2025年版カオスマップ解説:消えた企業、生まれたカテゴリ
毎年アップデートされる「マーケティング/アドテクのカオスマップ」。 2025年版は、生成AIやデータ基盤の進化により、ロゴが増えただけでは見えない「構造変化」が色濃く表れた年と言えます。
本記事では、マーケティング担当者の視点から、2025年版カオスマップを「消えた企業」と「生まれたカテゴリ」という切り口で読み解き、 ベンダー選定や自社のツール戦略にどう活かせるのかを整理します。
💬 カオスマップは「ロゴ集」ではなく、業界の断面図
カオスマップは、ある領域に存在する企業・ツール・サービスをカテゴリごとに一覧化した「業界地図」です。 マーケティング分野では、広告運用・オウンドメディア・データ基盤・セールスツールなど、多数のサービスを俯瞰するために活用されています。
しかし、ロゴがぎっしり並ぶ図だけを眺めていると、
- 結局どれも同じに見えてしまう
- どのカテゴリから検討すべきか分からない
- 前年との変化がつかみにくい
という状況になりがちです。
「新しいロゴが増えたのは分かるけれど、
自分たちの施策にどう関係するのかが見えづらい…」
本記事では、2025年版の各種カオスマップを前提にしながらも、 個別ツールの詳細より、「消えた企業/集合」「新しく生まれたカテゴリ」から読み取れる構造変化に焦点を当てます。
そのうえで、マーケティング担当者が今日から使える視点として、
- カオスマップでまず見るべき「3つの着眼点」
- 「消えたロゴ」から読み取れるリスクサイン
- 「生まれたカテゴリ」の優先順位の付け方
を整理し、ツール選定やベンダーとの対話に役立つ解説を目指します。
📚 2025年版カオスマップで起きた「3つの見た目の変化」
まずは、2025年版のマーケティング/DX関連カオスマップを俯瞰したときに、多くのマップで共通して見られる変化を整理します。
カテゴリの「整理」と「細分化」が同時進行している
- 従来の「広告」「分析」「CRM」などの大きなカテゴリは維持されつつ、細分類のルールが見直されている
- 似た機能のツールをまとめたり、逆に生成AIなど新機能に合わせて小カテゴリを増やしたりと、「整理」と「分岐」が同時に進行
- マップによっては、カテゴリ数を増やしつつ視認性を上げるデザインに刷新されている
生成AI・自動化・データ基盤まわりのロゴが目立つ
- コンテンツ生成・パーソナライズ・自動分析など、生成AIを前面に出したサービスロゴが増加
- データクレンジングや統合、ワークフロー自動化など「裏方のDX」を支えるツールもひとつのエリアとして強調される傾向
- 従来の「広告運用」「アクセス解析」に加え、「マーケティングDX」「アプリテクノロジー」など用途別のカオスマップも増えている
制作プロセス自体に生成AIが使われ始めている
2025年は、カオスマップそのものの制作に生成AIが活用されたという点も象徴的です。
- ツールの抽出や分類、カテゴリ設計の一部に生成AIが使われ、人手だけでは追いきれない情報を整理
- その結果、ツール数の増加に対しても、ある程度ルールに沿ったマッピングが可能に
- 「マップの裏側にあるデータベース」を整備し、Web上での検索や絞り込みに対応する動きも増えている
・左に「2024年版:ロゴがぎっしり」の絵、右に「2025年版:カテゴリが整理されたマップ」の絵。
・中央に「生成AI」「DX」「データ基盤」と書かれた付箋アイコンを配置し、矢印で「ロゴ集 → データとして扱えるマップ」への変化を描く。
✅ 「消えた企業」「生まれたカテゴリ」から何が分かるのか
カオスマップの真価は、「今年のロゴが載っているかどうか」だけではなく、前年からの変化を見ることにあります。 特に、消えた企業や新設されたカテゴリに注目すると、ツール選定に役立つ示唆が増えます。
消えた企業・ロゴから読み取れること
- M&Aやブランド統合の結果
他社に吸収された、ブランド名が変わった、機能が別カテゴリに移った、などのケース。 「ツールがなくなった」のではなく、別の形で残っている場合も少なくありません。 - ビジネスモデルの転換
マーケティング領域から離れ、コンサルティングや受託開発など、別の事業ドメインへ移行した結果、カオスマップの範囲外になったパターンもあります。 - プロダクトやサポート体制の縮小
実際にサービス終了・開発停止・新規営業の停止などが背景にあることもあります。 既存ユーザーにとっては、移行検討のシグナルになることも多いポイントです。
生まれたカテゴリから読み取れること
- ユーザー企業の課題が「見える化」された領域
新カテゴリとして切り出されるのは、多くの企業が似た課題を抱え、ツール数が一定以上に増えた領域です。 - 投資・採用が進んでいるテーマ
生成AI、マーケティングDX、モバイルアプリテクノロジー、データクリーンルームなどのテーマ別カオスマップは、 業界全体で人と予算が集まっている領域と重なりやすくなっています。 - 将来の「標準機能」候補
一度カテゴリとして独立した領域は、数年後に「多くのツールが当たり前に備える機能」になるケースもあります。
「消えたロゴ」はリスクのサイン、「新しく生まれたカテゴリ」は成長テーマのサインと捉えると、 カオスマップが単なる一覧ではなく、投資判断のヒントとして機能し始めます。
🧭 応用方法:2025年版カオスマップを「実務で使う」3つの読み方
ここからは、マーケティング担当者がカオスマップを実務で活かすための具体的な読み方を紹介します。 ポイントは、「すべてのロゴを見る」のではなく、目的から逆算して絞り込むことです。
着眼点A:自社が「どのレイヤー」で遅れているかをざっくり確認する
- マップ上で、大きく「認知・集客」「サイト・アプリ」「データ基盤」「営業・リテンション」などのレイヤーを意識して眺める
- 自社がすでにツール・運用を持っている領域にはチェックマークをつけるイメージで確認
- まだ何も手を付けていないレイヤーを、今後の検討候補としてピックアップする
着眼点B:「消えたロゴ」が多いカテゴリをチェックする
- 前年と見比べて、明らかにロゴ数が減っているカテゴリを探す
- 統合や撤退が進んでいる場合、その領域は中長期的に「専用ツール」から「プラットフォームの一機能」へ移行している可能性がある
- 新規導入を検討するより、既存のメインツールの機能拡張で対応できないかを先に確認する
着眼点C:「生まれたカテゴリ」と自社課題の接点を探す
- 新設されたカテゴリの名称から、「どのような課題を解決するための領域か」を想像してみる
- 自社の施策で、似た課題を感じていないかを振り返る(例:レポート作成の負荷、データの分散、アプリ運営の属人化など)
- 自社の課題と重なるカテゴリだけをピックアップし、詳細調査の優先度を上げる
🧱 導入方法:カオスマップからツール候補を絞り込むステップ
「気になるカテゴリは見つかったが、ここからどう絞り込めばよいか分からない」という声もよく聞きます。 そこで、2025年版カオスマップを起点にしたツール選定のステップを、マーケター視点で整理します。
まずは、カオスマップを見ながら「今は検討しないカテゴリ」に×印を付けるイメージで線引きします。
- 事業フェーズ的にまだ早い領域(例:一部の高度な予測分析、メタバース関連など)
- 社内に担当者を置ける見込みが薄い領域
- 既存ツールで十分にカバーできている領域
カオスマップから、まずはロゴベースで3〜5社をピックアップします。
- すでに耳にしたことがある/身近な企業
- 複数のカオスマップに登場している企業
- 自社と近い規模・業界の導入事例がありそうな企業
機能だけで比較すると、どうしてもカタログスペック勝負になりがちです。 そこで、比較軸をあらかじめ2つに分けておきます。
- 機能軸:対応チャネル、レポート機能、AI支援機能、外部連携のしやすさ など
- 運用軸:サポート体制、オンボーディングの流れ、UIの分かりやすさ、料金の透明性 など
実際に商談・デモを行う際には、次のような質問を用意しておくと、比較しやすくなります。
- 「自社は、カオスマップ上ではどのカテゴリに位置づけられていますか?」
- 「ここ1〜2年で、どのカテゴリとの境界が近づいていると感じますか?」
- 「今後、消えていきそうなカテゴリ/統合されていきそうなカテゴリはありますか?」
こうした質問は、単に機能を説明してもらうだけでなく、ベンダーが市場全体をどう見ているかを知るきっかけになります。
最後に、「このツール・ベンダーは3年後、カオスマップのどのあたりにいるだろう?」という問いをチームで投げかけてみてください。
- 今より広いカテゴリへ進出しているイメージがあるか
- 別カテゴリに吸収されていそうか(=統合・買収の可能性)
- 自社の事業戦略と、その変化が噛み合っていそうか
「どのツールが優れているか」だけでなく、
「どのカテゴリが伸びそうか」「どのカテゴリが統合されそうか」を議論に含めることで、
カオスマップが中長期の投資判断の材料としても活きてきます。
🔮 未来展望:2026年以降のカオスマップはどう変わるか
2025年版カオスマップの特徴を踏まえると、今後数年で次のような変化が進むことが予想されます。
AIカテゴリが「分散」と「統合」を繰り返す
- 2025年は「生成AI」「AIアシスタント」のようなラベルでひとまとめにされがちな領域が、用途別(クリエイティブ、分析、自動化など)に再整理されていく可能性があります。
- 同時に、既存ツールにAI機能が標準搭載されることで、独立カテゴリだったAIツールがほかのカテゴリに吸収される流れも強まりそうです。
「業務プロセス単位」のカオスマップが増える
- これまでは「マーケティング全体」「アプリテクノロジー全体」といった広い範囲のマップが中心でした。
- 今後は「マーケティングDX」「コンテンツ制作フロー」「データ活用プロセス」など、業務プロセスを軸にしたカオスマップが増えると考えられます。
- 業務プロセスで区切ることで、「自社がどこまでツールでカバーし、どこから人が担うか」が見えやすくなります。
カオスマップが「インタラクティブなナレッジベース」に変化する
- 紙や静的な画像のマップではなく、Web上で検索・フィルタリングできる形式が一般的になっていくでしょう。
- 生成AIを用いて、「自社の課題からカオスマップ上のカテゴリ/ツール候補をおすすめする」といった使い方も進みそうです。
- ベンダー側も、マップ掲載そのものより「マップ上でどう見つけてもらうか」を意識した情報設計が重要になります。
カオスマップは、年に一度眺めて終わりの資料ではなく、
「自社のテックスタックと市場の距離感」を定期的に見直すための鏡として活用できます。
2025年版をきっかけに、自社なりの「ミニ・カオスマップ」を作るのも有効なアプローチです。
🧾 まとめ:ロゴの数ではなく、変化の「向き」を読む
2025年版カオスマップは、ツール数の増減だけでなく、 カテゴリの再編・生成AIの浸透・制作プロセスの変化といった構造的な変化が目立つ年でした。
- 「消えた企業・ロゴ」は、必ずしも失敗ではなく、統合・転換・マップ範囲の変更など、さまざまな理由がある
- 「生まれたカテゴリ」は、ユーザー企業の課題が集まり、投資や採用が進みつつある領域のシグナルになりやすい
- カオスマップは、ツールの網羅表ではなく、「自社のツール戦略を考えるための補助線」として活用すると価値が高まる
- AIやDX関連のマップが増えるなかで、今後は業務プロセス単位でのマッピングや、インタラクティブなナレッジベース化が進む
今日できるアクションとして、次のような問いをチームで共有してみてください。
- 自社は、カオスマップのどのレイヤーで弱みを感じているか
- 消えたロゴが多いカテゴリに、過度に依存していないか
- 新しく生まれたカテゴリのうち、自社の課題と近いものはどれか
これらの問いに向き合うことが、2025年版カオスマップを「眺めて終わり」にしないための第一歩になります。
❓ FAQ:2025年版カオスマップに関するよくある疑問
カオスマップはあくまで「ある基準に基づいたスナップショット」です。
掲載条件や調査範囲の関係で、有力なツールが載っていないケースもあります。
大切なのは、マップに載っている/いないを絶対視せず、自社の課題に合うかどうかを軸にすることです。
サービス提供会社のWebサイトや最新のニュースリリースをチェックし、
・サービスの開発状況
・サポート体制の継続
・今後のプロダクトロードマップ
を把握したうえで、必要に応じて代替候補の検討を進めるとよいでしょう。
部門ごとにバラバラに導入されたツールを整理し、
「どの領域にツールが集中しているか」「どの領域が空白か」を可視化できます。
それにより、新規導入・統合・廃止の優先順位を議論しやすくなります。
例として、
・コンテンツ制作を効率化したいのか
・レポート作成や分析を効率化したいのか
・ワークフロー全体を自動化したいのか
を明確にし、そのプロセスに紐づくカテゴリだけをカオスマップ上から抜き出すと、検討範囲を整理しやすくなります。
自社と同じ規模・業態の企業がよく使っているカテゴリ/ツールを中心に眺めることで、
「自社が今どの段階まで整えるべきか」「どの領域は将来の検討に回すか」を整理する材料になります。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。

