生成AI×GASで仕事を自動化する方法|ビジネスで使えるAIエージェントの作り方【完全ガイド】
「毎月のレポート作成に追われている」「メールの下書きに時間を取られている」「同じようなデータ整理を何度もしている」。 デジタルマーケティングの現場では、こうしたルーティン業務が少しずつ積み重なり、戦略に使える時間を圧迫しがちです。
本記事では、生成AIとGoogle Apps Script(GAS)を組み合わせて、ビジネスで使える「AIエージェント」を作る方法を、 マーケティング担当者の視点から、実務ベースで解説します。
🚀 手作業だらけのマーケティング業務に、AIエージェントという「同僚」を増やす
生成AIの登場で、テキスト生成や要約、翻訳といった仕事は一気に効率化しやすくなりました。 ただし、「ブラウザでAIチャットに聞いてコピペする」だけだと、結局人が手を動かす前提は変わりません。
一方、GASはスプレッドシートやGmail、カレンダーなど、Google Workspaceを中心とした業務を自動化するためのスクリプト環境です。 これに生成AIを組み合わせることで、 「データ取得〜判断〜文章生成〜通知」までを一連でこなすAIエージェントを作ることができます。
「生成AIは便利そうだけど、日々の業務フローにどう組み込めばよいか分からない」
「GASも触ったことはあるが、AIとの組み合わせ方のイメージが湧かない」
本記事は、こうした悩みを持つマーケティング担当者を想定して構成しています。
読み終えるころには、次のようなイメージができている状態を目指します。
- 生成AI×GASで「どんな仕事」を自動化しやすいかが分かる
- 自社の業務に合ったAIエージェントの構成案をイメージできる
- エンジニアと会話しながら、実装を前に進められるだけの具体的な材料を用意できる
📚 生成AI×GAS×AIエージェントの基本構造を整理する
まずは、「AIエージェント」が何を指すのか、「生成AI」と「GAS」がどのように役割分担するのかを整理します。
AIエージェントとは何か?
本記事では、AIエージェントを次のように定義します。
- 特定の目的(例:レポート作成、メール返信、データ整理など)のために
- 事前に決められたルールと、生成AIによる柔軟な判断を組み合わせ
- 自律的に「情報を集める → 解釈する → アクションを実行する」しくみ
人が毎回判断する部分をすべて置き換えるのではなく、「ルール化できるところはGASに、揺らぎのある判断は生成AIに」という分担で考えるとイメージしやすくなります。
- 文章の作成・要約・言い換え
- ラフな指示から構成案やアイデアをつくる
- 一定のルールを踏まえたラベリング・分類
- 自然文を読み取って、「何を求めているか」を把握する
- スプレッドシートやGmail、カレンダーなどの操作
- APIを使った外部サービスとの連携
- 時間ベース・イベントベースでの自動実行
- ログ管理や例外処理などの安定した運用
左に「GAS(ルール&実行)」、右に「生成AI(理解&文章)」の2つの箱を描き、
その上に「AIエージェント」という雲のアイコンを配置。
真ん中に「↔」の矢印を描いて「データ」と「指示」が行き来する様子を手書き風に表現すると、役割分担が直感的に伝わります。
✅ なぜ「生成AI×GAS」で自動化するのか?マーケター視点のメリット
次に、生成AIとGASを組み合わせるからこそ得られる特徴を、マーケティング担当者の目線で整理します。
作業時間の削減と「考える時間」の確保
- レポート作成、メールの下書き、ログ整理など、繰り返しの多い作業をエージェントに任せられる
- 空いた時間を、施策の検討やクリエイティブの企画など「人が向いている仕事」に使いやすくなる
- 担当者が変わっても、エージェントがフローの一部を担うことで品質を保ちやすい
属人化したノウハウの「半自動マニュアル化」
- 「このパターンのクレームにはこのように返信する」「この指標が悪化したらこう分析する」といった暗黙知をプロンプトに落とし込める
- GASのスクリプトやテンプレートにノウハウを埋め込むことで、新メンバーも同じフローを使いやすくなる
- ログとセットで残しておくことで、後からチューニング・改善しやすい
ツール連携を前提にした柔軟なワークフロー
- スプレッドシート、Google ドキュメント、Gmail、Chat、カレンダーなどを一つのフローでつなげられる
- レポート生成 → 社内チャットに要約を投稿 → 誰かが確認ボタンを押したら顧客向けメールを送信、のような「人とAIの協働フロー」を設計しやすい
- 既存のマーケティングツールのAPIとも組み合わせやすく、段階的な自動化がしやすい
🧭 マーケティング業務での具体的な応用シナリオ
ここからは、「どの業務でどのように使えるか」を、シナリオ別に整理します。 いずれも、最初は一部だけを自動化し、少しずつ範囲を広げるイメージで考えると進めやすくなります。
レポート作成エージェント:数値から「意味のある一言」を添えてくれる同僚
Google スプレッドシートに蓄積した広告データやWeb解析データをもとに、GASがレポートのひな形を作り、 生成AIがコメントやサマリーを生成するパターンです。
- 日次・週次でスプレッドシートの数値を取得し、前期間との差分をGASが計算
- 「特に変化している指標」と「想定される要因候補」を生成AIに文章化させる
- 結果をGoogle ドキュメントやGoogle Chatに投稿し、人が最終確認してから顧客へ共有
メール・問い合わせ対応エージェント:ドラフト作成を任せる
顧客からの問い合わせ内容をGmail/フォームで受け取り、GASが生成AIに渡して返信案を作成するパターンです。
- 問い合わせ内容をGASで取得し、生成AIに「丁寧で簡潔な返信文」を生成させる
- 過去のFAQや社内ドキュメントの要点をあわせて取り込み、エージェントに参照させる
- 担当者が下書きを確認し、必要があれば編集して送信(完全自動ではなく、人のチェックを挟む運用)
キャンペーンアイデア・クリエイティブブリーフ生成エージェント
マーケティング担当者がスプレッドシートに「商品情報」「ターゲット」「訴求軸のメモ」などを入力し、 生成AI×GASでクリエイティブブリーフやアイデア案を起こすパターンです。
- GASがシートから条件を読み取り、生成AIに「LP構成案」「広告見出し案」「メルマガ構成案」を生成させる
- アウトプットを別シートやドキュメントに整形,タグやコメント欄を用意してチームでフィードバック
- 反応の良かった案・悪かった案を蓄積し、次回のプロンプト改善に活かす
インサイト抽出エージェント:定性データを整理する
アンケートの自由回答や、営業メモ、カスタマーサポートのログなど、テキストデータを整理するエージェントです。
- GASでスプレッドシートのテキストをまとめて取得
- 生成AIで「カテゴリー分け」「キーフレーズ抽出」「要約」を実施
- 結果をレポート用シートに書き出し、グラフ化しやすい形に整形
🧱 導入方法:生成AI×GASでAIエージェントを作るステップ
ここからは、実際にAIエージェントを作る流れを、マーケティング担当者とエンジニアが協力する前提で整理します。
ステップA:自動化する「ユースケース」と「境界線」を決める
まずは、次のような観点でユースケースを絞り込みます。
- 毎週・毎月、ほぼ同じフローで行っている業務はどれか
- 事務的な作業と、判断・コミュニケーションが混在している業務はどれか
- 「最初のたたき台だけ自動化できると助かる」作業はどれか
そのうえで、「AIエージェントに任せる範囲」と「必ず人がチェックする範囲」を最初に決めておくと運用が安定します。
ステップB:フローチャートとプロンプトを紙に描き出す
いきなりコードを書くのではなく、手書きでもよいのでフローチャートとプロンプト案を可視化します。
- 「いつ起動するか」(時間トリガー、フォーム送信トリガーなど)
- 「どのデータを取得するか」(どのシートのどの列など)
- 「生成AIに何をお願いするか」(どのような口調、どのような出力形式など)
- 「結果をどこに書き込むか/送るか」(シート、ドキュメント、Gmail、Chatなど)
ステップC:GASから生成AI APIを呼び出す基本コードを作る
技術的な実装はエンジニアと協力する前提ですが、イメージしやすいように、簡略化したコードイメージを示します。
// 例:GASから生成AI APIを呼び出すイメージコード
function callAiApi(promptText) {
const apiKey = PropertiesService.getScriptProperties().getProperty('AI_API_KEY');
const url = 'https://api.example.com/v1/chat/completions
'; // 実際のエンドポイントを設定
const payload = {
model: 'example-model',
messages: [
{ role: 'system', content: 'あなたはマーケティング担当者の業務アシスタントです。' },
{ role: 'user', content: promptText }
]
};
const options = {
method: 'post',
contentType: 'application/json',
headers: { Authorization: 'Bearer ' + apiKey },
payload: JSON.stringify(payload),
muteHttpExceptions: true
};
const response = UrlFetchApp.fetch(url, options);
const data = JSON.parse(response.getContentText());
const content = data.choices[0].message.content;
return content;
}
実際には利用するAPIの仕様に沿ってパラメータを調整する必要がありますが、 「GASでプロンプトテキストを組み立て → APIで結果を受け取り → シートやメールに書き戻す」 という流れが基本形になります。
ステップD:ログ・エラー処理・権限まわりを整える
業務で活用する以上、動けばよいだけではなく「どのように動いたか」を後から確認できる状態が重要です。
- 生成AIに渡したプロンプトの要点と、返ってきた要約を簡易ログとして残す
- エラー時には管理者にメール通知し、異常終了した箇所が分かるようにする
- GASの実行権限やAPIキーの管理方法を決めておく(スクリプトプロパティなどの利用)
ステップE:小さい単位で運用テストを行い、徐々に自動化範囲を広げる
最初から全面自動化を目指すのではなく、次のような段階的な進め方が現実的です。
- まずは「試験運用用シート」に出力し、数週間分を人がレビューする
- 問題なければ、本番用ドキュメントやメール下書きへの出力に切り替える
- 一定期間運用し、プロンプトやしきい値、通知先などを調整する
🔮 これからの「AIエージェント×マーケティング業務」の姿
生成AI×GASの組み合わせは、現時点でも十分な可能性がありますが、今後さらに発展する余地があります。
複数エージェントの連携とワークフロー化
- 「レポート作成エージェント」「メール作成エージェント」「インサイト抽出エージェント」などを分けて設計し、それぞれをGASでつなぐ
- あるエージェントの結果を別のエージェントの入力として利用するなど、ゆるやかな連携が想定される
- ワークフロー管理ツールと組み合わせることで、より柔軟な自動化シナリオも描きやすくなる
マーケターのスキルセットの変化
- プロンプトの書き方だけでなく、「業務プロセスを分解し、どこをAIに任せるか設計できる力」の重要性が高まる
- エンジニアとのコミュニケーションで、「仕様書」ではなく「フロー図+プロンプト+サンプルデータ」で要件を共有するスタイルが増える
- AIエージェントを「育てる」感覚で改善していくことが、マーケティングの一部として定着していく
AIガバナンスと透明性の確保
- どの業務にAIを使っているか、ユーザーや社内に対して説明できる状態を保つことが重要になる
- 生成された文章や判断の根拠を、簡易ログやコメントとして残しておく工夫が求められる
- 誤った出力があった場合の修正フローや、再発防止の方法をチームで共有しておくことが安心感につながる
AIエージェントは、「人の仕事を奪う存在」というよりも、「作業を下支えする同僚」として設計すると、チームにとって受け入れやすくなります。
そのためにも、小さく試して、対話しながら調整していくプロセスが大切です。
🧾 まとめ:生成AI×GASでAIエージェントを育てるためのチェックリスト
最後に、本記事の内容をチェックリストとして振り返ります。自社で取り組む際の確認用として活用してみてください。
- 「毎回似た作業をしている業務」「たたき台だけでも自動化したい業務」を洗い出したか
- AIエージェントに任せる範囲と、人が最終判断する範囲を明確にしたか
- フローチャートとプロンプトの叩き台を紙やドキュメントで可視化したか
- GASから生成AIを呼び出すための基本コードと設定方法を把握したか
- ログやエラー処理、権限管理など、運用面のルールを検討したか
- 小さなユースケースから試験運用を行い、改善サイクルを回す前提をチームで合意したか
AIエージェントは、一度作って終わりではなく、使いながら少しずつ改良していく「長期のプロジェクト」に近い存在です。 本記事の内容を起点に、ぜひ自社ならではの生成AI×GAS活用の形を探ってみてください。
❓ FAQ:生成AI×GASとAIエージェントに関するよくある質問
マーケティング担当者としては、
「自動化したい業務のフロー」「AIに期待するアウトプットのイメージ」「プロンプトの叩き台」を用意することが、大きな貢献になります。
これらを明確にしておくだけでも、実装のスピードと精度が大きく変わります。
「AIがたたき台を作成 → 担当者が確認してから送信・公開」という形から始めると安心です。
重要度の高い業務ほど、人のチェックを間に挟むフローを設計するとよいでしょう。
たとえば、社内向けの週次レポートのドラフト作成や、社内共有用の分析メモの生成などが取り組みやすい例です。
まずは、「レポートのCSVエクスポート → スプレッドシートで集計 → 生成AIで要約」というように、
既存のフローの一部から連携していくのが現実的です。
あわせて、
・人のチェックを必ず挟むこと
・ログを残し、問題があればすぐ止められること
などをセットで説明すると、安心感を持ってもらいやすいでしょう。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。

