ITP 2.3とは何か?広告担当者が理解すべきポイント

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ITP 2.3とは何か?: 制限強まるクロスサイトトラッキング

ITP 2.3(Intelligent Tracking Prevention 2.3)とは、Apple社のウェブブラウザーであるSafariが実装しているプライバシー保護のための技術です。このITP 2.3の主目的は、ユーザーのウェブ上の行動追跡を制限することにあります。具体的には、クロスサイトを横断する形でのトラッキング、すなわち異なるウェブサイト間でのユーザー行動追跡を厳しく制限しています。

なぜこれが問題になるかと言うと、それは多くの広告配信やマーケティング活動が、ユーザーのクロスサイト行動を追跡することを前提としているからです。ユーザーがAサイトからBサイトへ移動したとき、その行動ログを元にユーザーの趣味嗜好や商品購入傾向などを解析し、最適な広告を配信したり、個別のマーケティング施策を検討したりします。しかし、ITP 2.3が導入されることで、このような行動追跡が困難になります。

ITP 2.3の広告に対する影響

ITP 2.3の導入により、クロスサイトトラッキングが制限されると、これに大きな影響を受ける広告手法としてリターゲティング広告があります。リターゲティング広告は、ユーザーが一度訪れたウェブサイトや閲覧した商品を元に、その後のウェブ閲覧時に関連商品の広告を表示するというもので、それまでのユーザーの閲覧履歴を元に最適化された広告を提供していました。しかし、ITP 2.3によるクロスサイトトラッキングの制限により、この最適化が難しくなります。

また、これまでは広告効果の測定にもユーザーのクロスサイト行動を追跡することが多かったです。たとえば、特定の広告を見たユーザーが別のサイトで何を行うかを追跡することで、広告効果を定量的に評価しました。しかし、ITP 2.3によりこのような広告効果の測定方法にも大きな制限が加わります。

ITP 2.3対応の必要性と解決策

こうした広告配信の困難さから、ITP 2.3への対応がデジタルマーケティングにおいて重要な課題となっています。対応を怠ってしまうと、広告効果が期待できないだけでなく、広告主との契約違反にもつながる可能性があります。一方で、ITP 2.3を考慮に入れた広告戦略を立てることで、ユーザープライバシーの尊重とともに、効果的な広告配信も可能になります。

具体的な対策としては、まず、広告のパーソナライゼーションは同一サイト内で行うことや、ユーザーの明示的な同意を得てからクロスサイトトラッキングを行うという選択肢があります。また、広告効果の測定方法についても、例えばサイト直帰率やページ滞在時間など、ユーザーのサイト内行動に着目したものにシフトするなど、広告配信と効果測定の方法を見直す必要があります。

ITP 2.3と広告配信の未来

ITP 2.3は今後さらなるバージョンアップが予想され、更に厳格なクロスサイトトラッキング規制が導入されることも予測されています。このため、広告運用者はITPの動向を常にキープし、広告配信と広告効果測定方法を柔軟に見直すことが求められます。

また、ITPの導入は、ユーザープライバシーの尊重という観点からプラスの評価を受けています。一方で、ユーザー体験に対する影響やデジタルマーケティングの効率性など、多くの課題も浮き彫りになっています。このような課題を解決するための新たな広告テクノロジーや戦略が求められるとともに、広告配信のあり方そのものも再考される時代が到来しています。