【指標を作り直す】Human Loyaltyとは?ロイヤリティを測る新KPI設計
デジタルマーケティングの現場では、クリックや獲得件数など「短期で見える数値」に引っ張られがちです。
しかし、ブランドが中長期で伸びるときに効いているのは、人が“選び続ける理由”です。
本記事では、その理由を測るための考え方としてHuman Loyaltyを定義し、KPIの設計手順まで落とし込みます。
このページで得られること ✍️
- Human Loyaltyを「行動」と「関係性」の両面から言語化するフレーム
- 既存KPI(CV/ROASなど)と矛盾しない“二階建て”設計のコツ
- データ基盤が整っていなくても始められる、段階的な導入ステップ
- 施策に落ちるKPI例(リピート、紹介、信頼、対話など)
Human Loyaltyを構成する3つの柱 🧩
※「ロイヤル顧客だけを見る」指標ではありません。
“育ち方”を可視化し、チームで再現できる形にします。
施策が増え、チャネルが分散し、AIによって制作と運用のスピードが上がるほど、KPIは増えやすくなります。
KPIが増えること自体は悪くありませんが、「何を良しとするか」がチーム内で揃っていないと、現場は“測定”に追われ、意思決定は遅くなります。
そこで注目されるのが、短期成果の背後にある人の態度変容や関係性の積み上がりを扱う指標です。
Human Loyaltyは、ロイヤリティを「感覚」ではなく、観測できる行動の集合として扱い、KPIに落とす考え方です。
ポイント: Human Loyaltyは「売上の代替」ではありません。
売上・獲得と並行して、選ばれ続ける構造を育てるための補助線(KPI)です。
よくある現場の詰まりどころ 😵
- CVは取れているのに、翌月以降が伸びない
- 値引き施策が効くほど、通常期の反応が鈍る
- クリエイティブの当たり外れが大きく、学びが残らない
- チームが“数字合わせ”に寄り、ブランド毀損が怖い
Human Loyaltyで狙う状態 🌱
- 顧客が「このブランドで良い理由」を言語化できる
- 接点が増えるほど、体験が滑らかになる
- 良い顧客が、良い顧客を連れてくる
- 短期の施策でも、中長期の資産が積み上がる
概要
Human Loyaltyを「定義→分解→観測」に落とす
Human Loyaltyとは、顧客が自発的に関係を続ける力を、実務で扱えるように整理した概念です。
ロイヤリティという言葉は広く使われますが、現場でKPIに落ちない理由は、定義が抽象的なままになりやすい点にあります。
🧠 信頼
約束を守る/説明が分かりやすい/不安が減る。
“選ぶ理由”が育つ。
🔁 習慣
戻ってくる/迷わない/比較が減る。
“継続の摩擦”が下がる。
💬 推奨
人に勧める/共有する/語りたくなる。
“関係性”が外に広がる。
この3要素は、どれか一つだけを追っても安定しません。
例えば「推奨」が増えても、体験の一貫性が弱ければ一過性になりやすいですし、「習慣」があっても不信が増えれば離脱します。
そのため、Human Loyaltyは3要素を“バランスよく観測する設計”が肝になります。
🗒️ グラレコ風メモ:ロイヤリティをKPI化できない理由
「ファンを増やす」「愛される」だけだと、担当者ごとに解釈が割れます。
だから、行動に翻訳できる粒度(例:再訪、問い合わせ、紹介、レビュー、学習コンテンツ視聴、サポート自己解決など)まで落とし、改善できる単位にします。
利点
短期KPIと矛盾せず、判断の質を上げる
Human LoyaltyをKPIに組み込むと、単に「指標が増える」のではなく、意思決定の解像度が上がります。
短期の数字が揺れたときに、何が起きているかを説明しやすくなり、施策の当たり外れから学びを残しやすくなります。
「売れた/売れない」だけでなく、信頼・習慣・推奨のどこが動いたかを見て、改善の議論ができます。
同じCV低下でも、体験摩擦なのか、説明不足なのか、期待値ズレなのかを切り分けやすくなります。
コンテンツ、体験設計、サポート品質など“積み上がる要素”の指標が明確になり、場当たりを減らせます。
注意: Human Loyaltyは「数値が高いほど良い」と単純化しない方が運用しやすいです。
重要なのは、どの要素が、どの顧客層で、どのタイミングに動いたかを読み解ける設計にすることです。
短期KPIとの関係性 🧩
- 短期KPI(CV/CPAなど):結果としての“獲得”を示す
- Human Loyalty:獲得の前後にある“継続”と“関係”を示す
- 両方あることで、施策の意図が明確になり、打ち手が増える
経営・上長への説明が楽になる理由 🗣️
- 短期の上下を「体験・関係性」の言葉で補足できる
- 値引き依存やブランド毀損の兆候を早めに拾いやすい
- 投資(コンテンツ/UX/CS)を“施策”として語りやすい
応用方法
Human Loyaltyを「体験の流れ」と「KPIセット」で運用する
ここからは、Human Loyaltyを実務に落とし込むための方法を整理します。
コツは、指標を単品で置かず、体験の流れ(ジャーニー)に沿って配置することです。
考え方: 「計測できること」から決めるのではなく、顧客が前進するために必要な体験から逆算してKPIを置きます。
🧠 グラレコ風:Human Loyaltyの“体験マップ”
認知 → 理解 → 初回体験 → 継続利用 → 信頼の定着 → 推奨/共有
それぞれの段階で「詰まり」を見つけられるKPIを置くと、改善の筋道が見えます。
👀 理解
不安が減る/比較が減る。
説明の納得度が上がる。
✨ 初回体験
迷わない/失敗しない。
成功体験が作れる。
🔁 継続
戻る理由がある。
次の行動が自然に決まる。
信頼を測るKPI例 🧾
- 重要ページの「理解」行動(比較表、FAQ、料金説明、導入手順の閲覧)
- 問い合わせの質(質問の粒度が上がる/不安系が減る)
- サポートの一次解決(ガイド閲覧→自己解決)
- 初回体験の成功率(設定完了、初回成果、初回利用完了など)
習慣を測るKPI例 🗓️
- 再訪・再利用(一定期間内に戻る、自然検索や指名流入が増える等)
- 次のアクション到達(2回目購入、2回目予約、2回目の機能利用)
- 離脱の手前行動(ログインはするが使わない、閲覧はするが進まない等)
- オンボーディング完了(学習コンテンツ視聴、初期設定の完了など)
推奨を測るKPI例 💬
- 共有行動(記事共有、資料転送、チーム内展開の兆候)
- レビュー・コメントの発生(ポジティブに限らず“語られた回数”)
- 紹介の入口(紹介コード、紹介フォーム、同僚への案内など)
- コミュニティ参加(イベント参加、勉強会申込、質問投稿など)
“やりがち”を避ける工夫 🧯
- 「推奨」を数だけ追うと、短期の煽りが増えやすい → 信頼とセットで観測
- 「再訪」だけ追うと、惰性の利用が混ざる → 目的行動(次アクション)とセット
- 「FAQ閲覧」を成功とみなすと、混乱が増えた可能性も → 離脱率などとセット
導入方法
現場で回るKPI設計へ:定義→計測→運用の手順
KPI設計は「正しい指標名を決めること」よりも、運用できる粒度に落とすことが重要です。
ここでは、Human Loyaltyを導入するためのステップを、マーケティングチーム向けに整理します。
-
Human Loyaltyの“対象”を決める
まず、どの顧客群・どのプロダクト・どのフェーズでHuman Loyaltyを高めたいかを決めます。
例:新規獲得後の継続/指名流入の質/アップセル前の信頼形成など。
対象が曖昧だと、指標は増えやすく、解釈が割れやすくなります。 -
3要素(信頼・習慣・推奨)を“行動”に翻訳する
「信頼がある」を、観測できる行動へ落とします。
例:比較表閲覧/導入手順の完了/問い合わせ内容の具体化/サポート自己解決など。
抽象語のまま指標名にしないのがポイントです。 -
KPIを“二階建て”で設計する
一階:短期KPI(獲得・売上など)/二階:Human Loyalty(信頼・習慣・推奨)。
二階の改善が、一階の成果へどう効くかを、仮説として言語化します。
これにより「なぜその施策をやるのか」が説明しやすくなります。 -
スモールに計測して“運用の型”を作る
いきなり完璧な計測を目指すより、まずは週次で見られるKPIセットを作ります。
例:信頼(重要ページの理解行動)/習慣(再訪+次行動)/推奨(共有行動)。
運用が回り始めると、必要な追加計測が自然に見えてきます。 -
“意思決定の会議”に組み込む
KPIはダッシュボードに置くだけでは定着しません。
週次・月次のレビューで、「3要素のどこが動いたか」「原因仮説」「次の打ち手」を必ず話す型にします。
KPIは“見る”より“使う”ことで価値が出ます。
導入時の落とし穴: 指標を“評価”に直結させすぎると、防衛的な運用になりやすいです。
初期は、学習のためのKPIとして扱い、改善の質が上がってきた段階で、評価への組み込みを検討する方が進めやすいです。
最初に持つと良い“KPIセット”例 🎒
- 信頼:重要な説明コンテンツの到達・理解行動(比較/FAQ/導入手順)
- 習慣:再訪+次アクション到達(2回目の利用、機能の継続利用など)
- 推奨:共有・レビュー・紹介の入口到達(“語られた”兆候)
- 補助:体験摩擦の兆候(途中離脱、迷いポイント、サポート負荷など)
データが揃っていない場合の始め方 🧱
- まずは「重要ページ」「重要導線」を限定し、観測点を絞る
- ログで取れないものは、フォーム項目やサポート分類で代替する
- 週次で“変化”が見える指標を優先し、後から精緻化する
- 定義と命名ルールを残し、属人化を避ける
未来展望
AI時代のロイヤリティは「関係の運用」へ
今後、制作や運用の自動化が進むほど、差がつきやすいのは“何を作るか”よりも、どんな関係性を育てるかです。
Human Loyaltyは、その関係性を「学習できる形」にするための考え方として機能します。
🔭 これから起きやすい変化(マーケの現場目線)
- コンテンツが増えるほど、顧客は“読む前に迷う” → 説明の設計が価値になる
- 広告運用が高度化するほど、体験の一貫性が重要 → 信頼KPIの比重が上がる
- 顧客の比較コストが下がるほど、継続理由が問われる → 習慣KPIが効く
- 共有・推薦が起きる条件が多様化 → 推奨KPIは“質”を見たくなる
示唆: 未来のKPIは「成果の記録」だけでなく、関係性を育てる運用の羅針盤としての役割が強くなります。
Human Loyaltyは、その羅針盤をチームで共有するための枠組みです。
Human Loyaltyが伸びる組織の特徴 🏢
- 顧客の“つまずき”を、部門横断で扱える
- 短期成果と中長期資産を、指標で両立している
- 改善の学びが、ドキュメントとして蓄積されている
- 「説明の質」を、個人芸ではなく仕組みで上げている
Human Loyaltyが伸びにくいサイン ⚠️
- 指標が多いのに、会議で使われていない
- 施策が“当てるゲーム”になり、学びが残らない
- 値引きや煽りが増え、信頼の議論が減る
- CS/プロダクト/マーケが別々のKPIで走っている
まとめ
Human Loyaltyは「選ばれ続ける理由」を測る実務フレーム
Human Loyaltyは、ロイヤリティを“気持ち”として扱うのではなく、観測できる行動として扱うための考え方です。
「信頼・習慣・推奨」を軸に、体験の流れへKPIを配置し、短期KPIと並走させることで、施策の意図が明確になり、判断の質が上がります。
FAQ
導入前によく出る疑問を整理
Human Loyaltyは、従来のロイヤリティ指標(LTVなど)と何が違いますか?
Human Loyaltyは、信頼・習慣・推奨を行動の粒度で分解し、施策の改善点を見つけやすくする点が特徴です。
どちらか一方ではなく、結果指標と改善指標を併用する設計が現実的です。
指標が増えて、逆に運用が大変になりませんか?
重要なのは、ダッシュボードを豪華にすることではなく、会議で“判断に使う”ことです。
使われない指標は、勇気を持って減らす方が成果につながりやすいです。
「推奨(紹介・共有)」は業種によって起きにくいのでは?
その場合は、共有や紹介だけでなく、社内展開・資料転送・相談の発生など「語られた兆候」に寄せた観測が有効です。
推奨は“派手な紹介”だけではありません。
データ基盤が整っていない場合、何から始めるべきですか?
例:主要な説明コンテンツの閲覧、導入手順の完了、再訪+次行動の到達、共有の入口到達。
その上で、定義と命名ルールを残し、運用しながら精緻化していくと、無理が出にくくなります。
Human Loyaltyを評価制度に入れるのはアリですか?
いきなり評価に直結させると、防衛的な運用になり、学習が止まることがあります。
まずは改善のためのKPIとして定着させ、運用が安定してから、評価への反映範囲や扱い方を検討するのが進めやすいです。
短期の成果が落ちたとき、Human Loyaltyはどう役立ちますか?
例えば、信頼(理解行動)が落ちているなら説明や期待値のズレ、習慣(再訪+次行動)が落ちているなら体験摩擦や導線の問題、推奨が落ちているなら語る理由や体験の一貫性など、改善の当たりを付けやすくなります。

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