「カスタマージャーニーマップは作った。それなのに、実際のマーケティング施策はほとんど変わっていない」。
「広告ではターゲットに合わせた訴求をしているのに、Webサイトへ来ると全員に同じ情報を見せている」。
「マーケティングでは見込み顧客として扱っているのに、営業から見るとまだ検討段階ではないと言われる」。
顧客体験を考える現場では、このような違和感が起こります。
顧客の行動を整理するためにカスタマージャーニーを作ることは重要です。しかし、顧客がどのような行動をするかを図にしただけでは、実際の体験は変わりません。
過去のインティメート・マージャーのセミナーでも、広告で特定の顧客像を狙っている一方、流入後のWebページでは、その顧客の検討状況や文脈を十分に考慮した情報が用意されていないという課題が語られていました。そこから、「ターゲティング」だけではなく、顧客とどのような接点を持ち、次の検討段階へ進んでもらうかを考える必要性が示されています。
つまり、重要なのは「顧客の旅を描くこと」だけではありません。
顧客が各接点で何を感じ、何に迷い、何を必要とし、企業側がどの情報・対応・仕組みを提供するかまで決めることが、顧客体験設計です。
この記事では、顧客体験設計とカスタマージャーニーの違い、BtoBで顧客体験が分断される原因、具体的な設計手順、データ・AIの活用方法、KPIまで整理します。
要点サマリー
- カスタマージャーニーは顧客の行動・感情・接点を理解するための可視化です。
- 顧客体験設計は、可視化した課題を基に、実際の接点・情報・業務・データを変えることまで含みます。
- BtoBではWebだけでなく、広告、記事、セミナー、営業、導入、サポートまでを一つの体験として見る必要があります。
- 顧客理解には、アンケートなどの意識情報と、Web・購買・営業などの行動情報を組み合わせます。
- AI活用では、細かな出し分けを増やす前に、顧客状態、判断条件、人間の承認、データ取得方法を設計することが重要です。
- 顧客体験設計とは?
- 顧客体験設計とカスタマージャーニーの違い
- カスタマージャーニーマップとは?
- 顧客体験設計では「企業側の行動」まで決める
- BtoBで顧客体験設計が重要な理由
- 顧客体験が分断される5つの原因
- 顧客体験設計で整理する8つの項目
- BtoBの顧客体験設計例
- 顧客体験設計を進める7ステップ
- カスタマージャーニーを作っても成果につながらない理由
- 顧客体験設計とパーソナライゼーションの違い
- AIによって顧客体験設計はどう変わるのか
- AI検索によって顧客体験の入口も変化している
- AI検索時代でも「顧客に役立つ情報」が基本
- 顧客体験設計ではデータを「顧客の状態を理解する材料」として使う
- 顧客体験を測るKPI
- チャネル別ではなく顧客単位で計測する
- 生成AI検索の接点も計測対象になり始めている
- 顧客体験設計でよくある失敗
- 明日から使える顧客体験設計チェックリスト
- まとめ:カスタマージャーニーは地図、顧客体験設計は実際に道を変えること
- 顧客体験設計に関するよくある質問
顧客体験設計とは?
顧客体験設計とは、顧客が企業や商品・サービスと関わる一連の接点について、「どのような状態になってほしいか」を定義し、その状態を実現するための情報、導線、対応、業務、データを設計することです。
顧客体験は、Webサイトだけで決まりません。
- 検索で企業を見つける
- AIへ質問する
- 記事を読む
- 広告を見る
- セミナーへ参加する
- 営業担当者と話す
- 提案資料を見る
- 契約する
- サービスを使い始める
- 問い合わせる
- 更新を検討する
これらの接点を顧客は必ずしも別々の部署として認識していません。
広告運用チーム、SEO担当、営業、カスタマーサクセスが社内では別組織でも、顧客から見れば「同じ会社との体験」です。
そのため、顧客体験設計ではチャネルごとの最適化だけでなく、接点間のつながりを確認します。
顧客体験設計とカスタマージャーニーの違い
両者は密接に関係しますが、役割が異なります。
| 比較項目 | カスタマージャーニー | 顧客体験設計 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 顧客の行動・感情・接点を理解する | 望ましい体験を実現する |
| 中心となる問い | 顧客はどう行動しているか | 各段階で何を提供すべきか |
| 主な成果物 | カスタマージャーニーマップ | 施策、コンテンツ、業務、データ、KPI |
| 対象 | 顧客の行動・感情 | 顧客+企業側の仕組み |
| 実行 | 現状理解で止まる場合がある | 施策変更まで行う |
| 更新 | 調査時点の仮説になりやすい | 実データを使い継続的に更新する |
簡単に言えば、カスタマージャーニーは「理解するための地図」、顧客体験設計は「その地図を基に道路や案内を改善すること」です。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップは、顧客が商品・サービスを認知してから、情報収集、比較、購入、利用などへ進む過程を可視化したものです。
一般的には次のような項目を整理します。
| 項目 | 整理する内容 |
|---|---|
| 顧客の状態 | 認知、課題理解、比較、導入など |
| 行動 | 検索、記事閲覧、問い合わせ、商談など |
| 接点 | 検索、SNS、Web、メール、営業など |
| 思考 | 何を知りたいか、何を判断しているか |
| 感情 | 不安、期待、迷い、納得など |
| 課題 | 次の行動を妨げるもの |
問題は、これを作成して会議資料に保存したままにしてしまうことです。
顧客体験設計では、このマップから「企業側が何を変えるか」を追加します。
顧客体験設計では「企業側の行動」まで決める
| 顧客の状態 | 顧客の疑問 | 企業側の体験設計 |
|---|---|---|
| 課題を認識する | なぜ成果が出ないのか | 課題解説記事、診断、調査データを提供する |
| 解決策を調べる | どの方法があるのか | 選択肢・比較軸・用語を整理する |
| 企業を比較する | どこを選べばよいか | 事例、違い、向き・不向き、FAQを提供する |
| 問い合わせを検討する | 相談すると何が起きるのか | 相談内容、流れ、必要情報を明示する |
| 商談する | 自社で導入できるか | 過去行動を踏まえて必要な情報を提示する |
| 導入する | どう使えば成果につながるか | オンボーディング、活用支援を行う |
| 利用を続ける | さらに活用できないか | 利用状況に応じて支援内容を変える |
顧客体験設計の成果物は、きれいな図ではありません。
記事、LP、メール、営業資料、CRM項目、対応ルール、FAQ、オンボーディングなど、実際の業務へ反映されることが重要です。
BtoBで顧客体験設計が重要な理由
顧客接点が複数部門へまたがる
BtoBでは、商品を知ってから購入するまでに多くの接点があります。
- 検索・AI検索
- 記事
- 広告
- SNS
- ホワイトペーパー
- ウェビナー
- メール
- 営業
- 提案
- 契約
- 導入支援
それぞれを担当する部署が異なるため、顧客体験が分断されやすくなります。
購入関係者が一人ではない
BtoBの比較検討では、実務担当者だけでなく、上司、決裁者、情報システム、法務、購買などが関係する場合があります。
そのため「ペルソナ一人の旅」を描くだけでは不足する場合があります。
実務担当者には使い方、経営層には事業効果、情報システムには連携・セキュリティなど、必要な体験が異なります。
検討期間が長く状態が変わる
資料をダウンロードした翌日に購入するとは限りません。
数か月後に再検討を始める場合や、一度失注した案件が再開する場合もあります。
「資料をダウンロードした人」という固定ラベルではなく、現在の状態を見る必要があります。
顧客体験が分断される5つの原因
原因1:ターゲティングと流入後の体験がつながっていない
広告では非常に細かなターゲット設定を行っているのに、クリック後のページが全員共通というケースがあります。
過去セミナーでも、特定のニーズを持つ顧客を広告で狙ったにもかかわらず、流入後にその顧客の文脈と合わないコンテンツが表示されるケースが例として語られています。
広告、LP、記事、営業まで、顧客が持っている疑問をつなげます。
原因2:ペルソナが固定されている
「40代・部長・従業員500名企業」のような属性は、顧客理解の一部です。
同じ属性でも、課題に気付いていない人と、すでに3社比較している人では必要な情報が異なります。
属性だけでなく、次を確認します。
- 現在の課題
- 検討段階
- 最近の行動
- 過去の接点
- 導入障壁
- 社内関係者
原因3:アンケートと実際の行動のどちらかだけを見る
アンケートは、「何に困っているか」「何を重視しているか」といった意識を理解するのに有効です。
一方、Web閲覧、資料DL、広告反応、商談結果などは実際の行動を示します。
プロジェクト内の実務資料でも、アンケート回答は記憶・意識・自己申告に近く、実際の接触・購買行動とはずれる場合があるため、配信結果、LP行動、営業反応などと組み合わせて判断する必要性が整理されています。
顧客が「言っていること」と「実際にしていること」の両方を見ることが重要です。
原因4:データを取得する仕組みが体験に組み込まれていない
AI分析をしたくても、そもそも顧客データが蓄積されていないケースがあります。
過去セミナーでは、分析技術の進化によって「分析できない」よりも、「分析するためのデータがない」という相談が増えているという現場感が紹介されています。
そして、顧客へ無理に入力を求めるのではなく、利用体験の中で自然に必要なデータが蓄積される設計が重要だという議論がありました。
顧客体験とデータ取得は別々に考えないことがポイントです。
原因5:マップを作っても誰も施策を変更しない
最大の問題は、カスタマージャーニーの課題がわかっていても、担当者や改善期限が決まっていないことです。
「比較段階で不安がある」という発見だけでは改善されません。
- FAQを追加するのか
- 事例を作るのか
- 営業資料を変えるのか
- 料金説明を変えるのか
- メールを変えるのか
- 商品そのものを改善するのか
誰がいつまでに変えるかまで決めます。
顧客体験設計で整理する8つの項目
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 顧客状態 | 今どのような状況か |
| 目的 | 顧客が何を達成したいか |
| 疑問・不安 | 何が次の行動を妨げているか |
| 行動 | 検索、閲覧、相談など何をしているか |
| 接点 | 広告、Web、営業などどこで接しているか |
| 提供体験 | 企業側が何を伝え・実行するか |
| データ | 状態を何によって確認するか |
| KPI | 改善したかどうかを何で測るか |
BtoBの顧客体験設計例
| 段階 | 顧客の状態 | 必要な体験 | データ |
|---|---|---|---|
| 課題認識 | 成果が出ない原因を調べる | 原因を整理できる情報 | 検索クエリ、記事閲覧 |
| 解決策探索 | 解決方法を調べる | 選択肢と判断基準 | 回遊、資料、セミナー |
| 比較 | 候補企業を比較する | 違い、事例、向き・不向き | 商品・事例ページ閲覧 |
| 社内検討 | 上司・関係部門へ説明する | 社内説明しやすい情報 | 資料DL、再訪問 |
| 商談 | 導入条件を確認する | 過去検討を踏まえた会話 | CRM、商談ログ |
| 導入 | 利用を開始する | 迷わず価値へ到達する支援 | 利用・問い合わせ |
| 継続 | 価値を再評価する | 利用状態に合う支援 | 利用頻度、更新、CS |
顧客体験設計を進める7ステップ
目的と対象顧客を決める
最初から「全顧客の体験を改善する」とすると範囲が広すぎます。
たとえば次のように対象を決めます。
- ウェビナー参加後に商談へ進まない企業
- 比較記事を読んだ後に離脱するユーザー
- 問い合わせ後に失注する企業
- 導入後に利用が定着しない顧客
まず一つの顧客状態を選びます。
顧客データを集める
顧客体験設計では一種類のデータだけに頼りません。
| データ | わかること |
|---|---|
| アンケート | 意識、認知、不満、重視点 |
| インタビュー | 背景、感情、判断理由 |
| 検索データ | 顧客の疑問・情報探索 |
| Web行動 | 実際に見たコンテンツ |
| 広告反応 | 関心を持った訴求 |
| 営業ログ | 比較、懸念、失注理由 |
| 問い合わせ | 利用上の疑問・問題 |
| 利用データ | 実際の活用状況 |
2024年のインティメート・マージャーのセミナーでも、Web行動やユーザー属性を組み合わせ、カスタマージャーニーをデータから可視化し、クリエイティブや施策へ接続する考え方が紹介されていました。
現在のカスタマージャーニーを可視化する
理想の顧客像だけではなく、実際に現在起きている行動を整理します。
「顧客はこう動くはず」ではなく、可能な範囲でデータや営業現場の情報から確認します。
顧客が止まるポイントを特定する
すべての接点を同時に改善する必要はありません。
- 広告からLPで離脱している
- 資料DL後に次の行動がない
- ウェビナー後の営業接触が遅い
- 比較時に料金・導入条件がわからない
- 商談後に社内検討が止まる
- 契約後に利用方法がわからない
顧客体験上のボトルネックを選びます。
望ましい体験を設計する
「離脱率を改善する」だけではなく、顧客側の状態として定義します。
| 企業側のKPI | 顧客側の理想状態 |
|---|---|
| 問い合わせ率向上 | 相談すると何をしてもらえるか理解できる |
| 商談化率向上 | 自社に必要な解決策か判断できる |
| 受注率向上 | 導入後の不安を解消できる |
| 継続率向上 | サービスの価値を継続的に感じられる |
企業KPIだけでなく、「顧客に何ができるようになってほしいか」を定義します。
施策・データ・担当者を決める
| 項目 | 設定例 |
|---|---|
| 課題 | 比較時に違いがわからない |
| 施策 | 比較記事・事例・FAQを追加 |
| 利用データ | 閲覧、回遊、問い合わせ内容 |
| 担当 | マーケティング+営業 |
| KPI | 比較ページ回遊、商談化 |
| 見直し日 | 一定期間後 |
小さく検証して更新する
顧客体験設計に完成形はありません。
顧客や市場が変われば、必要な体験も変わります。
プロジェクト内の運用資料でも、アンケート、配信結果、LP回遊、FAQ閲覧、問い合わせ、営業メモを定期的に確認し、次の施策へ戻すことが重要だと整理されています。
カスタマージャーニーを作っても成果につながらない理由
ペルソナを想像だけで作る
社内会議だけで作った顧客像は、実際の顧客とずれる可能性があります。
検索、問い合わせ、営業、インタビューなどで確認します。
タッチポイントを並べるだけ
「検索→Web→問い合わせ→商談」と並べても、各接点で何を提供するか決まっていなければ施策は変わりません。
顧客の感情だけを書く
「不安」「期待」と書くだけでなく、何に対する不安なのかを具体化します。
マーケティングだけで作る
営業やカスタマーサクセスには、Webでは見えない顧客の質問や迷いがあります。
複数部門から情報を集めます。
作成後に更新しない
検索行動、商品、競合、市場は変化します。
カスタマージャーニーも定期的に見直します。
顧客体験設計とパーソナライゼーションの違い
顧客体験設計とパーソナライゼーションも混同しやすい概念です。
| 項目 | 顧客体験設計 | パーソナライゼーション |
|---|---|---|
| 目的 | 顧客との体験全体を改善する | 顧客状態に合わせて内容を調整する |
| 範囲 | 接点・業務・商品・データまで広い | 表示内容・訴求・タイミングが中心 |
| 例 | 問い合わせから商談までの流れを改善 | 閲覧テーマごとに案内記事を変える |
パーソナライゼーションは顧客体験改善の一つの手段です。
細かな出し分けを増やすこと自体を目的にしないようにします。
プロジェクト内の実務資料でも、パーソナライゼーションは単なる細分化ではなく、顧客定義、判断条件、見直し周期、成果との接続まで含めて運用する必要があると整理されています。
AIによって顧客体験設計はどう変わるのか
2026年の顧客体験を考えるうえでは、生成AI・AIエージェントの存在も無視できません。
過去セミナーでは、2026年のマーケティングテーマとして、顧客が行動した後に反応するだけでなく、データから状態を予測して先回りする「プロアクティブな顧客体験設計」が論点として扱われています。
顧客の状態を整理する
AIは、Web行動、CRM、問い合わせ、コンテンツ閲覧など複数データの整理を支援できます。
大量のデータから、顧客が現在どのような状態にあるかという仮説を作りやすくなります。
次に必要な情報を提案する
たとえば比較中の顧客に、基礎的な用語解説を繰り返し表示するより、事例や比較情報を案内するほうが自然な場合があります。
AIを使えば、過去の行動や質問に応じてコンテンツ候補を作る支援ができます。
社内担当者の意思決定を支援する
AI活用は顧客へ直接メッセージを出す用途だけではありません。
- 営業が次に確認すべき質問を整理する
- 問い合わせ内容を分類する
- 失注理由を集約する
- 顧客ごとに必要な情報を候補化する
- 体験上のボトルネックを発見する
といった社内支援にも利用できます。
AIに任せる前に判断条件を決める
AIを導入すると、より細かな出し分けや自動判断が可能になります。
一方で、判断基準が曖昧なまま自動化すると、顧客にとって不自然な体験が大量に発生する可能性があります。
- 誰を対象とするか
- 何のデータを利用するか
- どの状態なら何を出すか
- どこで人間へ引き継ぐか
- 何をしてはいけないか
- 結果をどのKPIで評価するか
を先に決めます。
AI検索によって顧客体験の入口も変化している
2026年は、顧客が企業サイトへ到達する前の情報探索も変化しています。
GoogleはAI OverviewsやAI Modeを拡張し、質問への回答から追加質問、関連Webサイトの探索へ連続的に進める検索体験を提供しています。従来の「検索キーワード→検索結果→Webサイト」だけでなく、会話型の情報探索を顧客接点として考える必要があります。
またGoogleは2026年6月、生成AI検索によって従来とは異なる種類の質問が行われ、新たなブランド・Webサイトとの接点が生まれていると説明しています。
そのため顧客体験設計でも、サイト訪問後だけでなく、訪問前にどの質問へ答えるのかを考えることが重要です。
AI検索時代でも「顧客に役立つ情報」が基本
AI検索対応というと、特別な文章形式や新しいテクニックを追加したくなるかもしれません。
しかしGoogleは、AI OverviewsやAI Modeでも従来のSEOの基本が引き続き有効であり、AI機能に表示されるためだけの特別な追加要件はないと説明しています。独自性があり、顧客に価値を提供するコンテンツが引き続き重要です。
これは顧客体験設計とも一致します。
「AIに読ませるための情報」ではなく、顧客が疑問を解決し、次の判断へ進める情報を整理することが基本です。
顧客体験設計ではデータを「顧客の状態を理解する材料」として使う
データ量を増やすだけでは顧客体験は改善しません。
重要なのは、そのデータが何を意味するかです。
| データ | わかる可能性があること | 注意点 |
|---|---|---|
| 検索クエリ | 疑問・課題 | 企業・人物を直接特定できるとは限らない |
| 記事閲覧 | 興味テーマ | 閲覧=購入意思ではない |
| 資料DL | 情報収集 | 導入時期はわからない |
| セミナー参加 | テーマへの関心 | 具体案件とは限らない |
| 商談ログ | 検討条件・懸念 | 入力品質に依存する |
| 利用データ | 実際の活用状況 | 使わない理由は別調査が必要 |
| アンケート | 意識・不満・期待 | 自己申告と行動が異なることがある |
一つのデータから顧客状態を断定せず、複数の情報を組み合わせます。
顧客体験を測るKPI
| 段階 | 顧客体験 | KPI例 |
|---|---|---|
| 認知 | 自社・課題を知る | ブランド検索、検索露出、接触 |
| 情報収集 | 疑問を解消できる | 閲覧、回遊、コンテンツ利用 |
| 比較 | 違いを理解できる | 比較・事例閲覧、再訪問 |
| 問い合わせ | 安心して相談できる | 問い合わせ、商談化 |
| 商談 | 自社への適合性を判断できる | 案件化、検討期間、失注理由 |
| 導入 | 迷わず利用を始められる | 初期設定、利用開始、問い合わせ |
| 継続 | 価値を継続的に感じられる | 利用、更新、継続、LTV |
企業側のコンバージョンだけでなく、「顧客が次の判断へ進めたか」という視点を持ちます。
チャネル別ではなく顧客単位で計測する
広告、SEO、メール、セミナー、営業を別々に評価すると、どの接点が顧客の意思決定へ影響したか見えにくくなります。
2026年のGoogleのマーケティング関連発表でも、断片化したデータソースを接続し、チャネル横断で何が事業成果へ寄与したかを理解する方向へ計測基盤を強化しています。
顧客体験設計でも、媒体ごとの成果だけではなく、次の接点へ進んだかを確認します。
- 広告→記事
- 記事→ウェビナー
- ウェビナー→商談
- 商談→受注
- 受注→利用開始
- 利用開始→継続
生成AI検索の接点も計測対象になり始めている
Googleは2026年6月、Search Consoleに生成AI検索の表示状況を確認する専用レポートを一部サイト向けに展開すると発表しました。AI OverviewsやAI Modeなどでの露出を把握するための計測が進み始めています。
すべてのサイトや環境で同じデータを利用できるとは限りませんが、今後は顧客体験の入口として「通常検索」と「AI検索」を分けて理解する場面も増える可能性があります。
顧客体験設計でよくある失敗
カスタマージャーニーを作ることが目的になる
完成した図の美しさではなく、施策・業務が変わったかを確認します。
顧客を一つのペルソナに固定する
顧客の検討状況やニーズは変化します。状態を更新できる設計にします。
属性だけを顧客理解と考える
年齢・役職・業種だけでなく、課題、行動、検討状況、障壁を確認します。
アンケートだけを正解として扱う
自己申告と実行動がずれる可能性があるため、行動・営業データも確認します。
Webサイトだけを改善する
顧客体験は検索、広告、営業、導入、サポートまで続きます。
パーソナライゼーションの数を増やす
出し分け数より、どの顧客状態にどの情報が必要かを整理します。
AIへすべての判断を任せる
利用データ、判断条件、例外、人間への引き継ぎを設定します。
顧客体験とデータ取得を別に考える
顧客へ不要な入力負担を増やさず、自然な体験の中で必要な情報が得られる方法を考えます。
短期CVだけで判断する
商談、受注、利用、継続まで確認します。
明日から使える顧客体験設計チェックリスト
顧客理解
- 想定顧客を属性だけで定義していない
- 顧客が現在どのような状態か整理している
- 顧客が達成したい目的を理解している
- 顧客の不安・迷い・判断条件を整理している
- アンケートと実際の行動の両方を確認している
カスタマージャーニー
- 実データや営業の声を反映している
- 顧客が一直線に進む前提にしていない
- 比較・再検討・失注後も考慮している
- BtoBの複数関係者を考慮している
- 一定期間ごとに更新している
接点
- 広告とLPの訴求が一致している
- 記事と次のコンテンツがつながっている
- ウェビナー後のフォローが決まっている
- マーケティングと営業の説明が一致している
- 受注後も顧客体験を設計している
データ
- 顧客状態を判断するデータを決めている
- 一つのデータだけで購買意向を断定していない
- 営業・問い合わせデータも活用している
- 必要以上のデータ取得を求めていない
- データの利用目的と権限を確認している
施策
- 各顧客課題に対応するコンテンツがある
- 次に進むためのCTAが明確である
- 施策ごとに担当者を決めている
- 改善期限を決めている
- 顧客の反応を次の施策へ戻している
AI
- AIに任せる目的が決まっている
- 利用するデータを定義している
- 自動判断の条件を決めている
- 人間へ引き継ぐ条件を決めている
- 顧客へ不自然なコミュニケーションが出ていないか確認している
KPI
- WebのCVだけで顧客体験を評価していない
- 商談・受注まで確認している
- 導入後の利用状況を確認している
- 継続・LTVまで確認している
- 改善前後の顧客行動を比較している
まとめ:カスタマージャーニーは地図、顧客体験設計は実際に道を変えること
顧客体験設計とカスタマージャーニーは、似ていますが役割が異なります。
カスタマージャーニーは、顧客が何を考え、どのように行動し、どの接点で企業と関わっているかを理解するためのものです。
顧客体験設計は、その理解を基に、実際の広告、記事、Webサイト、メール、営業、商品、オンボーディングなどを変えることです。
カスタマージャーニーを描いても、広告とLPがつながっていなければ顧客体験は変わりません。
アンケートで顧客の悩みがわかっても、記事や営業資料へ反映しなければ体験は変わりません。
AIで顧客状態を分析しても、次の対応ルールが決まっていなければ体験は変わりません。
過去セミナーからも見えてきたのは、顧客理解を「分析」で終わらせず、接点やコミュニケーションへ戻すことの重要性です。
また、AI・データ活用が進むほど、顧客体験設計はより重要になります。
データ処理や出し分けを高速化できても、「顧客にどのような体験を提供したいか」は企業側が決める必要があるからです。
まずは自社のすべてのカスタマージャーニーを作り直す必要はありません。
問い合わせ前、商談前、導入直後など、顧客が最も迷っている一つの場面を選んでください。
そこで、顧客が何に困っているのか、どのデータで確認できるのか、どの情報・対応を変えるのか、誰が実行するのかを整理します。
顧客体験設計とは、顧客について理解するための活動ではなく、理解したことを企業の行動へ変えるための設計です。
顧客理解を広告・コンテンツ・営業施策へつなげたい方へ
インティメート・マージャーでは、AI、外部データ、顧客理解、インテントデータ、BtoBマーケティング、営業連携などをテーマとしたセミナー・ウェビナー情報を掲載しています。
「カスタマージャーニーは作ったものの施策へ落とせていない」「AIやデータを顧客体験改善へどう活かすべきかわからない」という方は、最新のセミナー情報や開催レポートをご確認ください。
顧客体験設計に関するよくある質問
顧客体験設計とは何ですか?
顧客が企業や商品・サービスと接する一連の過程について、各段階でどのような状態になってほしいかを定義し、その状態を実現する情報、導線、対応、データ、業務を設計することです。
顧客体験設計とカスタマージャーニーの違いは何ですか?
カスタマージャーニーは顧客の行動・感情・接点を理解するための可視化です。顧客体験設計は、その理解をもとに実際のコンテンツ、営業、商品、業務などを改善するところまで含みます。
カスタマージャーニーマップはどのように作りますか?
顧客の状態、行動、接点、疑問、感情、課題を段階別に整理します。社内の想像だけで作らず、アンケート、Web行動、営業、問い合わせなどの情報を使って検証することが重要です。
BtoBの顧客体験設計で重要なことは何ですか?
複数の担当者・決裁者が関係すること、検討期間が長いこと、マーケティング・営業・導入支援など接点が複数部門へまたがることを考慮する必要があります。
顧客体験改善にはどのデータを使えばよいですか?
アンケート、インタビュー、検索クエリ、Web閲覧、広告反応、営業ログ、問い合わせ、利用データなどを組み合わせます。一種類のデータだけで顧客状態を判断しないことが重要です。
AIは顧客体験設計にどう活用できますか?
顧客情報の整理、状態の仮説化、次に必要な情報の候補作成、問い合わせ分類、営業支援などに利用できます。ただし、判断条件や人間への引き継ぎルールは事前に設計します。
顧客体験の成果は何で測ればよいですか?
WebのCVだけではなく、回遊、問い合わせ、商談、受注、利用開始、継続、LTVなどを段階別に確認します。顧客が次の判断へ進めたかという視点も重要です。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。


