データ分析だけでは見えない顧客の真のニーズを理解するための実践的アプローチを解説。表面的な声と本音の違いを見極め、効果的なマーケティング施策に活かすための具体的手法と事例を紹介します。
顧客理解の意義とデジタルマーケティングにおける重要性
「顧客理解」という言葉、よく耳にしますが、その本質は何でしょうか。顧客理解とは、顧客が求めている製品やサービスを生み出し、顧客にとって価値あるコミュニケーションを提供するために、顧客の購買行動や属性などからニーズや考えを見出す取り組みです。単に「誰が買ってくれるか」を知るだけではなく、「なぜ買うのか」「どんな価値を感じているのか」という深層にまで迫ることが、真の顧客理解と言えるでしょう。
近年、市場環境は大きく変化しています。特に日本においては人口減少により市場が縮小する一方で、情報が爆発的に増加し、消費者の選択肢も広がっています。一人ひとりのライフスタイルや好みが多様化する中、従来のマス向けマーケティング手法だけでは、競合他社に対して優位に立つことが難しくなっています。
世界的に有名な経営学者であるフィリップ・コトラー教授によると、現代のマーケティングは個別の体験を提供する「マーケティング4.0」の時代だといわれています。消費者は製品やサービスを購入するだけでなく、購入によって「精神的欲求を満たすこと」を重視するようになっており、企業の利益向上のためには顧客視点のマーケティングが重要です。
顧客理解を深めることで、顧客のニーズに合致した製品開発が可能になり、また顧客にとって意味のあるコミュニケーションが実現します。その結果、顧客エンゲージメントが高まり、企業側から働きかけなくても商品を周りに薦めてくれるようになるのです。データドリブンな時代だからこそ、数字の向こう側にいる「人」を理解することが、マーケティングの成否を分けます。
表面的なデータと顧客の真のニーズの狭間
顧客理解を進める上で、データ分析は欠かせないアプローチです。しかし、データだけを見ていても、顧客の真のニーズを把握することは困難です。データは大きく「定量データ」と「定性データ」に分けられます。
定量データは、売上高や商品別の販売数、サイトアクセス数など、明確に数値として表せるデータです。顧客の住所や年齢、家族構成なども広い意味での定量データに含まれます。これらを分析することで、「誰が・何を・いつ・どこで」購入しているかという事実が浮かび上がります。
一方、定性データは、「商品をなぜ気に入ったか」「他の商品ではなくなぜそれを選んだのか」「商品のどこに不満を抱いているのか」など、数値には表しにくい質的なデータです。アンケートやインタビュー、行動観察などから収集され、顧客の心理的・感情的な要因を把握するのに役立ちます。
しかし、これらのデータだけで顧客を理解したつもりになると、大きな落とし穴にはまる可能性があります。例えば、ある化粧品ブランドでは、店舗に来店する頻度が高い20代女性をメインターゲットとしてマーケティング活動を行っていました。しかし、詳細なデータ分析をしてみると、30代女性は来店回数こそ少ないものの、1回の来店あたりの購入金額が多く、実は売上に大きく貢献していたのです。表面的なデータだけでは見えない真実が、そこにはありました。
また、アンケートやインタビューで得られる「お客様の声」も、必ずしも顧客の真のニーズを表しているとは限りません。ある食器メーカーのグループインタビューでは、「次に買うとしたらどんなお皿がいいか」という質問に対し、最終的に「オシャレでカッコイイ黒い四角いお皿」という意見でまとまりました。しかし、インタビュー協力のお礼に好きな食器サンプルを1つ持ち帰ってもらったところ、全員が選んだのは「白い丸い皿」でした。理由を尋ねると「4人家族なので1枚だけ黒いお皿をもらっても仕方がない」「家にあるお皿の多くは丸いので四角いとしまいにくい」という現実的な回答が返ってきたのです。
このように、顧客の「言うこと」と「行動」には往々にしてギャップがあります。データ分析と顧客の声、そして実際の行動観察を組み合わせることで、初めて顧客の真のニーズに迫ることができるのです。
顧客視点と提供者視点の決定的な違い
顧客理解を深める上で最も重要なのは、「企業視点」ではなく「顧客視点」で考えることです。しかし、これが思った以上に難しいのです。企業視点で見ると、その顧客がどのような特徴を持った人か、他の顧客層とどのように異なるかという相対的・客観的な見方にしかならず、本当の顧客の気持ちや考え、ニーズを知ることはできません。
提供者視点と顧客視点の違いを示す典型的な例として、保険見積サイトの事例があります。あるサイトでは、見込顧客は最適な保険を見つけるために「多くの会社の見積が欲しい」と思っているはずと考え、提携する保険会社の多さを全面に押し出した訴求をしていました。しかし成果に伸び悩んだため、実際の顧客にサイトを使ってもらう調査をしたところ、「見積りが沢山来ても鬱陶しい」「主要な2~3社の見積りが欲しい」と思っていることがわかりました。この発見に基づき、「数社を厳選して紹介」という訴求に変更したところ、成果が向上したのです。
もう一つの例として、日本マクドナルドの事例があります。顧客にアンケート調査をすると、必ず「低カロリー」「オーガニック」「ヘルシー」といった健康重視のメニューが挙がります。しかし実際には、4枚のパティが入った「メガマック」や「クォーターパウンダー」といった高カロリーな商品が若い女性を含め多くの顧客に支持されています。これは、お客様の言うことと実際の行動が必ずしも一致しないことを示す典型例です。
顧客視点に立つためには、顧客が自覚している表面的なニーズだけでなく、顧客自身も気づいていない無意識に存在する理由や本音を洞察することが重要です。例えば、スーパーで買い物をする際、広告の品は「お得に買えるから」という理由で購入することが自覚されていますが、いつも購入している商品については「なんとなく」「いつも買っているから」と曖昧な回答しか返ってこないことがあります。
顧客視点を獲得するためには、アンケートや顧客の声に頼るだけでなく、実際の購買行動の観察、ユーザーテスト、行動データの分析など、多角的なアプローチが必要です。顧客の言葉を鵜呑みにするのではなく、その発言の背景にある想いや無意識下に眠る購入根拠を深堀りしていくことこそが、真の顧客理解につながるのです。
カスタマーインサイトの発掘と活用法
顧客理解を深めるうえで、核となるのが「カスタマーインサイト」の発掘です。カスタマーインサイトとは、「消費者の購買行動のきっかけとなる心の本音」を指します。顧客自身も他人に説明できない自身の行動に対する本音であり、表面的なニーズとは異なる潜在的なニーズです。
カスタマーインサイトとニーズの違いを理解することが重要です。ニーズは「消費者本人が理解している自身の欲求」であり、顧客にインタビューやアンケートで直接聞くことで把握できます。一方、カスタマーインサイトは消費者本人も明確に言語化できない本音であり、行動観察や深層心理の分析など、より高度な手法で掘り下げる必要があります。
カスタマーインサイトを発掘するためには、以下のようなアプローチが効果的です:
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行動観察法:実際の購買シーンや商品使用シーンを観察し、言葉にならない行動パターンやフラストレーションを見つける
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深層インタビュー:「なぜ」を繰り返し質問することで、表面的な回答の奥にある本当の理由を探る
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共感マッピング:顧客が「見ているもの」「聞いているもの」「考えていること」「感じていること」をマッピングし、包括的に理解する
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カスタマージャーニーマップ:購買に至るまでの全プロセスを可視化し、各段階での感情や課題を明らかにする
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プロトタイピングとユーザーテスト:実際の製品やサービスのプロトタイプを使ってもらい、反応を観察する
カスタマーインサイトを活用した成功事例として、「Got Milk?」キャンペーンがあります。カリフォルニア牛乳協会は、「牛乳は栄養豊富だ」という栄養面でのメリットを訴えていましたが、効果が低迷。リサーチを深めるうちに、「甘く口がぱさぱさするような食べ物(クッキーやカステラなど)に最も相性の良い飲み物は牛乳である」というインサイトを発見しました。このインサイトに基づき、クッキーやケーキ売り場で「牛乳買った?(Got Milk?)」キャンペーンを展開し、大成功を収めました。
また、日本の事例では、ある洗剤ブランドが「皿洗いは重労働で嫌いな家事」という表面的なニーズに対して、「皿洗いを始める前の台所に積まれた皿の山にはうんざりするが、一枚ずつ皿が洗われて油汚れがきれいに取れた瞬間に、ちょっとした達成感を感じる」というインサイトを発見。このインサイトに基づき、「濃密な泡でパッと洗えてキュッと消える実感」を伝える商品とプロモーションを提供し、好評を博しました。
カスタマーインサイトの発掘は一朝一夕にできるものではありません。しかし、顧客の心の奥深くにある本音を理解できれば、競合他社にはない独自の価値提案が可能になり、マーケティングの効果を飛躍的に高めることができるのです。
効果的な顧客セグメントの作成と活用戦略
顧客理解を実践に落とし込む上で、顧客セグメントの作成は重要なステップです。顧客セグメントとは、自社サービスに関連する顧客を属性ごとに分類したグループのことで、「どのグループを狙うか」「どうコミュニケーションを取っていくのか」といったマーケティング戦略を考えるために活用します。
効果的な顧客セグメントを作成するためには、まず目的や事業内容に合わせてセグメント項目(分類方法)を考える必要があります。一般的には以下の4つの観点が参考になります:
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デモグラフィック(人口統計学的変数):年齢、性別、職業、年収、家族構成など
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ジオグラフィック(地理的変数):地域、都市の人口、人口密度、気候など
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サイコグラフィック(心理学的変数):悩み、購買動機、ライフスタイル、価値観など
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ビヘイビアル(行動変数):商品を購入した回数、経路、日時、金額など
ただし、ここで大切なのは「漠然と上記の4分類に当てはめるのではなく、目的に応じてカスタマイズする」ということです。例えば、女性向け美容液の通信販売会社であれば、地域や人口密度よりも、肌の悩みや美容に対する価値観などがより重要なセグメント項目になるでしょう。「どのように分類したらターゲット選定やコミュニケーション設計に役立つのか」という視点でセグメント項目を選ぶことが重要です。
セグメント項目が決まったら、実際に顧客セグメントを作成します。これはSTP分析(Segmentation-Targeting-Positioning)の「S」にあたる部分です。セグメントの作成には、アンケート、マーケティングリサーチ、想定ターゲットへのヒアリング、ソーシャルリスニングなどの手法が活用できます。既存事業の場合は、営業担当や既存顧客へのヒアリング、CRMツールの分析も有効です。
次に、作成したセグメントの中から、どのセグメントをターゲットにするかを考えます(STP分析の「T」)。この際、以下の点を検討するとよいでしょう:
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そのセグメントの規模は十分か(十分な売上や利益が見込めるか)
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各セグメントの優先順位はどうか
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そのセグメントにアプローチは可能か
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マーケティング施策の効果測定は可能か
最後に、選定したターゲットに対して、どのようなポジショニングを取るか(STP分析の「P」)、具体的なコミュニケーション戦略と施策を設計します。例えば、「30代女性×シミ悩み×高価格帯化粧品利用者」というセグメントをターゲットにする場合と、「20代女性×毛穴悩み×中価格帯化粧品利用者」をターゲットにする場合では、商品コンセプトやメッセージ、チャネル選定などが大きく異なります。
顧客セグメントの活用例として、あるECサイトは、顧客を「購入頻度×購入金額」でセグメント化し、「高頻度×高金額」の優良顧客には特別な特典やパーソナライズされたレコメンド、「低頻度×高金額」の顧客には定期購入の提案、「高頻度×低金額」の顧客にはクロスセルの提案、といった具合に、セグメントごとに異なるアプローチを展開し、顧客満足度と売上の向上に成功しています。
適切な顧客セグメントを作成し活用することで、限られたマーケティングリソースを効率的に配分し、各セグメントに最適化されたメッセージとオファーを届けることができるのです。
顧客理解を阻む壁とその打破法
顧客理解を深めようとしても、様々な障壁に直面することがあります。これらの壁を認識し、適切に対処することが、顧客理解を深化させる上で重要です。
最も一般的な障壁の一つが「データのサイロ化」です。これは、顧客に関する様々なデータが異なるシステムや部門に分散して存在し、統合された形で活用できていない状態を指します。例えば、実店舗の購買データはPOSシステムに、オンラインショップの購買データはECプラットフォームに、顧客の問い合わせ履歴はCRMシステムに、それぞれ別々に保存されていると、顧客の全体像を把握することが困難になります。
データのサイロ化を解消するためには、以下のようなアプローチが有効です:
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CDPの導入:顧客データプラットフォーム(CDP)を導入し、異なるソースから収集されたデータを統合して一元管理する
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データ連携の仕組み構築:APIやデータ連携ツールを活用し、各システム間でデータを自動的に連携させる
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データガバナンス体制の確立:データの定義や管理ルールを明確にし、全社で統一された形でデータを扱える体制を整える
もう一つの重要な障壁は「組織のサイロ化」です。マーケティング部門、販売部門、カスタマーサポート部門などが縦割りで機能し、顧客に関する情報や洞察が共有されていない状態です。この場合、各部門が自分たちの視点でのみ顧客を理解しようとするため、全体像が見えなくなります。
組織のサイロ化を解消するには:
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クロスファンクショナルチームの編成:異なる部門のメンバーで構成されるチームを作り、顧客理解に関するプロジェクトを推進する
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情報共有の仕組み構築:定期的な部門間ミーティングや、情報共有プラットフォームの活用
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顧客中心の組織文化の醸成:経営層のコミットメントのもと、顧客理解の重要性を組織全体に浸透させる
さらに、「リソースとスキルの不足」も大きな障壁です。データ分析やインサイト発掘には、専門的なスキルとツール、そして時間が必要です。多くの企業では、日常業務に追われ、深い顧客理解に十分なリソースを割けないという課題を抱えています。
この問題に対しては:
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専門人材の育成・採用:データ分析やカスタマーインサイト発掘のスキルを持つ人材を育成または採用する
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外部パートナーの活用:専門的なリサーチ会社やコンサルティングファームと協業する
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自動化ツールの導入:AIやマーケティングオートメーションツールを活用し、データ収集・分析の効率化を図る
最後に、「過去の成功体験への固執」も顧客理解を阻む大きな壁です。「これまでこうやってきて成功してきた」という思い込みが、新たな顧客理解の試みを妨げることがあります。
この打破には:
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小さな実験の奨励:リスクの少ない形で新しいアプローチを試し、成果を実証する
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外部視点の取り入れ:業界外の事例や異なる文化圏の事例から学び、固定観念を打ち破る
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継続的学習の文化づくり:市場や顧客は常に変化していることを認識し、学び続ける組織文化を醸成する
これらの障壁を認識し、適切な対策を講じることで、顧客理解の深化を阻む壁を乗り越えることができるのです。
顧客理解の深化による成功事例
顧客理解を深めることで、どのような成果が生まれるのか。具体的な事例を通じて見ていきましょう。
ある日本の飲料メーカーは、新しい炭酸飲料の開発にあたり、従来のような甘さや香りに関するアンケートだけでなく、実際の飲用シーンの観察と深層インタビューを実施しました。その結果、「職場でリフレッシュしたいが、香りの強い飲み物は周囲に気を遣う」という日本特有のインサイトを発見。これに基づき、爽快感はありながらも香りを控えめにした商品を開発したところ、オフィスワーカーを中心に支持を集め、想定を上回る売上を達成しました。
ある化粧品メーカーは、従来20代女性をターゲットとしてマーケティング活動を行っていましたが、詳細なデータ分析の結果、30代女性の購入単価が高いことを発見。さらに調査を進めると、30代女性は「自分に合った製品を見つけて長く使いたい」という思いが強いことがわかりました。この洞察に基づき、30代女性向けに「あなたの肌を深く理解する」というコンセプトの診断サービスとパーソナライズされた商品を提供。結果として、顧客満足度と売上の両方が上昇しました。
ある通販サイトでは、ECサイトと実店舗の購入データを統合・分析したところ、ECサイトを利用する顧客の9割が実店舗での購入を経ていることが判明。また、実店舗のみで商品を購入している顧客と、実店舗とECサイトの両方で購入している顧客では、顧客生涯価値(LTV)に約4倍の差があることもわかりました。この発見に基づき、実店舗は利用しているがECサイトは利用したことがない顧客に対して、ECサイト限定のクーポンを配布するなどの施策を実施。その結果、オムニチャネル化が進み、LTVの向上に成功しました。
あるBtoBサービス企業は、従来の満足度調査やクレーム分析だけでなく、顧客企業の意思決定プロセスを深く理解するためのエスノグラフィック調査を実施。その結果、「導入担当者は使いやすさを重視するが、決裁者はROIとリスク低減を重視している」というインサイトを得ました。この洞察に基づき、決裁者向けと導入担当者向けに異なる訴求ポイントを設定したマーケティング資料を作成し、商談の成約率が向上しました。
これらの事例に共通するのは、表面的なデータや顧客の声だけでなく、多角的なアプローチで顧客の真のニーズとインサイトを掘り下げたこと、そしてその洞察を具体的なマーケティング施策に落とし込んだことです。
成功のポイントをまとめると:
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多角的なデータ収集:定量データと定性データ、オンラインとオフラインなど、様々な角度からのデータを統合
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深層的な理解:表面的なニーズだけでなく、行動の背景にある動機や感情まで掘り下げる
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インサイトの言語化:発見した洞察を具体的で行動に移せる形で言語化する
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組織横断的な共有:得られたインサイトを関連部門と共有し、一貫した顧客体験を提供する
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継続的な検証と更新:顧客理解は一度で完了するものではなく、継続的に検証し更新していく
顧客理解の深化は、短期的な売上向上だけでなく、顧客満足度の向上、リピート率の増加、顧客生涯価値の向上など、長期的な事業成長にもつながる重要な取り組みなのです。
明日から始める顧客理解深化のための実践ステップ
顧客理解の重要性と方法論について理解できたところで、最後に「明日から何をすべきか」という実践的なステップを考えてみましょう。顧客理解の深化は決して一朝一夕に達成できるものではありませんが、以下のステップを踏むことで、着実に前進することができます。
ステップ1:現状把握と目標設定
まずは自社の顧客理解の現状レベルを客観的に評価しましょう。現在どのような顧客データを収集しているか、それがどのように活用されているか、組織内でどのように共有されているかを確認します。その上で、「6ヶ月後に達成したい顧客理解のレベル」という具体的な目標を設定します。例えば、「主要顧客セグメントの購買行動の背景にある心理的要因を明らかにし、マーケティングメッセージに反映させる」といった具体的な目標が有効です。
ステップ2:データインフラの整備
顧客理解の基盤となるデータ収集・統合の仕組みを整えます。既存のデータソースの棚卸しを行い、どのようなデータがどこに存在するかを明確にしましょう。CRMシステムやデータ統合ツールの導入・改善も検討します。データプライバシーの観点から、適切な同意取得と管理の仕組みも併せて構築することが重要です。
ステップ3:多角的なリサーチの実施
定量データと定性データを組み合わせた多角的なリサーチを計画・実施します。顧客アンケート、インタビュー、行動観察、ウェブ解析、ソーシャルリスニングなど、様々な手法を組み合わせることで、より深い顧客理解が可能になります。特に、「なぜそうするのか」「その背景には何があるのか」という問いを常に持ち、表面的なデータの奥にある本質を探る姿勢が重要です。
ステップ4:カスタマーインサイトの抽出と共有
収集したデータを分析し、カスタマーインサイトを抽出します。このプロセスでは、マーケティング部門だけでなく、営業、商品開発、カスタマーサポートなど、顧客と接点を持つ様々な部門のメンバーを巻き込むと、より多角的な視点での解釈が可能になります。抽出したインサイトは、具体的なストーリーやペルソナという形で言語化し、組織内で共有しやすい形にすることが重要です。
ステップ5:実験的施策の実施と検証
抽出したインサイトに基づいた小規模な施策を実験的に実施し、その効果を検証します。例えば、特定のセグメント向けに新しいメッセージングを試してみたり、インサイトに基づいた新機能を限定的にリリースしたりといった取り組みです。この段階では「完璧を求めず、素早く試して学ぶ」という姿勢が重要です。
ステップ6:成功パターンの拡大と組織への定着
実験で成功した施策を拡大し、組織全体に取り入れていきます。また、顧客理解のプロセス自体を組織の文化や日常業務に組み込んでいくことが重要です。定期的な顧客理解ワークショップの開催や、意思決定プロセスに顧客視点を取り入れるための仕組み作りなどが考えられます。
ステップ7:継続的な学習と更新
顧客理解は一度達成したら終わりではなく、顧客のニーズや行動は常に変化していくものです。定期的なデータ更新と分析、新たなインサイト発掘のためのリサーチを継続的に行い、顧客理解を常に最新の状態に保つことが重要です。PDCAサイクルを回し続けることで、顧客理解はより深く、より精緻になっていきます。
これらのステップは、組織の規模や業種、現在の顧客理解のレベルによって適宜調整が必要です。重要なのは、「完璧を求めて何も始められない」状態に陥らないことです。まずは小さく始め、成功体験を積み重ねながら、徐々に取り組みを拡大していくアプローチが、持続可能な顧客理解の深化につながります。
顧客理解の深化は、一朝一夕に達成できるものではありませんが、継続的な取り組みによって、他社が真似できない競争優位性を構築することができます。ぜひ明日から、あなたの組織の顧客理解を一歩進めるための第一歩を踏み出してみてください。

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