生成AIの大きな変化
最初に注目したいのは、プロンプトエンジニアリングの在り方が大きく変化してきた点です。少し前まで主流だった「GPT-3.5」や「GPT-4」などでは、構造的にガチガチに固められたプロンプト設計が重視されていましたが、最近登場した「O1」「O1Pro」「O3」といった新しいモデルでは、プロンプトの書き方そのものが根本的に変わっています。複雑な構造指示をするよりも、キーワードやフレーズ選び、それに加えて前提情報となる元データをどう与えるかが成果を左右するようになってきたのです。
GPT-3.5やGPT-4時代の特徴
当時を振り返ると、「7Rプロンプト」や「深津式プロンプト」など、あらかじめフレームワークを定めて「依頼内容」「前提」「制約条件」を明示的に書き分ける手法がよく使われていました。ChatGPTなどのツールを使う場合にも、「ステップ1として目的を書く」「続いてステップ2で要素を箇条書きにする」といった段階的手順を守ることで、意図した出力を得ようとするやり方が浸透していました。構造を事細かに指定しないと、文章のまとまりや細部のフォーマットが崩れがちだったためです。
O1やO1Proの新たな仕組み
しかし、O1やO1Pro、O3などの新しいモデルが登場したことで、この流れが大きく変わりつつあります。これらのモデルは、回答過程でより深い推論が行われるため、構造指示をこと細かに与えなくても、整っていて使いやすい文章を生成することが可能となりました。GPT-3.5やGPT-4では、きっちり段階を踏まないと意図通りの回答が得られにくかったのに対し、新しいモデルでは適切なフレーズ選びさえすれば、余分な構造を省いても十分に精度の高い応答を引き出せるようになっています。
構造依存からの脱却
この流れを象徴するのが、「構造依存からボキャブラリー、元データ依存へのシフト」です。以前は、メール文や資料作成などのタスクを頼む際、「件名」「挨拶文」「本文」「署名」の順序を細かく指定しないと意図しない形式になることが多かったのですが、最近のモデルでは、ごく限られたキーワードや説明だけで想定以上に整った書式や文体を生成できます。ステップを細かく分解しなくても、出力される文章の完成度が高くなった点は、プロンプトを書く際の負荷を大きく下げています。
注目される元データの活用
もう一つのポイントは「前提情報の与え方」です。GPT-3.5やGPT-4では、few-shot learningの一環として回答例をいくつか提示する方法がよく使われていました。ところがO1シリーズなどでは、例示だけでなく、「最初の段階でいかに多くの文脈や制約条件を正確に伝えるか」がとても重要になっています。特に、音声入力が注目を集めはじめたのは、文字入力よりも多くの情報を短時間で伝えられるという利点があるからです。多くの情報を冒頭で与えてやると、モデルがそれをまとめ上げる形で一貫性のある回答につなげられるため、前提情報の質と量が精度を左右するようになっています。
音声入力が切り開く可能性
音声によるプロンプト入力が注目される背景には、人間の会話速度と入力効率の高さがあります。キーボードでのタイピングはどうしてもスピードに限界がありますが、音声ならば膨大な文脈や背景情報を短い時間でモデルに伝えることが可能です。実際に音声入力を取り入れると、まとめたい要素や制約条件を口頭でどんどん付け加え、必要に応じて抜き出した内容を整理させるといった作業がスムーズに進むため、創造的なアイデアや複雑なタスクにも活用しやすくなります。
モデルの特性を理解する重要性
ただし、どのモデルを使うかによって、最適なプロンプトの投げ方は変わってきます。GPT-4系のモデルを敢えて使う場合は、依然として構造化されたプロンプトが成果を高めるケースもあります。一方、O1やO1Proを使う際は、細かい構造指示よりも、必要なキーワードや前提情報をどう整理して提示するかが肝になるでしょう。大切なのは、どちらが優れているという話ではなく、各モデルの強みを理解し、場面に合わせて切り替えることです。
ボキャブラリー重視の未来
以上のように、構造的なプロンプトが絶対的だった時代から、ボキャブラリーとデータ重視のスタイルへ移行する流れが加速しています。数年前のプロンプト設計手法がただちに通用しなくなるわけではありませんが、新しいモデルの可能性を最大限に引き出すには、「どんな単語や表現を使うか」「どのような前提情報を与えて納得させるか」という視点がますます必要です。これからは音声や画像など多彩な入力手段も発展していくため、プロンプトエンジニアリングの幅は一層広がっていくでしょう。ぜひ柔軟に新しい手段を取り入れ、次世代AIとの対話体験を最適化してみてください。
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