温度感を見極める次世代ウェビナー運用
ウェビナーが飽きられる時代に成果を伸ばす鍵は、視聴者の温度感把握と顧客最適化です。インテントデータ×AIで企画・配信・営業連携を進化させる考え方と実践像を解説します。
登壇者紹介
本セミナーには、株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長の簗島亮次氏と、エキサイト株式会社 執行役員の大熊勇樹氏が登壇されています。簗島氏は、広告やアドテクノロジー領域で培ったオーディエンスデータ活用を起点に、近年はデータ活用やAI活用の文脈で企業の営業効率化を支援されています。本セミナーでも、法人の興味関心や検討意図を捉える「インテントデータ」を軸に、ウェビナー施策をどう変えていくかを語られました。大熊氏はエキサイトで新規事業を推進され、ウェビナー施策を一元管理するプロダクト「FanGrowth」を中心に、企画から配信、二次利用までを支援する立場として登壇されています。ウェビナーが急増した市場環境の変化と、成果につなげるための運用設計を、現場視点で整理されました。
セミナーの背景と問題意識
コロナ禍以降、オンライン施策として普及したウェビナーは、いまや多くの企業にとって当たり前の選択肢になっています。セミナー内では、オフラインイベントも回復し、以前と同等、場合によってはそれ以上の規模感に戻っている現状が共有されました。その一方で、オンラインのウェビナー数も増え続けており、B2Bのビジネス系イベント全体はコロナ前と比較して大幅に増えている実感が語られています。
市場が拡大すること自体は追い風ですが、運用側には新しい悩みが生まれています。視聴者の“ウェビナー慣れ”が進み、単なる情報提供では満足されにくくなっている点です。配信が増えすぎた結果、似たテーマや似たタイトルが並び、受け手側が「それはもう知っています」と判断しやすい状況が生まれています。登壇者の言葉でも、ウェビナーは「飽きられてきている」状態として整理され、作り手側の発信が“伝えたいこと優先”になりやすい点が課題として提示されました。
端的に言うと、飽きられてきていますという話です。(大熊氏)
この問題意識の根底には、ウェビナーの役割が変化している点があります。コロナ禍では展示会の代替として「広く薄く知ってもらう」役割が強かった一方で、現在は「営業活動に近い要素」を求められやすくなっています。視聴者が欲しい情報が明確になり、必要なものだけを選ぶ時代に入ったため、運用側も“従来の型”をアップデートする必要があると共有されました。
キーメッセージと発言ハイライト
本セミナーの中心メッセージは、ウェビナーを「一斉配信型」から「顧客最適型」へ移行させる重要性です。視聴者が誰で、いま何を求めているかが分かれば、配信内容も、その後のアプローチも変えられます。登壇者は、テレビのようなパブリック視聴から、スマホのような個別最適化へと情報体験が変遷してきた流れを踏まえ、ウェビナーも同様の進化が起きると語られました。
将来的なウェビナーの第一歩は、一斉配信型ではなく顧客最適型へ変えていくことです。(大熊氏)
ここで鍵として登場した概念が「インテントデータ」です。インテントデータは、法人単位のWeb行動履歴などから、興味関心や検討意図を推定するデータとして説明されています。たとえば、特定企業のネットワークから人事管理システムの情報が頻繁に調べられていれば、その企業が人事システムを検討している可能性が高いと推測できます。過去の属性情報だけでは見えにくい「いまのニーズ」を捉え、営業やマーケティングの効率化につなげる発想です。
なお、関連用語も簡単に整理されました。DMPは「Data Management Platform」の略として、データを統合・管理し、活用につなげる基盤として知られています。ファーストパーティデータは自社が収集するデータであり、ウェビナー申し込み情報やアンケートなどが該当します。サードパーティデータは外部由来のデータであり、自社サイト外の行動傾向なども含めて把握できる点が特徴です。CDPは「Customer Data Platform」の略として、顧客データを統合して活用する基盤として語られる場面が多く、目的や設計によってDMPと使い分けられています。
本セミナーでは、こうしたデータとAIを組み合わせることで、「視聴者ごとに最適化された体験」が現実味を帯びてきた点が強調されました。視聴者が同じ配信を見ていても、部門や関心によって提示される情報が変わる世界観が語られ、AIアシスタントとの統合やパーソナライゼーションの進化が展望として提示されています。
ウェビナーは見ている人の属性や欲しい情報によって、受け取り方が変わるべきです。(大熊氏)
実践的な取り組みと事例
未来像だけではなく、現場で効果を出すための“足元の一歩”として紹介されたのが「温度感の見極め」です。ウェビナー施策では、申し込み時点で取得できる会社名、役職、当日聞きたいことなどの情報を起点にしつつ、そこへインテントデータを掛け合わせて視聴者理解を厚くしていきます。ここで重要になるのが、申し込み段階で「ホット」「ワーム」「コールド」の状態を把握する発想です。ホットは検討意欲が高い状態、ワームは関心が高まりつつある状態、コールドは情報収集段階の状態として整理され、アプローチの前提が変わります。
従来は「参加した」「視聴した」「アンケートに答えた」などの行動をトリガーに一律で電話をかける運用が多くなりがちでした。しかし、温度感を無視したアプローチは受け手の体験を損ね、結果としてアポイントにつながりにくくなります。そこで、視聴前の温度感、視聴後の満足度、資料ダウンロードなどの行動を組み合わせて、より細かな状態を見える化し、誰に何を届けるかをルール化していく方針が示されました。
ホット・ワーム・コールドを前提に、インサイドセールスがアプローチすべき温度感を把握することが大切です。(大熊氏)
この設計が進むと、マーケティングとインサイドセールスの連携にも効果が出ます。追うべきリードが明確になり、「本当に追うべきかどうか」が判断しやすくなるためです。さらに、マーケティング側は“ホットを集める回”と“コールドを育てる回”のように目的設計がしやすくなり、KPIの置き方も変わります。受け手側も自分の状況に合う提案が届きやすくなり、通電率や対話の質が上がりやすくなります。
実装イメージとしては、FanGrowthで取得したウェビナー参加者情報にインテントデータを突合し、スコアリングやレポート生成までを連携させる流れが共有されました。データはあっても使いこなせない、分析人材が足りないといった課題に対して、AIが分析や仕分けを支援し、実行につなげる仕組みが展望として語られています。ABM(特定企業群に狙いを定めるマーケティング施策として知られています)に近い発想で、優先順位を付け、チーム間で共通言語を持つ運用を目指す姿勢が見えました。
今後の展望とまとめ
本セミナーを通じて浮かび上がったのは、ウェビナーが「配信施策」から「顧客体験を設計する施策」へ移行している点です。視聴者のリテラシーが上がり、情報が溢れる環境では、発信側の都合で作られたウェビナーは選ばれにくくなります。反対に、視聴者の状況や関心に合わせて内容もアプローチも変えられるウェビナーは、営業パイプラインの中核に近づいていきます。
その実現の鍵として、インテントデータとAIの組み合わせが提示されました。まずは温度感の見極めから始め、ホット・ワーム・コールドの理解を前提に、コンテンツとフォローの最適化を進めていく流れです。将来的には、視聴者の状態に合わせて資料やチャットボットの応答が出し分けられ、ウェビナーが提案の入口として機能しやすくなります。
ウェビナー後のリードに対して、速攻電話以外の売り方も考えられるようになります。(簗島氏)
ウェビナー施策の成果に伸び悩んでいる場合は、企画や配信技術の改善だけではなく、視聴者理解の設計から見直すことが重要になります。申し込み情報に加えて、外部行動を含むシグナルを捉え、誰に何を届けるかを明確にすることが、次の成果につながります。ウェビナーが増え続ける時代だからこそ、データとAIを味方にしながら、顧客最適化へ一歩踏み出すことが求められています。

