BtoBペルソナの作り方|担当者・推進者・決裁者を分ける実践手順

マーケティング戦略

「BtoBのペルソナを作りたいが、役職や年齢を決めるだけでよいのか」「営業担当者を一人作ればよいのか、それとも決裁者まで分けるべきなのか」と迷うことがあります。

BtoBペルソナの作り方で重要なのは、一人の架空人物を細かく作り込むことではありません。

まず自社が狙う企業条件を整理し、その企業の購買プロセスに関わる「利用者」「推進者」「評価者」「決裁者」などの役割を確認します。そのうえで、施策の意思決定に必要な人物だけをペルソナとして具体化します。

本記事では、BtoB特有のペルソナ設計の考え方から、企業条件、利用者・推進者・決裁者の分け方、情報収集、データを使った検証まで、実務で使える手順に沿って解説します。

BtoBペルソナの作り方を簡単に整理

  • 最初から一人の人物を作らず、まず狙う企業条件を整理します。
  • BtoBでは利用者・情報収集担当者・推進者・評価者・決裁者など複数の役割が存在します。
  • 全員を詳細なペルソナにするのではなく、施策判断に重要な役割だけを具体化します。
  • 年齢や趣味より、業務課題、目標、評価基準、情報収集、社内障壁を優先します。
  • 作ったペルソナは仮説として、商談、顧客インタビュー、Web行動、受注・失注などから検証します。

BtoBペルソナとは?BtoCとの大きな違い

BtoBペルソナとは、企業の購買や利用に関与する人物・役割について、業務上の課題、目標、判断基準、情報収集、社内での役割などを整理した仮説モデルです。

BtoBで特に重要なのは、商品を使う人と、調べる人、導入を進める人、お金を承認する人が同じとは限らないことです。

項目 BtoC BtoB
購買主体 個人中心 企業・組織
関与者 比較的少ない 複数部門・複数役割になりやすい
利用者と購入者 同一の場合も多い 異なる場合がある
判断基準 個人の必要性・嗜好など 業務課題、費用、運用、リスク、社内合意など
情報収集 個人中心 担当者が調べ、上司や決裁者へ共有する場合がある
ペルソナ設計 中心人物を深掘りしやすい 購買関与者の役割分担を整理する必要がある

そのためBtoBでは、「42歳・営業部長・趣味はゴルフ」と一人の人物を細かく描くだけでは、購買プロセスを十分に説明できない場合があります。

BtoBペルソナを作る前に企業条件を整理する

人物を作る前に、「どの企業の中にいる人物なのか」を決めます。

BtoBでは企業条件が異なれば、同じ役職でも課題や権限が大きく変わるからです。

例えば、同じ「マーケティング責任者」でも、従業員30名の企業と3,000名の企業では、予算、関係部署、承認フロー、使用システム、施策規模が異なる可能性があります。

まず次のような企業条件を整理します。

企業条件 確認する内容
業種・事業 どの市場・業態を対象にするか
企業規模 売上、従業員数、拠点数など
組織 マーケティング・営業・DXなど対象部門が存在するか
課題 自社が支援できる課題が存在するか
導入条件 予算、システム、運用体制など
現在の状況 未着手、情報収集、比較、社内検討など

理想顧客企業そのものを整理したい場合は、ICPとは?BtoBマーケティングで理想顧客を定義する方法も参考になります。

BtoBペルソナは一人に固定せず購買関与者を整理する

BtoBでは最初から「ペルソナは一人」と決めず、まず購買や利用に関わる役割を洗い出します。

例えば次のように整理できます。

役割 主な関心 必要な情報
利用者 使いやすさ、業務改善、運用負荷 機能、操作、導入後の業務
情報収集担当者 選択肢、違い、要件 基礎知識、比較、チェックリスト
推進者 社内課題の解決、導入推進 効果、事例、導入ステップ、社内説明材料
評価者 技術、セキュリティ、運用条件など 仕様、体制、リスク、連携条件
決裁者 投資、リスク、事業への影響 費用、必要性、投資判断材料

すべての企業でこの5役が存在するわけではありません。担当者が推進者を兼ねる場合も、決裁者が早い段階から関与する場合もあります。

重要なのは役職名ではなく、購買プロセス上で何を担っているかを見ることです。

BtoBペルソナの作り方|7つの実践手順

企業条件を決める

最初に、どのような企業の人物をペルソナ化するのかを決めます。

「BtoB企業の営業部長」のように広くせず、自社の商品・サービスと関係する企業条件まで整理します。

購買に関わる人物を洗い出す

次に、その企業で情報収集から導入判断までに誰が関わるかを確認します。

  • 最初に課題を感じる人
  • 検索・調査を始める人
  • サービスを比較する人
  • 社内で導入を提案する人
  • 技術・法務・運用面を評価する人
  • 最終的に承認する人
  • 実際に利用する人

ここではまだ詳細な人物像を作りません。まず購買構造を確認することが重要です。

施策上重要な役割を選ぶ

洗い出した全員を細かなペルソナにする必要はありません。

例えばSEO記事の設計なら、検索を行う担当者と推進者が重要かもしれません。一方、営業資料なら推進者と決裁者の違いが重要になります。

「このペルソナを作ることで、何の判断を変えるのか」を基準に選びます。

利用者の課題・目標を整理する

実際に商品・サービスを使う人については、日々の業務と利用場面を確認します。

  • どの業務に時間がかかっているか
  • 現在何を使って対応しているか
  • どのような問題が起きているか
  • 何が改善されれば価値を感じるか
  • 導入すると新たに何が増えるか

「DXを進めたい」のような抽象的な課題ではなく、具体的な業務場面まで掘り下げます。

推進者の社内ミッションと障壁を整理する

推進者は、自分が使うかどうかだけではなく、社内で導入を前へ進められるかを考えます。

確認したいのは次のような内容です。

  • なぜ今この課題を解決する必要があるのか
  • 社内で何を改善する責任があるのか
  • 誰へ説明する必要があるのか
  • どのような反対意見が予想されるか
  • 導入前に揃える必要がある情報は何か

プロジェクト内のセミナーでも、提案後に顧客が社内で誰へ、いつ、どのような経路で説明するのかまで把握する重要性が扱われています。

この視点から考えると、BtoBペルソナでは「担当者本人の悩み」だけでなく、担当者が社内で説明しなければならない相手と論点まで整理することが有効です。

決裁者が判断する条件を整理する

決裁者には、担当者と同じ情報をそのまま提示しても十分とは限りません。

決裁者については、例えば次を確認します。

  • 何を事業課題として認識しているか
  • どの費用・リスクを気にするか
  • 何と比較して判断するか
  • 誰から情報を受け取るか
  • どの程度の情報量を必要とするか
  • 何があれば承認しやすくなるか

過去セミナーでは、長い説明をそのまま経営層へ伝えるのではなく、決裁者が重要視する情報へ絞って伝える必要性も論点になっていました。

情報収集行動を整理する

最後に、その人物が何を知りたいとき、どのように情報を集めるのか整理します。

項目 確認例
検索テーマ どの課題・用語を調べるか
情報源 検索、専門メディア、ウェビナー、営業、既存取引先など
検討時の質問 費用、導入方法、事例、連携、セキュリティなど
比較条件 価格、機能、運用、サポート、実績など
次の行動 記事閲覧、資料請求、セミナー、相談、社内共有など

情報収集行動はSEO・コンテンツ設計とも直接つながります。

BtoBペルソナの記入テンプレート

実務では、次の項目を一枚にまとめると使いやすくなります。

項目 記入内容
企業条件 業種、規模、事業、組織、導入条件
役割 利用者、推進者、評価者、決裁者など
担当業務 日常的に何を担当しているか
達成目標 何を改善・達成する責任があるか
現在の課題 どの業務・状況で困っているか
現在の代替手段 今は何で対応しているか
判断基準 比較時に何を重視するか
導入障壁 費用、運用、社内合意、リスクなど
関与者 誰と相談・共有・承認するか
情報収集 何をどこで調べるか
必要コンテンツ 記事、比較表、事例、FAQ、資料など
根拠 商談、インタビュー、データ、仮説など

「名前」「趣味」「顔写真」などは、その設定によってマーケティングや営業の判断が変わる場合のみ追加します。

BtoBペルソナは何の情報から作る?

営業担当者の感覚だけでも、Webデータだけでも不十分です。

複数の情報を使って人物像を組み立てます。

情報源 分かること 注意点
顧客インタビュー 課題、背景、判断理由 誘導質問を避ける
商談記録 質問、懸念、関与者 担当者個人の解釈と分ける
問い合わせ 検討前に必要な情報 問い合わせ顧客だけに偏る
アンケート 意識、ニーズ、評価 回答と行動が一致するとは限らない
Web行動 閲覧・検索・接触の事実 行動理由までは確定できない
受注・失注 実際の成果や障壁 結果だけで原因を決めつけない
営業・CSの知見 顧客との具体的な文脈 特定担当者の経験に偏らない

顧客理解では、属性、意識、行動データがそれぞれ異なる問いに答えます。詳しくは、顧客理解を深めるには?属性・意識・行動データの使い分けも参考になります。

作ったBtoBペルソナをデータで検証する

ペルソナは完成品ではなく、検証するための仮説です。

作成後は、実際の顧客と比較します。

  • 問い合わせ企業は想定した企業条件と一致しているか
  • 最初に情報収集している人物は想定どおりか
  • 商談へ進むと誰が追加で参加するか
  • 推進者が困っている社内説明は何か
  • 決裁時に新しく出てくる質問は何か
  • 失注理由は想定した障壁と一致するか
  • 受注企業で共通する判断基準は何か

想定と異なっていた場合、「ペルソナが失敗した」と考える必要はありません。仮説と実顧客との差が見つかったということです。

検証手順を詳しく知りたい場合は、ペルソナ分析とは?作って終わりにしないデータ検証の方法で整理しています。

AIでBtoBペルソナを作るときの注意点

生成AIを使えば、商品概要や顧客情報から短時間でペルソナ案を整理できます。ただし、AIが出力した人物像は実顧客の調査結果ではありません。

AIには、

  • 商談メモの分類
  • 顧客の声の共通点抽出
  • 利用者・推進者・決裁者ごとの論点整理
  • 未確認項目の洗い出し
  • 反対仮説の作成

などを支援させ、最終的には実データで検証します。

AIを使った顧客像の作り方は、AIペルソナとは?商品開発における顧客理解・仮説検証への活用方法も参考になります。

BtoBペルソナ作成の実務チェックリスト

確認項目 なぜ重要か 不足時に見直すこと
企業条件が先に整理されている 誰のペルソナなのか曖昧になるのを防ぐため ICP・ターゲット条件を確認する
購買関与者を洗い出している 一人に全役割を持たせないため 商談・購買プロセスを確認する
利用者・推進者・決裁者を必要に応じて分けている 役割ごとに必要情報が異なるため 各人物の目的を分ける
業務上の課題・目標が具体的 施策へ接続するため 具体的な業務場面まで掘る
判断基準・導入障壁を整理している 比較検討時の情報を設計するため 商談・失注理由を確認する
情報収集行動を確認している SEO・広告・コンテンツへ接続するため 検索・閲覧・問い合わせを見る
設定項目に根拠がある 想像だけの人物像を避けるため データ・顧客接点を追加する
作成後の検証方法が決まっている 固定資料にしないため 商談・受注・行動データと比較する

まとめ|BtoBペルソナは「一人を細かく描く」より「役割を正しく分ける」

BtoBペルソナを作るときは、いきなり人物プロフィールから始めるのではなく、まず対象企業と購買プロセスを整理します。

そのうえで、利用者、情報収集担当者、推進者、評価者、決裁者など、購買に関わる役割を確認します。

すべてを詳細に作る必要はありません。

今回のマーケティング・営業施策で判断を変えるために必要な人物だけをペルソナとして具体化することがポイントです。

そして、作った人物像を正解として固定せず、顧客インタビュー、商談、Web行動、受注・失注などの実データで検証し続けます。

想定だけではなく、実際のデータからターゲット・顧客像を見直したい方へ

BtoBペルソナを作ると、「誰へ何を伝えるか」を整理できます。一方、作った人物像と実際に行動している顧客が一致しているかは、データで確認する必要があります。

アーカイブ配信「意識×行動データとAIで実現する『真のターゲット特定』」では、顧客の意識と実際の行動を組み合わせ、想定だけでは見えにくいターゲットを捉える考え方を紹介しています。

意識×行動データとAIによるターゲット特定のアーカイブを見る

BtoBペルソナに関するよくある質問

BtoBペルソナとは何ですか?

BtoBペルソナとは、対象企業の中で購買・利用・意思決定に関わる人物や役割について、課題、目標、判断基準、情報収集などを整理した仮説モデルです。

BtoBペルソナは何人作ればよいですか?

決まった人数はありません。利用者・推進者・決裁者などを洗い出したうえで、現在の施策判断に影響する人物だけを詳しく作ります。

BtoBペルソナは一人に絞った方がよいですか?

必ずしも一人に絞る必要はありません。BtoBでは購買に複数の人物が関与するため、一人へ全役割を持たせると実態から離れる場合があります。

BtoBペルソナはどのような項目を設定しますか?

企業条件、役割、業務、目標、課題、判断基準、導入障壁、関与者、情報収集方法、必要コンテンツなどを優先します。

年齢や趣味まで設定する必要がありますか?

必須ではありません。その情報によって広告、記事、営業、商品などの判断が変わる場合だけ設定します。

営業担当者の経験だけでペルソナを作ってよいですか?

営業の知見は重要ですが、それだけで確定せず、商談記録、顧客インタビュー、問い合わせ、Web行動、受注・失注などと組み合わせて検証します。

AIだけでBtoBペルソナを作れますか?

AIで仮説作成や情報整理はできますが、実顧客そのものを自動的に特定できるわけではありません。生成結果は仮説として扱い、顧客データや施策結果から検証する必要があります。

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