「顧客インタビューを実施したものの、『使いやすかった』『価格が決め手だった』といった表面的な回答しか残らなかった」。商品開発やマーケティングの現場では、このようなことがあります。
結論から言うと、顧客インタビューでは「なぜですか?」を繰り返すだけでは十分ではありません。まず過去の具体的な出来事や行動を聞き、その後に判断理由や迷った点を深掘りすることが重要です。
特に商品開発では、買った人の理由だけを聞くと、自社商品の強みばかりに目が向きやすくなります。「何と比較したのか」「なぜ導入を迷ったのか」「どの条件なら買わなかったのか」まで確認することで、商品・訴求・営業プロセスを見直す材料になります。
本記事では、BtoB企業の顧客インタビューで使える質問例を、目的設定、対象者選定、質問順序、深掘り、NG質問、分析への渡し方まで順番に解説します。
この記事の要点
- 顧客インタビューでは質問リストを作る前に、「何を判断するための調査か」を決めます。
- 意見や未来予測だけでなく、直近の具体的な行動や出来事から聞き始めます。
- 「なぜ買ったか」だけでなく、「迷った理由」「買わない可能性があった理由」も確認します。
- 商品案を肯定させる誘導質問や、一度に複数の内容を聞く質問は避けます。
- インタビュー結果は事実・本人の解釈・分析者の仮説を分けて整理し、定量データで検証します。
- 顧客インタビューでは何を質問すればよい?
- 顧客インタビューは質問を作る前に目的を決める
- 誰に聞くか|対象者選定でインタビュー結果は変わる
- 質問は「広く聞く→事実を聞く→理由を深掘る」の順にする
- 「意見」より先に過去の具体的な行動を聞く
- 「買う理由」を深掘りする質問例
- 「買わない理由」を深掘りする質問例
- 回答を深掘りする5つの追加質問
- 避けたい顧客インタビューのNG質問
- 顧客インタビューの60分質問構成例
- インタビュー内容を分析へ渡すときの整理方法
- 一人の顧客の発言を市場全体のニーズにしない
- 顧客インタビューの質問設計チェックリスト
- IMMNの一次情報から考える「買わない理由」の重要性
- まとめ|顧客インタビューは「質問数」より質問の順番と深掘りが重要
- 顧客インタビューの質問に関するよくある質問
顧客インタビューでは何を質問すればよい?
顧客インタビューでは、「現在の状況→直近の経験→課題→比較・検討→意思決定→利用後」の順に聞くと、購買判断の背景を整理しやすくなります。
いきなり「なぜ弊社の商品を選んだのですか?」と聞くと、回答者はその場で理由を整理しようとします。その結果、実際の意思決定時には意識していなかった理由を、後からもっともらしく説明してしまう可能性があります。
そこで、まず具体的な出来事を思い出してもらいます。
| 確認したいこと | 質問例 |
|---|---|
| 担当業務 | 当時、どのような業務を担当していましたか? |
| 課題発生 | このテーマについて、最後に困った場面を教えてください。 |
| 従来の対応 | そのときは、どのような方法で対応していましたか? |
| 検討開始 | 別の方法を探そうと思ったきっかけは何でしたか? |
| 情報収集 | 最初にどこで情報を探しましたか? |
| 比較 | どのような選択肢を比較しましたか? |
| 判断基準 | 比較するときに特に確認した条件は何でしたか? |
| 迷い | 決定する前に迷った点や不安だった点はありましたか? |
| 決定 | 最終的に決めることになった出来事や条件は何でしたか? |
| 非購買可能性 | 逆に、どの条件だったら導入しなかったと思いますか? |
このように聞くと、「価格が安かったから」という回答だけで終わらず、その前後にある比較条件や不安まで把握できます。
顧客インタビューは質問を作る前に目的を決める
質問設計の最初の工程は「何を聞くか」ではなく、「このインタビュー結果で何を変えるのか」を決めることです。
「顧客理解を深める」という目的だけでは広すぎます。
例えば、次のように具体化します。
- 商品コンセプトを見直したい
- 新規顧客が導入をためらう理由を知りたい
- 競合比較で重視される条件を知りたい
- LPで強調する価値を決めたい
- 営業資料で説明すべき不安を見つけたい
- 失注につながる条件を整理したい
- 次の定量調査で検証する仮説を作りたい
目的が変われば質問も変わります。
| インタビュー目的 | 重点的に確認すること |
|---|---|
| 商品開発 | 現在の課題、代替手段、未充足ニーズ |
| 訴求改善 | 選択理由、比較軸、理解しやすかった情報 |
| 失注分析 | 迷った点、障壁、別の選択肢を選んだ理由 |
| 営業改善 | 情報収集、社内調整、決裁条件、不安 |
| 市場検証 | 課題の頻度、重要性、現在の代替方法 |
誰に聞くか|対象者選定でインタビュー結果は変わる
BtoBの顧客インタビューでは、「顧客企業」と一括りにせず、その人が購買や利用にどう関わったかを確認します。
BtoBでは、実際にサービスを利用する人と、導入を推進する人、予算を承認する人が異なる場合があります。
例えば、利用者が「使いやすさ」を重視していても、決裁者は費用やリスクを重視しているかもしれません。
対象者を選ぶ際には次を確認します。
- 商品・サービスを実際に利用しているか
- 選定に関与したか
- 比較候補を探したか
- 社内提案を行ったか
- 決裁・契約に関与したか
- 導入後の運用を担当しているか
購入者だけを対象にしない
「売れる理由」を知りたい場合、購入者だけに聞くと成功理由に偏ります。
可能であれば、
- 購入した顧客
- 比較したが見送った顧客
- 途中で検討を止めた顧客
- 既存の方法を使い続けている顧客
など、異なる判断をした対象者を比較します。
インティメート・マージャーの過去の顧客理解に関する議論でも、顧客の多様化によって「買わなかった理由」が一つではなくなり、その背景まで理解する必要性が指摘されています。
質問は「広く聞く→事実を聞く→理由を深掘る」の順にする
インタビューでは、最初から核心を聞こうとせず、回答者が経験を思い出せる順番を作ります。
基本的には次の順番が使いやすいでしょう。
- 現在の役割・業務
- 直近の具体的な経験
- 当時起きていた問題
- 従来の対応方法
- 情報収集
- 比較・検討
- 迷った点・買わない理由
- 最終判断
- 導入後の変化
- 現在残っている課題
最初は答えやすい事実から聞く
例えば冒頭から「弊社の商品にどんな価値を感じていますか?」と聞くより、
「導入を検討し始めた頃、どのような業務をしていましたか?」
のように事実から入ります。
そこから、
「その中で何が大変でしたか?」
「直近で困った具体的な場面を思い出せますか?」
と徐々に深掘りします。
「意見」より先に過去の具体的な行動を聞く
顧客インタビューでは、未来の意向だけでなく、過去に実際に起きた行動を確認することが重要です。
例えば、
「この機能があったら使いますか?」
という質問では、回答者が好意的に答える可能性があります。
代わりに、
「最後にこの作業で困ったのはいつですか?」
「そのときはどう対応しましたか?」
「その対応にどれくらい手間がかかりましたか?」
と聞きます。
過去の行動を確認することで、課題が実際にどの程度重要なのかを判断しやすくなります。
事実と解釈を分ける
| 質問 | 取得できる情報 |
|---|---|
| 最後にこの問題が起きたのはいつですか? | 具体的な事実 |
| そのとき何をしましたか? | 実際の行動 |
| なぜその方法を選びましたか? | 本人の判断理由 |
| その方法のどこが不便でしたか? | 不満・課題認識 |
| 当社が考えると、これは○○が原因ですか? | 誘導になりやすいため注意 |
「買う理由」を深掘りする質問例
買う理由は「何が良かったですか?」だけでなく、検討開始から意思決定まで時系列で聞きます。
課題を聞く質問
- 導入を検討する前は、どのような方法で対応していましたか?
- その方法で困っていたことは何でしたか?
- 問題が最も大きくなったのはどのような場面でしたか?
- その課題を放置すると、どのような影響がありましたか?
- 以前にも改善しようとしたことはありましたか?
検討開始を聞く質問
- 別の方法を探そうと思ったきっかけは何でしたか?
- 最初にどのような情報を調べましたか?
- 誰が検討を始めましたか?
- 社内の誰が関わっていましたか?
比較・決定理由を聞く質問
- 比較していた選択肢にはどのようなものがありましたか?
- 比較するとき、最初に確認した条件は何でしたか?
- 途中で候補から外したものはありましたか?
- それはなぜ外れましたか?
- 最後まで迷った点は何でしたか?
- 最終的に決めるきっかけになった条件や出来事は何でしたか?
「買わない理由」を深掘りする質問例
非購買理由は、「不満はありますか?」ではなく、判断が止まった場面や他の選択肢との比較から聞きます。
買わない理由には、価格だけでなく、次のような要因があります。
- 現在の方法で十分
- 切り替えが面倒
- 社内説明が難しい
- 決裁条件を満たせない
- 機能差を理解できない
- 導入後の運用が不安
- 優先順位が低い
- 情報が不足している
実際に使える質問例
- 検討中に「今回は見送ろう」と思った瞬間はありましたか?
- 最後まで不安だったことは何でしたか?
- 導入しない選択肢もありましたか?
- その場合は、何を使い続ける予定でしたか?
- どの条件だったら導入しなかったと思いますか?
- 社内で反対意見や懸念はありましたか?
- 説明するのが難しかった点はありましたか?
- 比較した他の方法の方が良いと感じた点はありましたか?
- 今振り返っても、まだ解消されていない懸念はありますか?
ここで重要なのは、「自社商品の弱点を聞く」こと自体ではなく、顧客の意思決定を止める条件を理解することです。
回答を深掘りする5つの追加質問
予定していた質問を全部聞くことより、重要な回答を深掘りすることを優先します。
| 深掘り目的 | 質問例 |
|---|---|
| 具体化 | 具体的にはどのような場面でしたか? |
| 事例 | 最近の例を一つ教えていただけますか? |
| 順序 | その後、次に何をしましたか? |
| 理由 | その判断をした理由をもう少し教えてください。 |
| 比較 | 他の選択肢と比べると、何が違いましたか? |
「なぜ?」だけを繰り返すと尋問のようになったり、回答者に理由を後付けさせたりすることがあります。
「そのとき何が起きましたか?」「具体的な例はありますか?」と、経験へ戻る質問も組み合わせます。
避けたい顧客インタビューのNG質問
最も注意したいのは、自分たちが確認したい仮説を回答者に肯定させる質問です。
| NG質問 | 問題 | 改善例 |
|---|---|---|
| この機能は便利だと思いませんか? | 肯定へ誘導する | この機能について、どのように感じましたか? |
| 価格が高かったことが導入障壁でしたか? | 原因を決めつける | 導入を迷った理由には何がありましたか? |
| このサービスがあれば使いますか? | 未来予測を求める | 現在、この課題にはどのように対応していますか? |
| 機能と価格に満足していますか? | 二つの論点を同時に聞く | 機能と価格を分けて聞く |
| なぜもっと早く導入しなかったのですか? | 責められているように感じる可能性 | 検討開始までに、どのような事情がありましたか? |
| 御社ではDX推進上の課題がありますか? | 意味が広く抽象的 | 直近で○○業務に困った場面を教えてください。 |
顧客インタビューの60分質問構成例
質問数を増やしすぎず、重要な回答を深掘りできる余白を残します。
| 時間 | テーマ | 主な質問 |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 導入・役割確認 | 担当業務、対象業務への関与 |
| 5〜15分 | 導入前の状況 | 従来方法、直近の課題、困った場面 |
| 15〜25分 | 検討開始 | きっかけ、情報収集、社内関係者 |
| 25〜40分 | 比較・意思決定 | 比較候補、判断基準、迷い、非購買理由 |
| 40〜50分 | 利用後 | 変化、想定との差、残る課題 |
| 50〜60分 | 深掘り・確認 | 重要発言の再確認、聞き漏れ確認 |
この時間配分は固定ルールではありません。重要な回答が出た場合は、質問表を最後まで消化することより深掘りを優先します。
インタビュー内容を分析へ渡すときの整理方法
インタビュー終了後は、「発言」「確認できた行動」「解釈」「仮説」を分けて記録します。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 顧客発言 | 「社内説明が面倒でした」 |
| 確認できた行動 | 導入前に3部署へ説明資料を作成した |
| 本人の理由 | 決裁者が効果を理解しにくかった |
| 分析者の仮説 | 機能不足より社内合意形成が導入障壁になっている可能性 |
| 次の検証 | 他の顧客でも同様の傾向があるか定量調査する |
顧客が言ったことと、分析担当者がそこから考えたことを同じ欄に入れると、後から事実と解釈を区別できなくなります。
インタビュー後の発言整理やAI分析については、関連記事「顧客インタビューをAIで分析するには?発言整理からインサイト抽出まで」で詳しく扱います。
一人の顧客の発言を市場全体のニーズにしない
顧客インタビューは「理由」を理解するのに向いていますが、「市場で何人が同じ理由を持っているか」を判断する方法ではありません。
インティメート・マージャーの商品開発関連の取り組みでも、定性データで顧客の悩み・感情・買う理由・買わない理由を理解し、定量データで市場性や優先順位を確認するという役割分担を重視しています。
例えば、5人へのインタビューから「社内説明の難しさ」が繰り返し出てきた場合、それをそのまま「市場の最大課題」と断定するのではなく、
- アンケート
- 行動データ
- 検索データ
- 営業・失注データ
- 市場データ
などで仮説を確認します。
過去のセミナーでも、顧客の多様化に伴い「買わなかった理由」が複数化しており、心理・思考に関するデータを理解する必要性が議論されています。
顧客インタビューの質問設計チェックリスト
- □ インタビュー結果で何を判断するか決まっているか
不明確なら質問作成前に目的を整理します。 - □ 適切な役割の対象者を選んでいるか
利用者・推進者・決裁者を混同していないか確認します。 - □ 購入者だけに偏っていないか
必要なら非購入・失注層も対象にします。 - □ 意見より先に具体的な経験を聞いているか
直近の出来事や行動を質問します。 - □ 自社の仮説を質問文に入れていないか
誘導質問になっていないか確認します。 - □ 買う理由だけを聞いていないか
迷い、障壁、買わない条件も確認します。 - □ 一問一論点になっているか
複数の論点があれば質問を分けます。 - □ 深掘り用の質問を用意しているか
具体例・順序・比較を確認します。 - □ 発言と分析者の仮説を分けているか
事実と解釈を混同しません。 - □ 次の定量検証方法を決めているか
インタビューだけで市場全体を断定しないようにします。
IMMNの一次情報から考える「買わない理由」の重要性
商品開発では、現在購入している顧客を理解するだけでなく、「なぜ他の顧客は買わなかったのか」を理解することが次の成長機会につながります。
インティメート・マージャーがこれまで行ってきた顧客理解に関するセミナーでは、顧客の多様化によって、買わない理由や意思決定の背景も多様になっているという課題が議論されてきました。
属性データから「誰か」、行動データから「何をしたか」は分かっても、
- なぜ選んだのか
- なぜ選ばなかったのか
- 何を不安に感じたのか
- 何と比較していたのか
- どの条件が最後の障壁になったのか
までは分からない場合があります。
そこで顧客インタビューを使って理由の仮説を作り、定量データでその広がりを確認する流れが重要になります。
商品開発Webinarでも、「売れる理由」「買わない理由」を整理し、定性的な顧客理解と定量的な市場分析を組み合わせて仮説を検証することが主要テーマとして扱われています。
まとめ|顧客インタビューは「質問数」より質問の順番と深掘りが重要
顧客インタビューで重要なのは、多数の質問を用意することではありません。
まず調査目的を決め、適切な対象者を選び、過去の具体的な事実から聞き始めます。
そのうえで、
- 何が起きていたのか
- どのように対応していたのか
- 何と比較したのか
- なぜ迷ったのか
- なぜ最終的に選んだのか
- どの条件なら買わなかったのか
を深掘りします。
そして、一人の顧客の発言をそのまま市場ニーズと断定せず、複数のインタビューや定量データで仮説を検証します。
顧客インタビューは答えを直接教えてもらう場というより、顧客の行動や意思決定を理解し、次に検証すべき仮説を作る場として設計することが重要です。
顧客の「買う理由・買わない理由」を商品開発までつなげたい方へ
顧客インタビューで理由が見えても、それが市場全体でどの程度重要なのかまでは、定性調査だけでは判断しきれません。
アーカイブ配信「AI×定性・定量データで『売れる理由』を見つける商品開発」では、定性アプローチによる顧客理解と定量データによる市場分析を組み合わせ、アイデア発想から市場検証まで進める考え方を紹介しています。
顧客インタビューの質問に関するよくある質問
顧客インタビューでは最初に何を質問すればよいですか?
最初は回答者の役割や現在の業務など、答えやすい事実から聞くのがおすすめです。その後、直近の具体的な経験、課題、比較・意思決定へと進みます。
顧客インタビューでは何問くらい質問すればよいですか?
質問数より、重要な回答を深掘りできる余白を残すことが重要です。多数の質問を機械的に消化するより、目的ごとの主要質問と追加質問を用意してください。
顧客の本音を聞くにはどう質問すればよいですか?
「本音を教えてください」と聞くのではなく、実際に起きた出来事や行動を具体的に確認します。「最後に困った場面」「そのとき何をしたか」などから深掘りします。
「なぜ?」を繰り返せばインサイトを得られますか?
「なぜ?」だけでは十分ではありません。具体例、出来事の順序、比較対象、当時の対応などを確認し、経験へ戻りながら理由を掘り下げます。
購入者だけにインタビューすればよいですか?
目的によっては不十分です。買わない理由や導入障壁を知りたい場合は、失注顧客や検討を中止した層なども対象候補になります。
顧客インタビューで商品アイデアを直接評価してもらってもよいですか?
評価を聞くこと自体は可能ですが、その前に現在の課題や行動を確認することが重要です。最初から商品案を見せると、その案を前提に回答が誘導される可能性があります。
顧客インタビューの結果は何人くらいに当てはまると考えればよいですか?
インタビューだけでは市場全体への広がりを判断できません。複数の発言から仮説を作り、アンケートや行動データなどの定量情報で確認してください。

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