そのデータ課題、どう解く?リアル×デジタルを横断したデータ分析の始め方と基本ステップ
ECやアプリなどのデジタルデータは整備が進む一方で、店舗・イベント・営業活動などの“リアル側”のデータは分散しやすく、分析が止まりがちです。
しかし、顧客体験はオンラインとオフラインを行き来するため、どちらか片方だけ見ても課題の全体像がつかみにくい場面があります。
本記事では、マーケ担当者が「まず何から始めるべきか」を判断できるように、リアル×デジタル横断分析の基本ステップを、実務に落とし込んで解説します。
イントロダクション
「オンラインの数字は追えるのに、店舗や営業の影響が見えない」
「現場の感覚とレポートの数字が噛み合わない」
こうした悩みは、リアル×デジタルを横断して見ることで、整理が進むことがあります。
横断分析は難しそうに見えますが、最初から完璧につなぐ必要はありません。
大切なのは、「今の課題を解くために、最低限どのデータを揃えるか」を決め、段階的に育てることです。
リアル側のデータは、店舗POS、来店予約、会員カード、イベント参加、営業案件、コールセンターなど、形がさまざまです。
デジタル側も、サイト、アプリ、広告、メール、SNSなどに分かれます。
これらを一気に統合しようとすると、関係者調整だけで疲れてしまい、分析が止まることがあります。
だからこそ、マーケ担当者は「分析のゴール」を先に定義し、必要な範囲でデータをつなぐのが現実的です。
本記事では、最初に決めるべき問いと、基本ステップ、現場で使える進め方をまとめます。
横断分析は、データを集める前に「何を知りたいか」を具体化すると進みます。
例えば、来店が増えない理由、問い合わせ後に商談化しない理由、リピートが伸びない理由などです。
問いが定まるほど、必要なデータが絞れます。
- リアル×デジタル横断分析の考え方を理解する
- 最初に揃えるべきデータと基本ステップがわかる
- 関係者調整・運用の詰まりどころを回避できる
概要
横断分析の本質は「データの統合」ではなく、「顧客の行動を一続きで捉える」ことです。
そのために必要な概念と、最初の設計を整理します。
横断分析を進める上で押さえたいのは、次の3つです。
行動の流れ、接点(タッチポイント)、識別の考え方です。
🧵 行動の流れを“工程”として書く
- 認知:広告、SNS、口コミ、イベント告知
- 興味:サイト閲覧、資料閲覧、比較検討
- 行動:来店予約、問い合わせ、購入
- 体験:店舗接客、配送、利用開始
- 継続:再購入、紹介、アップセル
🧩 接点を“データ化の単位”で見る
- オンライン:閲覧、クリック、フォーム
- オフライン:来店、購入、面談、電話
- 運用:受付、接客、営業、サポート
- 成果:成約、継続、解約、満足
- 補助:アンケート、NPS、クレーム
そして最後に難しく感じやすいのが「誰の行動か」をどこまで追うかです。
ここで大切なのは、“完璧な個人特定”ではなく、分析目的に必要な単位で把握するという発想です。
利点
リアル×デジタルを横断して見ると、部分最適になりがちな施策のズレが見えやすくなります。
ここでは、マーケ担当者にとって実感しやすい利点を整理します。
- オンライン施策が店舗・営業にどう影響したかを説明しやすい
- 来店や商談の“手前”の詰まりどころが見つけやすい
- 現場の感覚と数字のズレを、データで対話しやすい
- チャネル別ではなく、顧客体験の流れで改善を設計できる
- 販促と接客・営業の連携が取りやすくなる
- レポートが「結果報告」から「改善の材料」になりやすい
横断分析の価値は、「オンラインの良し悪し」ではなく、「顧客の流れがどこで止まるか」を特定できる点にあります。
施策の議論がチャネル別の言い合いになりにくく、改善の焦点が合わせやすくなります。
オンライン上のCVが増えても、店舗側の受け入れ体制や予約枠、接客の導線で失速することがあります。
逆に店舗の体験が良いのに、オンライン側で期待値が伝わらず離脱するケースもあります。
横断で見ると、こうした“つなぎ目”が見つかりやすいです。
応用方法
横断分析は、用途を決めると必要データが絞れます。
ここでは、マーケ担当者が取り組みやすい応用パターンを、リアル×デジタルの接続点として紹介します。
応用のポイントは、「リアルの成果(来店・購入・商談)」を起点に、手前の接点をたどることです。
逆向きにたどると、必要なログや属性の優先順位が決めやすくなります。
🏁 成果を決める
来店、購入、商談化、継続など、改善したい出口を定義。
🧭 手前を分解
予約→問い合わせ→閲覧…と工程を分け、詰まりを探す。
🧺 データを絞る
工程に必要なデータだけを選び、つなぎ目を作る。
🔧 改善に戻す
施策だけでなく、現場運用も含めて手を打つ。
🏬 パターン:来店が増えない
- 予約フォームは使いやすいか
- 店舗ページで必要情報が揃っているか
- 広告・SNSの訴求と店舗体験が一致しているか
- 予約枠や人員の制約で取りこぼしていないか
- 来店後の次アクションが設計されているか
🧾 見たいデータ例(最小構成)
- 店舗ページ閲覧→予約完了の流れ
- 予約日時・店舗・メニューの情報
- 来店実績(来店/キャンセル)
- 現場の受け入れ条件(枠・休業など)
- 問い合わせ内容(不安の種類)
📞 パターン:問い合わせはあるが商談化しない
- 問い合わせ時点で前提が揃っているか
- 営業への引き継ぎが遅れていないか
- 見込み度合いの分類ができているか
- 資料や提案の出し分けができているか
- 初回対応の品質が揃っているか
🧾 見たいデータ例(最小構成)
- 流入元のテーマ(どんな課題で来たか)
- 閲覧コンテンツ(意思決定段階の推定)
- 問い合わせ種別・自由記述
- 初回対応の時間・結果(商談化/保留)
- 商談化しなかった理由(分類)
- 🎯 何を増やしたい?(来店/商談/継続など)
- 🧭 どの工程で止まる?(予約/初回対応など)
- 🧩 止まる理由の仮説は?(情報不足/運用制約など)
- 🧺 その仮説を確かめるデータは何?(最小で)
- 🔧 改善は施策?運用?両方?(担当と期限)
導入方法
横断分析を現場で始めるときは、データ統合より先に「進め方の設計」が必要です。
ここでは、マーケ担当者が主導しやすい基本ステップを、運用前提で解説します。
導入をスムーズにするために、次の順序がおすすめです。
いきなりデータ基盤やツール選定に入るより、先に“問い”と“最小データ”を決めるとブレが減ります。
🧩 問いを決める
改善したい出口と工程を明確にし、対象範囲を絞る。
🧺 最小データを定義
工程を検証できる最小限の項目・粒度・更新頻度を決める。
🔗 つなぎ目を作る
共通キーを決め、つながらない部分は“集計単位”で補う。
✅ 判断の場を作る
定例で見る指標と改善アクションを決め、運用に乗せる。
🧺 最小データを決めるコツ
- 項目は“問い”に必要なものだけにする
- 粒度は粗くてもよい(店舗×週 など)
- 更新頻度を決める(毎日/毎週/毎月)
- 欠損や遅延が起きる前提で扱いを決める
- 定義(用語・計算)を短く文書化する
🔗 つなぎ目の考え方(現実的な落としどころ)
- 会員IDや予約IDがあれば活用する
- ない場合は、店舗・日時・商品などで集計する
- オンラインのテーマ別流入と、店舗別成果を並べる
- 完全一致にこだわりすぎない
- 説明可能な範囲で扱う
- 🎯 改善したい出口:来店 / 商談 / 継続 など
- 🧭 見る工程:予約 / 初回対応 / 接客 など
- 🧺 必要データ(最小):項目・粒度・更新頻度
- 🔗 つなぎ方:共通キー or 集計単位(店舗×週 など)
- ✅ 判断の場:定例会、担当、次アクションの決め方
- 🔁 改善の記録:学びと次回の検証内容
横断分析は、データの話に見えて、実は「現場運用の話」でもあります。
予約枠、接客導線、営業の初回対応など、運用制約が数字に影響するためです。
分析結果を改善につなげるには、マーケと現場が同じ“問い”で会話できる設計が重要です。
未来展望
今後は、チャネルごとの最適化より、顧客体験全体を前提にした改善が求められやすくなります。
横断分析は、そのための共通言語として価値が高まります。
リアルとデジタルの接点が増えるほど、施策の成果は単一チャネルの数字だけでは説明しにくくなります。
その一方で、現場の運用データ(来店、接客、営業対応、在庫、予約枠など)を扱える企業は、改善の打ち手が増えます。
🧠 価値が残りやすい整備
- 用語・指標の定義(共通言語)
- 工程(顧客の流れ)の可視化
- 最小データの運用(更新頻度・欠損対応)
- 判断の場(定例・担当・意思決定)
- 改善の記録(学びの蓄積)
🧩 変化に合わせた発展方向
- 店舗体験とオンライン訴求の整合性を高める
- テーマ別流入と現場成果を結び付ける
- 現場制約を含めた施策設計にする
- 顧客理解の単位を柔軟にする(個人/店舗/案件)
- 改善サイクルを短く回す
“小さく始めて育てる”運用を続けるほど、現場の改善余地が見えやすくなります。
まとめ
リアル×デジタルを横断した分析は、難しい統合より先に「問い」と「最小データ」を決めると進みます。
顧客の流れを工程で捉え、詰まりどころを見つけ、改善に戻すのが基本です。
横断分析は、データを集めることが目的ではありません。
顧客の流れがどこで止まるかを見つけ、施策と運用の両面で改善することが目的です。
まずは、改善したい出口を決め、工程を書き出し、最小データで検証できる形を作ってください。
- 改善したい出口(来店/商談/継続)を1つ決める
- 出口までの工程を、短い箇条書きで分解する
- 工程ごとに必要な最小データを決める
- つなぎ方(共通キー or 集計単位)を決める
- 定例で見る場を作り、改善に戻す
FAQ
最後に、リアル×デジタル横断分析でよく出る疑問に回答します。
困ったら「問いの絞り込み」と「最小データ」に戻ると整理しやすいです。
Qリアル側のデータがバラバラでも始められますか?
例えば、店舗別の来店数と、オンラインのテーマ別流入を同じ期間で並べるだけでも、仮説の当たりを付けやすくなります。
小さく始めて、効果が出たら徐々に項目や範囲を広げると運用に乗りやすいです。
Qオンラインとオフラインを同一人物としてつなげないと意味がないですか?
大切なのは、説明可能な単位で関係性を見て、改善につなげることです。
個人単位が必要な場面は、目的がはっきりしてから検討すると安全です。
Qまず誰を巻き込むと進みやすいですか?
ただし人数を増やしすぎると止まりやすいので、最初は小さなチームで“問い”と“最小データ”を決め、途中で共有範囲を広げると進みやすいです。
Qレポートはどの頻度で更新するのがよいですか?
最初は細かくしすぎず、現場が確認できる頻度にして、運用が回る形を優先すると続けやすいです。
Q横断分析でよくある失敗は何ですか?
「出口を1つ」「工程を分解」「最小データで検証」という順序を守ると、失敗しにくくなります。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。

