「データ基盤は整えた。CRMやMAも導入した。ダッシュボードもある。それなのに、現場の意思決定は以前とほとんど変わっていない」。
「データ活用を進めよう」と社内で何度も言われているのに、実際にデータを使えるのは一部の担当者だけ。分析依頼は特定の人に集中し、担当者が異動すると運用が止まってしまう。
さらに生成AIやAIエージェントの活用が求められるようになり、「データ活用すら十分に定着していないのに、AIまでどう進めればよいのか」と焦りを感じている企業もあるのではないでしょうか。
IMデジタルマーケティングニュースが蓄積してきた過去セミナーでも、データ活用の現場では、単純な「ツール不足」だけでは説明できない課題が繰り返し語られてきました。
たとえば、「データがあるからうまくいくのではなく、何をしたいのかを先に決めなければならない」「データを集めること自体が目的になってしまう」「CRM・SFA・MAを導入したものの、その後どう使いこなすかが課題になっている」といった声です。
また、2026年のセミナーでは、AIや自動化を業務へ導入する際にも、「何をAIへ任せ、何を人が判断するのか」「そもそも業務全体を理解できる人材がいるか」「結果だけでなく、判断に至る過程のデータが残っているか」が重要な論点として扱われていました。
ここから見えてくるのは、データ活用の壁は一つではないということです。
人材、組織、システムの3つが相互に影響し合い、一つでも欠けるとデータ活用が止まりやすくなります。
この記事では、それぞれの壁がなぜ生まれるのか、どのような順番で改善すればよいのかを、BtoBマーケティング・営業・DXの実務視点から整理します。
要点サマリー
- データ活用の壁は「人材不足」だけではなく、人材・組織・システムの複合問題です。
- 専門家を増やすだけでなく、現場がデータを使って判断できる役割・業務フローを設計する必要があります。
- 部門間でKPI、データ定義、意思決定権限が異なると、データを統合しても活用は進みません。
- システムは「一つに集約すること」より、「必要な判断へ必要なデータを接続できること」が重要です。
- AI活用を進めるほど、データマネジメント、人間の判断、責任分担、意思決定ログの重要性が高まります。
- データ活用の壁とは?人材・組織・システムの3層で考える
- 人材の壁:データを扱える人より「意思決定を設計できる人」が足りない
- 人材の壁を乗り越える5つの方法
- 組織の壁:データがあっても部門間で意思決定がつながらない
- 組織の壁を乗り越える5つの方法
- システムの壁:ツールは増えたがデータがつながっていない
- システムの壁を乗り越える6つの方法
- 人材・組織・システムは別々に改善しない
- 2026年は「データを持っている」から「組織として使える」へ
- AI活用が進むほど「データマネジメント」が重要になる
- データガバナンスは活用を止めるためではなく、活用できる範囲を明確にする
- AI導入では「利用促進」と「リスク管理」を同時に設計する
- データ活用の壁を乗り越える8ステップ
- データ活用成熟度を5段階で確認する
- データ活用推進でやってはいけないこと
- 明日から使えるデータ活用組織チェックリスト
- まとめ:データ活用の壁は「人材不足」だけでは乗り越えられない
- データ活用の壁に関するよくある質問
データ活用の壁とは?人材・組織・システムの3層で考える
データ活用が進まないとき、「分析できる人がいない」「システムが古い」と一つの原因へ絞りたくなります。
しかし実際には、複数の問題が連鎖しています。
| 壁 | よくある状態 | 本質的な問題 |
|---|---|---|
| 人材の壁 | 専門家しかデータを扱えない | データを意思決定へ変換できる人が不足している |
| 組織の壁 | 部署ごとに数字・KPI・判断基準が異なる | 役割・責任・意思決定プロセスが整理されていない |
| システムの壁 | CRM、MA、BI、Excelなどに情報が分散 | 業務上必要なデータを横断利用できない |
たとえば、システム連携を改善しても、営業とマーケティングで「有望顧客」の定義が違えば活用は進みません。
人材研修を実施しても、分析結果を使う会議や業務が決まっていなければ、学んだスキルは日常業務へ定着しません。
つまり、データ活用をツール導入プロジェクトではなく、組織の意思決定を変えるプロジェクトとして考える必要があります。
人材の壁:データを扱える人より「意思決定を設計できる人」が足りない
データサイエンティスト不足だけが問題ではない
データ活用の人材課題というと、データサイエンティストやエンジニア不足が注目されがちです。
もちろん高度な分析や基盤構築には専門人材が必要です。
しかし、実務でより頻繁に問題になるのは、「どの課題を分析すべきか」「分析結果によって何を変えるのか」を決められる人が少ないことです。
過去セミナーでも、データ活用では「何をしたいから、どのデータが必要なのか」という順序が重要であり、データ収集そのものが目的になると、細かな数字を増やすだけになりやすいという議論がありました。
分析スキルだけを育成しても定着しにくい
たとえば研修でBIツールの使い方を学んでも、実務で次のことが決まっていなければ利用は定着しません。
- どの会議でデータを見るのか
- どの指標が悪化したら何を調べるのか
- 誰が原因を分析するのか
- 誰が施策変更を決めるのか
- 結果をどこへ記録するのか
「分析してください」とツールを渡すだけでは、現場は何をすればよいかわかりません。
2026年のセミナー資料でも、AIや分析ツールを社内へ浸透させるには、単に便利な環境を用意するのではなく、現在の業務へ利用を組み込み、業務棚卸し、課題抽出、実行、効果測定までを業務フローとして設計する必要性が整理されています。
人材を3階層に分けて考える
全社員をデータ分析の専門家にする必要はありません。
| 人材 | 必要な能力 | 役割 |
|---|---|---|
| データ利用者 | 主要指標を読み、判断へ使える | 日常業務でデータを利用する |
| データ推進者 | 課題、KPI、分析、施策を接続できる | 部門内のデータ活用を設計する |
| 専門人材 | 分析、基盤、AI、データマネジメント | 高度な技術・品質・基盤を担う |
特に重要なのが中央の「データ推進者」です。
マーケティングや営業の業務を理解しながら、データ担当者へ必要な分析を伝え、結果を実際の施策へ戻せる人材です。
AI時代は「To Do」より「To Be」を決める能力が重要になる
生成AIやAIエージェントによって、集計、分類、要約、レポート作成などの作業は効率化しやすくなっています。
過去セミナーでも、AIに任せやすい反復作業と、人間が担うべき目的・戦略・意思決定を分ける必要性が議論されました。
AIへ「このデータを分析して」と頼むだけではなく、
- 何を改善したいのか
- 何を成功とするのか
- どのデータを信用するのか
- どこまで自動判断させるのか
- 何を人間が承認するのか
を決める能力がより重要になります。
人材の壁を乗り越える5つの方法
業務を教材にする
一般的なデータ分析研修だけでなく、自社の営業・広告・コンテンツ・商品データを題材にします。
「分析」ではなく「判断」を課題にする
「売上データを分析する」ではなく、「来月の広告予算をどう変更するか判断する」といった形で学習します。
専門家への依頼方法を教育する
すべてを自分で分析できなくても、「何を確認したいか」をデータ担当者へ説明できれば組織全体の速度は上がります。
過去の判断をナレッジ化する
- どの数字を見たか
- 何を仮説にしたか
- 何を変更したか
- 結果はどうだったか
を記録します。
AIとの分業スキルを育てる
ツールの操作方法ではなく、AIへ渡す情報、判断基準、レビュー方法まで教育します。
組織の壁:データがあっても部門間で意思決定がつながらない
データ活用では、技術より組織がボトルネックになるケースがあります。
2026年5月にIPAが公表した新たな指標案でも、DX推進における「組織や役割分担、権限」「経営・IT・事業部門間の意思決定・連携」が独立した課題として扱われています。組織課題へ十分対応できないと、施策実行の速度が上がらず、DXが成果につながりにくいと整理されています。
マーケティング・営業・ITで目的が違う
たとえばマーケティングでは「リード数」を重視していても、営業は「商談化しやすい企業」を求めています。
情報システム部門は「データ品質とセキュリティ」を重視し、経営は「売上・利益」を見ています。
それぞれが間違っているわけではありません。
問題は、各指標の関係が整理されていないことです。
データの責任者がいない
「この数字は誰が管理しているのか」と聞いたときに答えが出ない組織では、データ品質を改善しにくくなります。
- 顧客情報は営業
- Webデータはマーケティング
- 契約は経理
- 利用データはプロダクト
と分散していても問題ありません。
重要なのは、それぞれに責任を持つ人と、部門間を接続するルールを決めることです。
意思決定権限が曖昧
分析結果が出ても、
「広告予算を変更してよいのは誰か」
「スコアリング条件を変えてよいのは誰か」
「CRMの顧客定義を変更できるのは誰か」
が決まっていなければ、改善は止まります。
成功体験が担当者個人に閉じる
一人の優秀な担当者がExcelやSQLを駆使して成果を出していても、退職・異動すると再現できなければ組織のデータ活用とは言えません。
過去セミナーでも、AIやインハウス運用を進めるうえでは、作業そのものより「全体像を理解し、人とAI・外部パートナーをどう分業するかを設計できる人」が重要になるという議論がありました。
組織の壁を乗り越える5つの方法
事業KGIを共通言語にする
全部署が同じKPIを見る必要はありません。
ただし、各部門のKPIがどの事業成果へつながるのかを共有します。
| 部門 | 部門KPI例 | 接続する事業成果 |
|---|---|---|
| マーケティング | リード、CPA | 商談、受注 |
| 営業 | 商談、提案 | 受注、売上 |
| カスタマーサクセス | 利用、問い合わせ | 継続、LTV |
| データ・IT | 品質、連携、稼働 | 意思決定速度・事業実行 |
データオーナーを決める
データごとに、最低限次を決めます。
- 定義を決める人
- 品質を管理する人
- アクセスを承認する人
- 利用部門
- 更新頻度
部門横断の会議を「数字報告会」にしない
会議では数字を読み上げるのではなく、
- 何が変化したか
- なぜ起きたと考えるか
- 追加で何を確認するか
- 次に何を変えるか
- 誰がいつ実行するか
まで決めます。
RACIの考え方で役割を整理する
| 役割 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 実行 | 実際に作業する | 分析担当 |
| 最終責任 | 判断・承認する | 事業責任者 |
| 相談 | 専門知識を提供する | 法務・IT・営業 |
| 共有 | 結果を把握する | 関連部門 |
厳密な制度を最初から作る必要はありませんが、「誰が決めるか」は明確にします。
小さなユースケースを部門横断で成功させる
いきなり「全社データドリブン化」を目標にしないことも重要です。
たとえば、
- ウェビナー参加企業の営業優先順位を決める
- 失注理由をコンテンツ改善へ戻す
- 広告流入と受注データを接続する
- 解約理由を新規獲得条件へ反映する
といった一つのテーマから始めます。
システムの壁:ツールは増えたがデータがつながっていない
過去セミナーでは、SFA、CRM、MAを導入したものの、「一巡して、今度はどう使いこなすのかが課題になっている」という現場感が語られていました。
データ活用を進めようとすると、新しいツールを追加したくなることがあります。
しかし、システムが増えるほどデータが分散するケースもあります。
同じ顧客が複数システムで別人になる
たとえば、一つの企業について、
- MAではメールアドレス単位
- CRMでは企業単位
- 広告ではキャンペーン単位
- 契約システムでは契約ID単位
で管理されている場合があります。
紐付けられなければ、広告接触から受注・継続までを分析できません。
システム統合とデータ活用を同一視しない
すべてのシステムを一つにすることが目的ではありません。
必要な意思決定に対して、必要なデータを参照できることが重要です。
たとえば営業優先順位の判断であれば、
- 企業属性
- 過去商談
- 最近の行動
- 失注理由
を必要なタイミングで確認できれば、必ずしもすべてを同一システムへ移行する必要はありません。
「結果データ」しか残っていない
AI活用を進めると、もう一つの問題が出てきます。
たとえば広告管理画面には、「予算を変更した」「CPAが変化した」という結果が残ります。
しかし、
- なぜ変更したのか
- 他にどの選択肢があったのか
- なぜその選択肢を採用しなかったのか
- 会議で何が議論されたのか
は残っていないことがあります。
2026年のセミナーでも、AIや業務フローを高度化するうえで、結果のデータだけでなく「過程のデータ」が不足していることが課題になり得るという指摘がありました。
AIに過去の意思決定を再現させたい場合、結果だけではなく文脈も必要になります。
システムの壁を乗り越える6つの方法
システム一覧ではなく「判断一覧」を作る
まず「CRMがある」「BIがある」という棚卸しではなく、
| 判断 | 必要なデータ | 現在の保存先 |
|---|---|---|
| 営業優先順位 | 企業属性・関心・過去商談 | CRM、MA、外部データ |
| 広告予算 | 広告・商談・受注 | 広告管理、CRM |
| 記事リライト | 検索、閲覧、CV、営業質問 | Search Console、アクセス解析、CRM |
のように整理します。
マスターデータを決める
顧客、企業、商品、売上などについて、どのデータを正本とするのか決めます。
共通IDを設計する
企業・担当者・商談・契約を追えるようにします。
最低限必要な連携から始める
全システム統合ではなく、優先ユースケースに必要な連携から着手します。
意思決定ログを残す
- 変更理由
- 仮説
- 判断者
- 実施内容
- 結果
を簡単でもよいので記録します。
システム変更時に業務プロセスも確認する
ツールを入れ替えても、古いExcelや手入力が残ればシステムだけが増えます。
前後工程を含めて見直します。
人材・組織・システムは別々に改善しない
3つの壁は、次のようにつながっています。
| 課題 | 人材 | 組織 | システム |
|---|---|---|---|
| 営業データを活用できない | 何を分析すべきかわからない | 営業とマーケの定義が違う | CRMとMAがつながっていない |
| AI活用が進まない | 指示・評価できる人が少ない | 利用責任が不明 | AIへ渡すデータが整っていない |
| 分析が属人化する | 一人しか分析できない | ナレッジ共有がない | 分析過程が保存されない |
| 意思決定が遅い | 判断材料を作れない | 承認者が不明 | 必要な数字をすぐ出せない |
そのため、「人材研修」「データ基盤」「組織改革」を別々のプロジェクトとして進めすぎないことが重要です。
2026年は「データを持っている」から「組織として使える」へ
2026年7月にIPAが公表した「DX動向2026調査」の速報では、国内企業でDXやAI導入が広がる一方、成果は業務効率化・迅速化に偏り、新しい価値創出やビジネス変革への展開は依然として限定的だと整理されています。また、データの利活用・連携、企業文化、人材スキルなども分析対象になっています。
これは、「AIを導入した」「データ基盤を作った」という状態と、組織全体の意思決定が変わった状態には距離があることを示す重要な論点です。
さらにIPAが2026年5月に公開した指標案では、データ活用について、データそのものだけではなく、戦略、データ基盤、人材、経営・IT・事業部門間の役割分担や意思決定を合わせて評価する方向性が示されています。
AI活用が進むほど「データマネジメント」が重要になる
2026年4月に改訂されたデジタルスキル標準ver.2.0では、AI活用の前提となるデータ整備・管理・利活用を担う役割の重要性が高まったことを背景に、「データマネジメント」の類型が新設されました。
これは、AI時代に必要なのが「AIツールを使える人」だけではないことを示しています。
企業として必要になるのは、
- どのデータがあるか把握する
- 意味・定義を揃える
- 品質を管理する
- 利用権限を決める
- 必要な業務へ提供する
- 変更履歴を管理する
といったデータマネジメントの能力です。
データガバナンスは活用を止めるためではなく、活用できる範囲を明確にする
データ活用を全社展開すると、セキュリティやプライバシーへの懸念から「使わないほうが安全」という方向へ議論が進むことがあります。
しかし、データガバナンスの目的は、データ利用を一律に止めることではありません。
デジタル庁が公表している企業経営者向けのデータガバナンス・ガイドラインでも、保有データを活用してDXや企業価値向上へつなげるためのガバナンスの重要性が整理されています。
企業内では、最低限次を整理します。
- どのデータを保有しているか
- 何の目的で利用するか
- 誰が責任を持つか
- 誰がアクセスできるか
- どの程度の品質が必要か
- どのAI・外部システムへ渡せるか
- 問題発生時に誰が対応するか
AI導入では「利用促進」と「リスク管理」を同時に設計する
デジタル庁は2026年6月、行政向け生成AI利活用ガイドラインを改訂し、生成AIの利用促進とリスク管理を表裏一体で進める方向性を示しました。これは民間企業への直接的な規則ではありませんが、組織でAIを展開するときに「使うこと」と「管理すること」を別々にしない考え方として参考になります。
AI活用でも、
- 利用可能なデータ
- 禁止データ
- 人間承認が必要な処理
- ログを残す処理
- 外部送信してよいデータ
を決めておけば、現場も使いやすくなります。
データ活用の壁を乗り越える8ステップ
事業課題を一つ決める
「データ活用を進める」ではなく、具体的な課題を選びます。
例:
- 商談化率を改善したい
- 広告から受注までを評価したい
- 解約兆候を早く把握したい
- 記事から商談への貢献を把握したい
必要な意思決定を決める
「どのデータを見るか」の前に、「誰が何を決めるのか」を整理します。
業務フローを可視化する
データの取得から判断、実行、記録までを書き出します。
| 工程 | 確認事項 |
|---|---|
| 取得 | どこからデータが入るか |
| 加工 | 誰が整えるか |
| 分析 | 何を判断するか |
| 承認 | 誰が決めるか |
| 実行 | どの施策を変えるか |
| 記録 | 結果と理由をどこへ残すか |
人材・組織・システムのどこで止まっているか診断する
一つの課題について、3つの観点で確認します。
| 観点 | 質問 |
|---|---|
| 人材 | 分析・判断できる人がいるか |
| 組織 | 責任者と意思決定ルールがあるか |
| システム | 必要なデータへアクセスできるか |
最低限の役割分担を決める
実行者、責任者、相談先、共有先を決めます。
必要なデータだけを接続する
すべてのデータ統合を待たず、ユースケースに必要な連携を実施します。
業務の中で使う
「自由に使ってください」ではなく、毎週の営業会議、広告レビュー、コンテンツ会議など、具体的な業務へ組み込みます。
結果と判断理由を蓄積する
改善結果だけでなく、なぜその施策を選んだかを残します。
これが次の担当者やAIが参照できる組織知になります。
データ活用成熟度を5段階で確認する
| 段階 | 状態 | 次の課題 |
|---|---|---|
| レベル1:個人依存 | 一部担当者だけが分析する | 業務・役割の可視化 |
| レベル2:部門活用 | 部門内では利用している | 定義・KPIの統一 |
| レベル3:部門連携 | 複数部署でデータを共有 | 意思決定とシステム接続 |
| レベル4:業務統合 | 日常業務にデータ利用が組み込まれている | 継続改善・高度化 |
| レベル5:学習する組織 | 結果と判断を蓄積し施策へ戻している | AI・自動化への展開 |
IPAが2026年に検討中のデータマチュリティ推進指標でも、データ戦略、データ基盤、人材などを含め、組織的なデータ利活用能力を可視化し、継続改善する考え方が示されています。
データ活用推進でやってはいけないこと
ツールを入れて現場へ渡す
何の業務でいつ使うのかまで決めます。
データ人材を一人採用して任せる
専門人材だけでは、事業課題との接続や組織浸透は進みません。
研修だけを実施する
研修内容を実際の会議・業務へ組み込みます。
全社データ統合から始める
最初に利用価値を確認できるユースケースを選びます。
ダッシュボードの数を増やす
見る指標を増やすより、指標が変化したときの行動を決めます。
データ担当と現場を分離する
分析担当者だけでは顧客・営業・商品文脈を理解できない場合があります。
AIにすべて任せる
AIが得意な実行と、人が担う目的・例外・最終判断を分けます。
結果だけ保存する
判断理由・仮説・変更履歴も残します。
ガバナンスを禁止事項集にする
「使えないデータ」だけではなく、「この条件なら使える」を整理します。
明日から使えるデータ活用組織チェックリスト
人材
- 主要なKPIを現場担当者が説明できる
- 分析結果から次の施策を考えられる人がいる
- データ担当者へ適切な分析依頼を出せる
- 専門家だけに業務が集中していない
- 担当者変更後も運用を再現できる
- AIへ何を任せるか判断できる人がいる
組織
- データ活用の事業目的が明確である
- 部門KPIと事業KGIの関係が整理されている
- 各データの責任者が決まっている
- 分析結果の最終判断者が決まっている
- 営業・マーケティング・ITが必要な情報を共有している
- 成功・失敗事例を横展開する仕組みがある
システム
- 必要なデータがどこにあるか把握している
- 顧客・企業・案件を必要な範囲で紐付けられる
- データの正本が決まっている
- 重複・欠損・古い情報を確認している
- 手動転記が発生している工程を把握している
- 過去の施策・設定変更履歴を確認できる
業務
- データを見る会議・タイミングが決まっている
- 数字が変化した際の確認項目が決まっている
- 分析後に誰が何を実行するか決まっている
- 結果を再度データへ戻している
- 改善周期が決まっている
AI・ガバナンス
- AIへ入力できるデータを定義している
- 利用目的とアクセス権限を整理している
- AIの出力を誰が確認するか決めている
- 自動実行と人間承認の境界を決めている
- 重要な判断ではログを残している
まとめ:データ活用の壁は「人材不足」だけでは乗り越えられない
データ活用が進まないと、「もっとデータ人材を採用しよう」「新しいシステムを導入しよう」という議論になりがちです。
しかし、現場で起きている問題はそれほど単純ではありません。
データを扱う人がいても、何を判断するか決まっていなければ活用は進みません。
組織横断の会議があっても、部門ごとにKPIや顧客定義が異なれば議論はかみ合いません。
システムを統合しても、そのデータを使う業務と責任者が決まっていなければ、利用されないデータベースが増えるだけです。
そしてAI活用が広がるほど、この問題はさらに明確になります。
AIは大量のデータを短時間で整理できます。しかし、どのデータを信用し、何を目的とし、どの判断を自動化し、どこから人間が責任を持つのかは、企業側が設計しなければなりません。
2026年の外部環境を見ても、データ活用は単なるIT・分析テーマから、経営、組織、人材、データマネジメントを横断するテーマへ広がっています。
最初から全社を変える必要はありません。
まず一つ、事業に影響する意思決定を選んでください。
その判断に必要な人、組織、データ、システムを並べ、「どこで止まっているのか」を確認します。
そこから役割を整理し、必要最低限のデータをつなぎ、実際の業務の中で使います。
最後に、結果だけではなく「なぜその判断をしたのか」まで記録します。
この繰り返しによって、データ活用は一部の専門家のスキルから、組織の能力へ変わっていきます。
データ活用の壁を乗り越えるとは、分析できる企業になることではありません。データを使って組織が判断し、行動し、学び続けられる状態を作ることです。
データ・AIを導入したものの、組織での活用が進まない方へ
インティメート・マージャーでは、データ活用、AI、インテントデータ、顧客理解、営業・マーケティング連携などをテーマとしたセミナー・ウェビナー情報を掲載しています。
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データ活用の壁に関するよくある質問
企業のデータ活用を阻む主な壁は何ですか?
人材、組織、システムの3つに整理できます。分析できる人が少ないことだけではなく、部門間の役割・KPI・意思決定の分断や、データがシステムごとに分散していることが複合的に影響します。
データ活用人材が不足している場合はどうすればよいですか?
専門人材の採用だけでなく、現場が主要KPIを読み、専門家へ分析依頼を出し、結果を施策へ反映できる状態を作ることが重要です。実際の業務を使った育成も有効です。
データ活用を組織に定着させるには何が必要ですか?
データを見る会議、判断者、実行担当者、改善周期まで業務フローへ組み込みます。「使える環境を用意する」だけでなく、いつ・誰が・何のために使うのかを決めることが重要です。
データ活用のためにすべてのシステムを統合する必要がありますか?
必ずしも必要ではありません。まず優先する業務や意思決定に必要なデータを特定し、そのデータを横断して利用できる状態を作ります。全面統合は必要性を確認してから判断します。
CRMやMAを導入してもデータ活用が進まないのはなぜですか?
ツール導入だけでは、誰が何の判断へ使うかは決まりません。顧客定義、KPI、入力ルール、営業との情報連携、分析結果からのアクションまで設計する必要があります。
AIを使えばデータ人材不足を解消できますか?
集計、分類、分析支援などのハードルは下げられますが、事業目的、データの意味、判断基準、例外対応を自動的に決められるわけではありません。AIを評価・管理できる人材は引き続き必要です。
データ活用はどこから改善すべきですか?
全社データ統合からではなく、商談化、広告評価、解約改善など一つの事業課題を選びます。その課題について人材・組織・システムのどこに壁があるかを確認し、必要な範囲から改善する方法が現実的です。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。


