SNS時代に効くメルマガ戦略
SNS時代でも成果を出すメールマーケティングの本質とは。AIとデータ活用でファン化を実現する実践論を解説します。
登壇者紹介
本セミナーには、株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長の簗島亮次氏と、ユミルリンク株式会社の福島竜司氏が登壇しました。簗島氏は、データマネジメントプラットフォーム(DMP:複数のデータを統合し顧客理解やマーケティングに活用する基盤)の領域で長年事業を推進し、データとAIを活用したマーケティング支援を行っている専門家です。一方、福島氏はメールマーケティングを中心にリード獲得やコンテンツ発信を実践しており、現場での運用知見に基づいた具体的な施策提案に強みを持っています。両者はそれぞれ異なる領域から、現代マーケティングの本質に迫る議論を展開しました。
セミナーの背景と問題意識
本セミナーでは、「SNS時代こそメルマガがファン化の鍵になる」というテーマのもと、現代のメールマーケティングの再評価が行われました。参加者の多くは、一斉配信のみの運用にとどまっている、あるいは未実施という状況にあり、約6割が高度な活用に至っていないという実態が共有されています。
さらに、その背景にはノウハウ不足やリソース不足、コンテンツ不足といった課題が存在しています。マーケティングオートメーション(MA)ツールを導入していても使いこなせていない企業も多く、結果として「とりあえず一斉配信」という状況に陥っているケースが目立ちます。
また、AI活用についても試行錯誤の段階にある企業が多く、導入したものの運用に乗らず中止したケースも少なくありません。このように、ツールや技術は存在する一方で、それを活かしきれない構造的な問題が浮き彫りとなっています。
キーメッセージと発言ハイライト
本セミナーで強調された重要なポイントは、「SNSとメルマガは役割が異なる」という点です。
メルマガは企業からの情報を受け取る場として信頼されているメディアです。(福島氏)
SNSはアルゴリズムによって情報が表示されるため、広くリーチできる一方で、必ずしも信頼性が担保されるわけではありません。それに対しメルマガは、ユーザーが受信を許可した状態で届くため、すでに一定の関係性が構築されているチャネルです。
さらに、AI時代におけるメルマガの価値についても言及がありました。
メールはAIが参照しにくい、端末側に蓄積される情報です。(簗島氏)
生成AIは主に公開情報をもとに回答を生成しますが、メールボックス内の情報は対象外となるケースが多く、企業が独自に届ける情報としての価値が高まっています。これはファーストパーティデータ(自社が直接取得する顧客データ)の重要性とも密接に関係しています。
つまり、メルマガは「直接届けられる」「信頼されやすい」「AIに代替されにくい」という3つの特性を持ち、今後も重要なマーケティングチャネルであり続けるといえます。
実践的な取り組みと事例
では、実際にどのようにメルマガを活用すればよいのでしょうか。鍵となるのは「脱・一斉配信」です。
福島氏は、セグメント配信の重要性を具体例とともに紹介しました。例えば、誕生日が近いユーザーに対してパーソナライズされたメールを送ることで、購買意欲を高める施策が有効とされています。
また、BtoB領域においても、スコアリング(顧客の興味関心や購買確度を数値化する仕組み)を活用し、関心度の高いユーザーに絞ってメールを配信することで、成果が向上するケースが多く見られます。
一方で、こうした施策が進まない理由として、簗島氏は「プロセスの最適化不足」を指摘しています。
生成AIで作成は効率化されても、確認プロセスがボトルネックになるケースが多いです。(簗島氏)
多くの企業では、メール文面の生成はAIで効率化されているものの、最終確認を人が担うことで作業全体のスピードが上がらないという課題があります。そのため、単なるタスクの効率化ではなく、確認や承認のプロセスまで含めた設計が重要となります。
さらに、データ活用の観点では、サードパーティデータ(外部から取得する行動データなど)を組み合わせることで、顧客理解を深める取り組みも紹介されました。これにより、ユーザーごとに異なるコミュニケーション設計が可能となり、コンバージョン率の向上につながります。
今後の展望とまとめ
本セミナーを通じて明らかになったのは、メールマーケティングは決して過去の手法ではなく、むしろ現代において再評価されるべきチャネルであるという点です。
SNSやAIが進化する中で、情報の洪水はさらに加速しています。その中で、ユーザーに直接届き、信頼されやすいメルマガの価値はむしろ高まっています。
今後重要になるのは、単なる配信ではなく「誰に、どのタイミングで、どの内容を届けるか」という設計です。そのためには、ファーストパーティデータやサードパーティデータを組み合わせた顧客理解と、AIを活用した効率的な運用が不可欠です。
また、AI導入においては、単なる自動化ではなく、プロセス全体の最適化が求められます。生成から配信、検証までを一貫して設計することで、初めて成果につながる運用が実現されます。
メルマガは「古い施策」ではなく、「進化する基盤」です。SNSやAIと組み合わせることで、その価値はさらに高まり、企業と顧客の関係性を深める重要な役割を果たしていくでしょう。

