指名検索、コンテンツ回遊、資料取得、セミナー申込、商談などを段階ごとに確認します。
ただし、指名検索が増えたからといって、すべてをAI検索の成果と断定することも避ける必要があります。広告、PR、営業、展示会など、複数の接点が同時に影響するためです。
AIエージェントが比較・購入する時代には何を計測するのか
ID5はさらに、AIエージェントが人の代わりに商品を比較し、購入判断を支援する環境を想定しています。
この段階では、「人がどの広告をクリックしたか」という現在の計測モデルだけでは説明しにくい行動が増える可能性があります。
例えば、AIエージェントが複数のサイトやデータソースを調べ、候補を3社へ絞り込み、人間は最後の選択だけを行うケースを考えてみます。
企業側から見ると、最終的にWebサイトへ訪れた一回しか観測できなくても、その前にはAIによる大量の比較・評価が行われている可能性があります。
このとき考えるべきなのは、「AIエージェントを識別すれば解決する」という単純な話ではありません。
少なくとも、次の問いを分ける必要があります。
- 誰のためにAIが調査しているのか
- どの情報が比較材料として使われたのか
- どの段階で人間が意思決定へ参加したのか
- 最終的にどのチャネルから接点が発生したのか
- その顧客は以前からどのような関心を示していたのか
AIエージェント時代には、Identity、コンテンツの可視性、インテント、アトリビューションを個別の問題としてではなく、顧客理解の一連の設計として考える必要性が高まると考えられます。
日本企業では「AI流入」からCRM・営業までつなげて考える
ID5の情報は海外AdTech市場を前提としたものです。そのため、海外市場で起きている変化をそのまま日本企業へ当てはめることはできません。
特にBtoB企業では、サイト訪問からそのままオンライン購入へ進むのではなく、資料取得、ウェビナー、問い合わせ、営業との会話、社内稟議など複数の接点を経るケースがあります。
そのため日本企業の実務では、「AI検索経由で何件訪問したか」に加え、その後にどの企業・顧客がどの情報を確認し、どの接点へ進んだのかを見る方が重要です。
また、Identityや行動データを連携する際は、利用目的、取得方法、同意や契約上の条件などを含め、適用される法令・プライバシー要件を確認したうえで運用する必要があります。
AI検索時代の顧客理解チェックリスト
- AI検索・AIアシスタント経由の流入をGA4で確認できる
- AI上の可視性とWeb流入を別の指標として管理している
- AI流入のランディングページを把握している
- 流入後に閲覧された関連記事やサービスページを確認できる
- Identityとインテントデータの役割を区別している
- 一回の閲覧だけで購買意欲が高いと判断していない
- Web行動をCRM/SFAや過去の営業接点と照合できる
- 指名検索や直接流入の増加をAI検索だけの成果と断定していない
- AI検索、Web行動、問い合わせ・商談を段階別に評価している
- AIエージェントが比較・検討を補助する購買行動を想定している
まとめ|AI検索流入は「入口の数字」ではなく顧客理解の一つのシグナル
AI検索からの流入は、生成AIが自社サイトへの新しい流入経路になっているかを確認するうえで重要です。
一方、AI検索ではサイト訪問より前に情報収集、要約、比較、候補選定が進む場合があります。そのため、AI referralだけでAI検索の影響全体を評価することは難しくなります。
ID5が提起する「Identity Gap」は、Identityサービスの観点から示された問題提起ですが、日本のマーケティング実務に置き換えると、「Webサイトへ来る前の比較検討をどう理解するか」という課題として捉えられます。
重要なのは、Identityだけ、AI検索だけ、GA4だけで答えを出そうとしないことです。
AI上の可視性 → AI referral → Web行動 → Identity → インテント → CRM/SFA → マーケティング・営業アクション
という流れでデータを整理すると、AI検索時代の顧客行動をより立体的に捉えやすくなります。
このテーマをより実務に落とし込みたい方へ
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FAQ
AI検索からの流入とは何ですか?
ChatGPTなどのAIアシスタントや生成AIを利用した検索体験から、リンクをクリックしてWebサイトへ訪問したアクセスです。AI referralやLLM referralと表現されることもあります。
AI検索からの流入はGA4で確認できますか?
外部AIアシスタントからWebサイトへクリックされたアクセスは、GA4で確認できます。2026年5月以降は、認識されたAIアシスタントからの流入を「AIアシスタント」チャネルとして確認できるようになっています。
AI検索からの流入数だけでは不十分なのはなぜですか?
AI上で情報収集や比較を行っても、ユーザーがWebサイトをクリックしなければGA4にはセッションとして現れないためです。AI上の可視性、指名検索、再訪、問い合わせなども合わせて確認する必要があります。
AI referralとは何ですか?
AIアシスタントや生成AIサービス内のリンクからWebサイトへ発生した参照トラフィックを指す表現です。どのAIサービスから来たかだけでなく、訪問後の行動まで確認することが重要です。
Identityとインテントデータは何が違いますか?
Identityは主に「誰・どのユーザーやデバイスなのか」を整理するための情報です。インテントデータは「何に関心を持ち、検討度がどのように変化している可能性があるか」を捉えるためのシグナルです。
AI検索上の表示とAIからの流入は同じですか?
同じではありません。AI回答で自社情報が参照されても、ユーザーがリンクをクリックしなければWeb流入は発生しません。AI上の可視性と実際の流入は分けて評価します。
AIエージェントが普及すると計測はどう変わりますか?
AIエージェントが情報収集や比較を代行する場合、人のクリックだけでは検討プロセスを説明しにくくなる可能性があります。Identity、AI上の可視性、Web行動、インテント、CRM/SFA、最終成果を組み合わせて評価する考え方が重要になります。

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