「フルファネルもカスタマージャーニーも、結局は認知から購入までを並べた図なのでは?」
マーケティング施策を整理していると、この2つの違いがわからなくなることがあります。
さらにBtoBでは、認知、SEO記事、広告、資料ダウンロード、ウェビナー、インサイドセールス、商談、受注、継続利用と接点が増えます。
その結果、カスタマージャーニーマップを作ったものの、「結局、広告担当は何を変えればよいのか」「営業はどこから関わるのか」「どのKPIを見ればよいのか」が決まらないこともあります。
逆に、ファネルごとにKPIを管理している企業でも、
「リードは増えているのに、なぜ商談にならないのか」
「CPAは下がっているのに、なぜLTVは高くならないのか」
という違和感が残る場合があります。
結論から整理すると、フルファネルとカスタマージャーニーは見る方向が違います。
カスタマージャーニーは、顧客がどのように課題を認識し、情報を集め、比較し、意思決定していくのかを見るための「顧客側の地図」です。
フルファネルは、その顧客状態に対して企業側がどの施策・チャネル・部門・KPIを配置するかを考える「施策側の設計図」です。
インティメート・マージャーの過去セミナーでも、「どんな状態の顧客に、何を、どこで訴求するのか」を一つずつ定義する難しさが語られています。広告媒体やマーケティングツールが増えるほど、このコミュニケーション設計は複雑になります。
この記事では、フルファネルとカスタマージャーニーの違いから、両者をBtoBマーケティングでどう組み合わせればよいのかまで整理します。
要点サマリー
- カスタマージャーニーは「顧客がどう進むか」を理解するために使います。
- フルファネルは「各段階へ企業が何をするか」を設計するために使います。
- ジャーニーだけでは施策・KPIが曖昧になり、ファネルだけでは顧客心理を見落としやすくなります。
- BtoBではマーケティング、営業、CSを同じ流れへ接続することが重要です。
- AI検索の普及により顧客行動はさらに非線形になっていますが、両概念が不要になるのではなく、定期的な更新が重要になります。
- フルファネルとは?
- カスタマージャーニーとは?
- フルファネルとカスタマージャーニーの違い
- 同じ「認知→検討→購入」でも意味は違う
- カスタマージャーニーだけでは施策につながらないことがある
- フルファネルだけでは顧客を数字として見てしまう
- BtoBではカスタマージャーニーが一人分では足りない
- インティメート・マージャーのセミナーで見えた「接点の分断」
- 広告・LP・営業まで文脈をつなぐ
- フルファネルでは「受注」で終わらせない
- フルファネルとカスタマージャーニーはどう使い分ける?
- フルファネル×カスタマージャーニーの設計方法
- 実務例:BtoBサービスの設計
- よくある失敗1:きれいなジャーニーマップを作って終わる
- よくある失敗2:ファネルを直線だと考えすぎる
- よくある失敗3:マーケティングファネルが「受注」で終わる
- よくある失敗4:部門ごとに別のファネルを持つ
- よくある失敗5:施策ごとにメッセージが変わる
- 2026年はAI検索によってカスタマージャーニーがさらに非線形に
- AI検索はファネルの「入口」だけではない
- 2026年はAI検索での可視性も計測対象になり始めている
- 計測も「チャネル単体」から全体へ
- フルファネルとカスタマージャーニーの使い分け早見表
- 明日から使えるチェックリスト
- まとめ:カスタマージャーニーで理解し、フルファネルで実行する
- フルファネルとカスタマージャーニーに関するよくある質問
フルファネルとは?
フルファネルとは、認知から比較、商談、受注、継続まで、顧客との関係を一部分だけではなく全体で捉えてマーケティング・営業施策を設計する考え方です。
「ファネル」は一般的に、顧客が上流から下流へ進むにつれて人数が絞られていく様子を漏斗に例えたものです。
フルファネルでは、広告による新規獲得だけではなく、
- 認知
- 興味・関心
- 情報収集
- 比較検討
- 商談
- 受注
- オンボーディング
- 継続
- アップセル・クロスセル
まで接続して考えます。
つまり、フルファネルで中心となる問いは、
「この段階の顧客に対して、企業として何をするか?」
です。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知し、検討し、購入・導入し、その後利用していく過程を、顧客の行動・感情・疑問・接点などから整理する考え方です。
中心となる問いは、
「顧客はこの段階で何を考え、何をし、何に迷っているのか?」
です。
インティメート・マージャーの2024年セミナーでも、サイト来訪者の行動や属性をもとにカスタマージャーニーを可視化し、そこからターゲット像や訴求軸を施策へ活用する考え方が紹介されていました。
つまり、カスタマージャーニーは施策一覧ではありません。
施策を考える前に、顧客側で何が起きているかを理解するものです。
フルファネルとカスタマージャーニーの違い
| 項目 | フルファネル | カスタマージャーニー |
|---|---|---|
| 視点 | 企業・施策側 | 顧客側 |
| 主な問い | この段階へ何をするか | この段階で顧客は何を考えているか |
| 主目的 | 施策・チャネル・KPIの配置 | 顧客行動・心理・接点の理解 |
| 整理するもの | 広告、SEO、営業、CRM、CSなど | 行動、疑問、感情、情報源、障壁 |
| 代表的な成果物 | 施策マップ・KPI設計 | カスタマージャーニーマップ |
| 得意なこと | 全体最適・部門連携 | 顧客理解・体験改善 |
| 注意点 | 顧客心理を単純化しやすい | 作っただけで施策が動かないことがある |
わかりやすく言えば、
カスタマージャーニーが「地図」、フルファネルが「地図を見ながら配置する施策計画」
という関係です。
同じ「認知→検討→購入」でも意味は違う
両者が混同されやすい理由は、どちらも顧客の段階を並べることが多いためです。
たとえば「比較検討」という段階を考えてみます。
カスタマージャーニーで見る場合
- どのような企業を比較しているか
- 何を比較基準としているか
- 誰に相談しているか
- どのような不安があるか
- 社内承認で何が必要か
- どんな検索・AI質問をしているか
フルファネルで見る場合
- 比較記事を用意する
- 導入事例を提示する
- ウェビナーへ誘導する
- インサイドセールスから接触する
- 営業資料を提供する
- 商談化率をKPIとして確認する
同じ段階を見ていても、目的が違います。
カスタマージャーニーだけでは施策につながらないことがある
カスタマージャーニーマップを作成した経験がある企業では、次のような状態になったことがあるかもしれません。
「顧客は認知段階で不安を感じています」
「比較段階では事例を探しています」
「導入時には社内説明が必要です」
きれいに整理できています。
しかし、その後に、
- 誰が記事を作るのか
- どのチャネルへ出すのか
- どのタイミングで営業が接触するのか
- 何をKPIとするのか
- いつ改善判断をするのか
まで決まっていなければ、ジャーニーマップは「理解」で止まります。
ここでフルファネル設計が必要になります。
フルファネルだけでは顧客を数字として見てしまう
反対に、ファネル管理だけでも問題が起こります。
たとえば、
- 広告表示:10,000
- 資料DL:100
- 商談:20
- 受注:3
という数字だけを見れば、商談化率や受注率は計算できます。
しかし、なぜ80件が商談へ進まなかったのかはわかりません。
顧客側では、
- 料金がわからなかった
- 自社に向いているかわからなかった
- 問い合わせると営業されそうで避けた
- 社内で説明する材料がなかった
- AI検索で別の選択肢を知った
などが起きている可能性があります。
こうした「なぜ」を補うのがカスタマージャーニーや顧客インサイトです。
BtoBではカスタマージャーニーが一人分では足りない
BtoBでは、利用者・担当者・管理者・決裁者など複数の関係者が意思決定へ参加することがあります。
そのため、「一人の顧客が認知から購入へ進む」という単純なジャーニーだけでは説明できないことがあります。
| 関係者 | 主な関心 |
|---|---|
| 実務担当者 | 使いやすさ、業務負荷 |
| マーケティング責任者 | 成果、KPI、施策との接続 |
| 情報システム | 連携、権限、安全性 |
| 経営・決裁者 | 投資対効果、事業への影響 |
同じ「比較検討」という段階でも、それぞれ違う情報を求めます。
フルファネルでは、この複数ジャーニーに対してコンテンツと営業接点を配置します。
インティメート・マージャーのセミナーで見えた「接点の分断」
過去セミナーでは、広告ターゲティングでは特定のペルソナやニーズを想定しているにもかかわらず、広告後に流入したサイトでは、そのユーザーが求めていた文脈と異なる情報しか提示されていない例が語られていました。
そこから、単に「誰へ広告を出すか」ではなく、ユーザーとどう接点を持ち、どのようにカスタマージャーニーを移行してもらうかまで考える企業が増えているという現場感が示されています。
これはフルファネルとカスタマージャーニーを組み合わせる必要性をよく表しています。
広告担当は「ターゲティングできた」と考えている。
一方、顧客はLPへ来た後に「自分向けではない」と感じている。
ファネル上では「広告→サイト流入」まで成功していても、ジャーニー上では体験が切れています。
広告・LP・営業まで文脈をつなぐ
たとえば次のような状態を考えます。
| 接点 | 顧客が期待していること | 企業側の施策 |
|---|---|---|
| 広告 | 自分の課題と関係がありそう | 課題訴求 |
| LP | 自社でも使えるか知りたい | 対象・用途・事例 |
| 記事 | 比較・判断材料が欲しい | 比較・FAQ |
| ウェビナー | より具体的に理解したい | 実務解説・事例 |
| 営業 | 自社条件で相談したい | 個別提案 |
カスタマージャーニーで顧客の期待を整理し、フルファネルで各接点の施策を決めます。
フルファネルでは「受注」で終わらせない
フルファネルの重要な特徴は、受注後まで含めて考えることです。
デジタルマーケティングでは、取得しやすいCPAやCVRが評価指標として使われやすい一方、新規獲得効率と中長期的な顧客価値は同じ問題ではありません。
2026年のセミナーでも、CPAが改善することとLTVの高い顧客を獲得できることを分けて考える必要性が語られています。
| 短期だけを見る場合 | フルファネルで見る場合 |
|---|---|
| 広告CPA | 広告CPA+受注率+継続+LTV |
| リード件数 | リード+商談品質+受注 |
| 受注件数 | 受注+定着+継続 |
インティメート・マージャーのセミナー資料でも、AI任せでCPAだけを最適化すると、安く獲得できる顧客に偏り、中長期のLTVとずれる可能性があるという問題提起があります。
フルファネルとカスタマージャーニーはどう使い分ける?
顧客がなぜ行動しないのかわからない場合
カスタマージャーニーから始めます。
- 何を知りたいか
- 何が不安か
- どの情報源を見るか
- 誰と相談するか
- 何が意思決定を止めているか
を整理します。
施策が部門ごとに分断されている場合
フルファネルから整理します。
- 認知は誰が担当するか
- リード獲得後は誰が担当するか
- 営業へいつ渡すか
- 受注後の情報を誰が戻すか
- どのKPIを共通化するか
を決めます。
施策も顧客理解も整理できていない場合
カスタマージャーニー→フルファネルの順がおすすめです。
顧客理解を先に置き、それを施策へ変換します。
フルファネル×カスタマージャーニーの設計方法
事業ゴールを決める
最初にKGIを確認します。
- 新規受注
- 売上
- 継続率
- LTV
などです。
「資料DLを増やす」のような中間KPIだけから始めないことが重要です。
対象顧客を決める
業種・企業規模などの属性だけではなく、どの課題を持つ企業かまで整理します。
カスタマージャーニーを描く
各段階で、次を確認します。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 行動 | 何をしているか |
| 疑問 | 何を知りたいか |
| 感情・不安 | 何を心配しているか |
| 接点 | どこで情報を得るか |
| 関係者 | 誰と相談・意思決定するか |
ファネルの段階へ整理する
ジャーニー上の行動を、企業が管理しやすい段階に整理します。
- 認知
- 興味
- 情報収集
- 比較
- 商談
- 受注
- 導入
- 継続
施策・コンテンツを配置する
| 段階 | 顧客の疑問例 | 施策例 |
|---|---|---|
| 認知 | この課題は何か | 広告、SEO、SNS、PR |
| 興味 | 自社にも関係するか | 解説記事、診断コンテンツ |
| 情報収集 | どんな解決策があるか | 資料、ウェビナー |
| 比較 | 何を基準に選ぶか | 比較、事例、FAQ |
| 商談 | 自社条件でも使えるか | デモ、提案、営業資料 |
| 導入 | どう始めるか | オンボーディング |
| 継続 | どう成果を広げるか | 活用支援、追加提案 |
担当部門を決める
BtoBでは特に重要です。
| 段階 | 中心となる部門例 |
|---|---|
| 認知 | マーケティング・広報 |
| 興味・情報収集 | マーケティング |
| 比較 | マーケティング・営業 |
| 商談・受注 | 営業 |
| 導入・継続 | CS・営業 |
2025年のセミナー資料でも、認知ではWeb閲覧・広告接触、興味関心では資料DL・ウェビナー参加、比較・購買決定ではデモ・見積依頼などを可視化し、マーケティングと営業が顧客行動データを共有する流れが示されています。
KPIを配置する
| ファネル | KPI例 |
|---|---|
| 認知 | 表示、非指名検索、ブランド想起 |
| 情報収集 | 記事閲覧、資料DL、ウェビナー参加 |
| 比較 | 事例閲覧、比較ページ、再訪 |
| 商談 | 商談化率、案件化率 |
| 受注 | 受注率、売上 |
| 継続 | 利用・継続・LTV |
各KPIは独立させず、次の段階へどうつながったかを確認します。
営業・CSから情報を戻す
一度作ったジャーニーを固定しないことも重要です。
営業が実際に受けた質問、失注理由、CSが把握した導入後のつまずきをマーケティングへ戻します。
2025年のセミナー資料では、営業活動・商談から得た現場ノウハウをデータ化し、マーケティング施策へ戻し、再び顧客インサイト分析へつなげるフィードバックループが示されています。
実務例:BtoBサービスの設計
架空のBtoB業務支援サービスで考えてみます。
| 段階 | カスタマージャーニー | フルファネル施策 | KPI |
|---|---|---|---|
| 課題認知 | 業務効率が悪いと感じる | SEO・広告・SNS | 表示・閲覧 |
| 情報収集 | 改善方法を探す | 解説記事・ウェビナー | 記事回遊・参加 |
| 比較 | 外部サービスも検討 | 比較記事・事例・FAQ | 比較ページ閲覧 |
| 社内検討 | 上司へ説明したい | 導入資料・費用情報 | 資料DL・再訪 |
| 商談 | 自社条件を相談したい | 営業・デモ | 商談化率 |
| 受注 | 導入判断する | 個別提案 | 受注率 |
| 導入 | 使える状態にしたい | オンボーディング | 初期利用 |
| 継続 | 成果を広げたい | 活用支援 | 継続・LTV |
カスタマージャーニーがなければ「比較記事が必要」という理由が見えません。
フルファネルがなければ、比較記事を誰が作り、どの指標で評価し、いつ営業へつなぐかが決まりません。
よくある失敗1:きれいなジャーニーマップを作って終わる
カスタマージャーニー作成そのものがプロジェクトの目的になってしまうケースです。
完成後は各項目について、
- 現在対応できているか
- 不足コンテンツは何か
- どの部門が担当するか
- 改善優先度は何か
まで落とします。
よくある失敗2:ファネルを直線だと考えすぎる
顧客が必ず、
認知→興味→比較→商談→受注
と一方向に進むわけではありません。
一度比較した後に情報収集へ戻ることもあります。
営業後に別のサービスを検索する場合もあります。
導入を延期し、数か月後に再検討する場合もあります。
ファネルは顧客を管理しやすくするモデルであり、実際の人間行動そのものではありません。
よくある失敗3:マーケティングファネルが「受注」で終わる
受注までしか見ていないと、獲得しやすい顧客と長く価値を生む顧客の違いを見落とします。
2026年のセミナーでも、CPAが低い顧客を集めることと、中長期でLTVが高い顧客を獲得することは別問題として整理されていました。
フルファネルでは、継続やアップセルまで戻して獲得施策を評価します。
よくある失敗4:部門ごとに別のファネルを持つ
マーケティングは、
表示→クリック→CV
営業は、
商談→案件→受注
CSは、
導入→活用→継続
だけを見る。
この状態では、顧客は一人なのに社内では3つの別プロセスとして扱われます。
過去セミナーでも、営業側から「リードの質が低い」、マーケティング側から「施策が売上へどうつながったかわからない」といった分断が課題として示されていました。
フルファネルを共通言語として使い、ジャーニー上の顧客状態も共有します。
よくある失敗5:施策ごとにメッセージが変わる
広告で訴求した内容と、LP、記事、営業提案の内容がつながっていないケースです。
2025年のセミナーでは、媒体・ツールの選択肢が増えるほど、「どの状態の顧客に、何を、どこで伝えるか」というコミュニケーション設計が難しくなっているという現場感が語られています。
顧客接点を増やすほど、一貫性の確認も必要になります。
2026年はAI検索によってカスタマージャーニーがさらに非線形に
2026年の顧客行動を考えるうえで、AI検索は無視しにくい接点になっています。
GoogleのAI Modeは日本語でも提供されており、複雑で多面的な質問や追加質問を通して情報収集できる検索体験になっています。
AI Modeでは「query fan-out」と呼ばれる仕組みを用い、一つの質問を複数のサブトピックへ分解し、複数の関連検索を並行して実行します。
これによって、従来なら、
検索
↓
記事
↓
比較記事
↓
企業サイト
と複数回に分けていた情報収集が、AIとの一つの会話の中で進む場合があります。
ただし、これはカスタマージャーニーが不要になるという意味ではありません。
むしろ、
- どんな質問をするのか
- どこで比較候補を知るのか
- どの段階で公式サイトを確認するのか
- どの情報を見て商談へ進むのか
を更新する必要があります。
AI検索はファネルの「入口」だけではない
AI検索は認知だけでなく、比較・判断にも利用されます。
Googleは2026年5月、AI ModeやAI Overviewsについて、関連Webサイトやオリジナルコンテンツへユーザーがアクセスしやすくする更新を発表しています。
そのため、AI検索を単なる「新しいSEOチャネル」と見るのではなく、ジャーニー上の複数地点へ入り得る接点として扱うほうが実務的です。
| ジャーニー | AI検索で想定される質問例 |
|---|---|
| 課題認知 | なぜこの問題が起きる? |
| 情報収集 | 解決方法には何がある? |
| 比較 | 選択肢の違いは? |
| 導入判断 | 自社の場合の注意点は? |
| 利用 | 導入後にどう活用する? |
2026年はAI検索での可視性も計測対象になり始めている
Googleは2026年6月、Search ConsoleにAI OverviewsやAI Modeなど検索の生成AI機能におけるサイトのインプレッションを確認できる専用レポートを発表しました。
ページ、国、デバイス、日付なども確認でき、発表時点では一部サイトへ段階的に提供されています。
これによりフルファネルの上流でも、
- 通常検索での表示
- AI検索での可視性
- サイト閲覧
- 比較・問い合わせ
といった接点を分けて考えられるようになってきています。
ただし、このレポートだけで一人の顧客がAI検索から商談までどう進んだかを直接把握できるわけではありません。
計測も「チャネル単体」から全体へ
フルファネルを考えるなら、計測も一つの広告媒体や一つのCVだけに閉じないことが重要です。
Googleは2026年5月、Google Analytics 360について、ファーストパーティデータやクロスチャネルの指標を統合し、因果的なパフォーマンス測定や将来予測を投資判断へ利用する方向性を発表しています。
またGoogle Marketing Live 2026に向けた発表でも、複数データの接続、実験、マーケティングミックス全体での投資判断を重視しています。
個別施策の数字だけではなく、認知から受注・継続までをどうつなぐかというフルファネル的な考え方と相性が良い方向です。
フルファネルとカスタマージャーニーの使い分け早見表
| こんな課題がある | 先に使う考え方 |
|---|---|
| 顧客がなぜ離脱するかわからない | カスタマージャーニー |
| 顧客が何を比較しているかわからない | カスタマージャーニー |
| 広告・SEO・営業が分断している | フルファネル |
| KPIがチャネルごとにバラバラ | フルファネル |
| カスタマージャーニーマップはあるが施策が変わらない | フルファネル |
| ファネル数値はあるが顧客心理がわからない | カスタマージャーニー |
| マーケから営業・CSまで設計したい | 両方 |
| AI検索を含む最新の情報探索を整理したい | 両方 |
明日から使えるチェックリスト
カスタマージャーニー
- 想像だけではなく実際の検索・営業・問い合わせ情報を使っている
- 各段階の顧客の疑問を整理している
- 顧客が感じる不安・障壁を整理している
- BtoBでは複数関係者を考慮している
- AI検索・SNS・ウェビナーなど現在の接点を含めている
- 一方向だけではなく行き戻りを想定している
フルファネル
- 認知だけでなく商談・受注まで接続している
- 受注後の継続・LTVまで確認している
- 各段階の施策を決めている
- 施策ごとの担当部門を決めている
- 営業・CSから情報を戻す仕組みがある
- CPAだけで成果を評価していない
両者の接続
- 顧客の疑問に対応するコンテンツがある
- 広告とLPのメッセージがつながっている
- 記事と営業資料の説明が大きくずれていない
- ウェビナー参加後の次の行動が設計されている
- 比較時に必要な事例・FAQがある
- ファネルKPIの変化を顧客行動から説明できる
計測
- PV・クリック・CVだけで判断していない
- 商談化率・受注率を確認している
- 継続・LTVまで確認している
- チャネル単体ではなく前後の接点を見ている
- AI検索での可視性も必要に応じて確認している
- 数値変化を顧客インサイトと照合している
まとめ:カスタマージャーニーで理解し、フルファネルで実行する
フルファネルとカスタマージャーニーは、競合する考え方ではありません。
カスタマージャーニーでは、
「顧客は今、何を考えているのか」
を理解します。
フルファネルでは、
「その顧客状態に対して、自社は何をするのか」
を決めます。
そのため、実務では、
顧客を理解する
カスタマージャーニー
↓
必要な施策を決める
フルファネル
↓
広告・SEO・営業・CSで実行する
↓
結果をデータで確認する
↓
カスタマージャーニーを更新する
という循環を作ることが重要です。
インティメート・マージャーの過去セミナーでも、単純なターゲティングから、顧客がどのように接点を移動するかを考えるコミュニケーション設計へ関心が広がっているという現場感が語られていました。
また、営業とマーケティングの連携では、認知から比較・購買までのバイヤージャーニーを可視化し、営業現場の情報を再びマーケティングへ戻すフィードバックループが重要です。
2026年は、ここへさらにAI検索が加わっています。
顧客は必ずしも検索結果を上から順番にクリックして比較するわけではありません。AIに複雑な質問を行い、その回答から複数のWebサイトや選択肢を知る検索体験も広がっています。
だからといって、従来のファネルやカスタマージャーニーを捨てる必要はありません。
固定された図として扱わず、実際の検索、サイト行動、営業質問、商談結果、継続状況をもとに更新すればよいのです。
まずは現在使っているカスタマージャーニーマップを開いてみてください。
そして各段階の横に、
「ここで自社は何をしているか」「誰が担当しているか」「何をKPIにしているか」
を書き足します。
書けない場所があれば、そこがフルファネル上の空白です。
反対にファネル表だけがある場合は、各段階へ、
「顧客は何を知りたいか」「なぜ次へ進まないのか」
を書き足してください。
書けなければ、そこが顧客理解の空白です。
カスタマージャーニーで顧客を理解し、フルファネルで施策をつなぐ。この2つを往復することで、認知・獲得だけではなく、商談・受注・継続まで一貫したBtoBマーケティングを設計しやすくなります。
マーケティング施策は増えているのに、認知・商談・受注が一本につながっていない方へ
インティメート・マージャーでは、AI活用、データ活用、顧客理解、広告運用、BtoB営業・マーケティング連携など、施策設計を実務へ落とし込むためのセミナー・ウェビナー情報を掲載しています。
現在開催予定のセミナーがない場合でも、過去の開催レポートや関連コンテンツをご確認いただけます。
フルファネルとカスタマージャーニーに関するよくある質問
フルファネルとカスタマージャーニーの違いは何ですか?
カスタマージャーニーは顧客がどのように認知・情報収集・比較・意思決定するかを理解するための考え方です。フルファネルは、その各段階へ広告、SEO、営業、CRM、CSなどの施策とKPIを配置するための考え方です。
フルファネルとカスタマージャーニーはどちらを先に作るべきですか?
顧客理解が不足している場合はカスタマージャーニーから始めると整理しやすくなります。その後、各顧客状態へ施策・担当者・KPIを配置し、フルファネルへ落とし込みます。
マーケティングファネルとフルファネルの違いは何ですか?
一般的なマーケティングファネルが認知からコンバージョンまでを中心に扱うことがあるのに対し、フルファネルでは営業の商談・受注、さらに導入後の継続やLTVまで含めて設計する考え方として使われます。
カスタマージャーニーマップを作っても施策につながらないのはなぜですか?
顧客の行動や心理を整理するだけで、担当施策、チャネル、期限、KPIまで決めていない可能性があります。ジャーニーで見つけた顧客課題をフルファネルの施策へ変換する必要があります。
BtoBのカスタマージャーニーで注意することは何ですか?
担当者一人だけではなく、利用者、責任者、決裁者など複数関係者を考慮することです。また、営業質問や失注理由をジャーニーへ戻し、定期的に更新する必要があります。
AI検索によってカスタマージャーニーは不要になりますか?
不要にはなりません。AI検索によって情報収集・比較の方法が変化するため、むしろAIへの質問やAIからWebサイトへの移動などを新しい顧客接点としてジャーニーへ追加する必要があります。
フルファネルではどのKPIを見ればよいですか?
認知なら表示・検索、情報収集なら記事閲覧や資料DL、比較なら事例・比較ページ、商談なら商談化率、受注なら受注率、受注後は継続・LTVなど、各段階のKPIを前後につないで確認します。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。


