TechCrunchによると、Googleが毎年公開している「Year in Search 2025」で、 2025年の世界全体における「検索トレンド」第1位は、GoogleのAIチャットボット「Gemini」だったと発表されました。
ここで言う「トップトレンド」は、単純な検索回数の順位ではありません。 Googleは、「前年と比べて検索数が継続的に大きく伸びたキーワード」をトレンドとして集計しており、 2025年はまさにAIとチャットボットへの関心が世界中で急速に高まった一年だったことが数字として示された形です。
本記事では、TechCrunchの記事内容とGoogleのYear in Search発表をもとに、 「なぜGeminiがトップトレンドになったのか」「他にどのようなキーワードが人々の関心を集めたのか」を整理しつつ、 デジタルマーケティング担当者にとっての示唆を、できるだけ実務目線で解説します。
「Year in Search」とは何か?——“よく検索されたワード”とは違う指標
まず押さえておきたいのが、「Year in Search」が示しているのは 「一年を通して一定期間、検索量が大きく増えたキーワードのランキング」であり、 「年間検索回数の単純なトップ」ではないという点です。
もし「最も検索されたワード」をそのまま並べるだけなら、毎年の上位は weather / news / Facebook / YouTube のような汎用ワードばかりになってしまいます。 そうではなく、「今年、世界の関心がどちらの方向へ揺れ動いたのか」を見るために、 「前年よりも検索ボリュームが大きく伸びたキーワード」が抽出されているのがYear in Searchです。
つまり、このランキングを眺めることは「検索ボリュームの絶対値」を見るというよりも、 “今年、新たに人々が検索し始めたテーマ”の一覧を眺める行為に近いと言えます。 マーケターにとっては、
- 生活者の関心の「伸びている領域」を把握する
- 新しいキーワードクラスターやコンテンツ機会を見つける
- 自社ブランドやプロダクトを「どの文脈」に結びつけると良いかを考える
ためのヒント集として活用できるデータです。
2025年のトップトレンド検索ワード:「Gemini」が首位に
2025年の「世界全体の検索トレンド」ランキングで、 GoogleのAIチャットボット「Gemini」が堂々の第1位となりました。
2位にはクリケットの試合を巡る「India vs England」、 3位には米国の政治コメンテーター「Charlie Kirk(チャーリー・カーク)」が続きます。
また、AI関連ではもう一つ、中国発のAIチャットボット「DeepSeek」が全体7位にランクインしており、 2025年はAIチャットボットがメインストリームの検索トピックとして完全に定着した年だったと言えるでしょう。
Google自らのプロダクト名が検索トレンド1位になった意味
自社製品名である「Gemini」がGoogleのYear in Searchでトップトレンドになったこと自体、 Googleにとっては大きな象徴的出来事です。
これは単に「広告やプロモーションを多く打ったから」ではなく、
- 生成AIやチャットボットに対する生活者の興味・期待が一気に高まった
- 日常生活や仕事の中で、「AIアシスタントをどう使うか」を模索するユーザーが増えた
- Geminiという製品ブランド自体が、「AI=Gemini」として認知されつつある
といった構造変化の結果として現れていると考えられます。
広い意味で言えば、「検索そのもの」がAI体験へとシフトしつつあることを示す動きでもあります。 キーワードで検索するだけでなく、「Geminiに聞く」という行為が、検索行動の延長線上に位置づき直されているのです。
AIチャットボット「DeepSeek」もトップ10入り
2025年の検索トレンドでは、Google以外のAIチャットボットとして「DeepSeek」も7位にランクインしています。
これは、AI市場が単一プレイヤーではなく複数のベンダーによる競争状態にあること、 そしてユーザーが複数のAIサービスを比較・検討しながら利用していることを示しています。
マーケター目線で見ると、
- 「AIチャットボット」というカテゴリ自体が、一時的なブームではなく中長期のトレンドになりつつある
- ユーザーは1つのAIに固定化されるのではなく、目的や文脈に応じて複数サービスを使い分ける可能性が高い
という前提で、チャネル設計やコンテンツ戦略を組み立てる必要があることを意味します。
カテゴリ別のトレンドから見える「2025年の世界」
Year in Searchは、総合ランキングだけでなく、 ニュース、食、映画、スポーツ、ポッドキャスト、書籍など、 カテゴリ別のトレンドも公開しています。
ここではその一部を整理しながら、2025年の生活者インサイトをざっと俯瞰してみます。
ニュース:政治と国際情勢が強く反映された一年
2025年の「ニュース」カテゴリでは、 米国の保守系コメンテーターである Charlie Kirk をめぐる検索が最もトレンドとなりました。 年間を通じて、彼に関連する重大な事件・報道が世界中の関心を集めたことがうかがえます。
2位・3位には、それぞれ「Iran(イラン)」「US Government Shutdown(アメリカ連邦政府の一部閉鎖)」が入っており、 地政学的な緊張や国内政治をめぐる不確実性が検索行動にも強く反映されました。
マーケターとしては、
- 政治的・社会的テーマがユーザーの感情や興味を左右する場面が増えている
- ブランドコミュニケーションにおいて、こうしたセンシティブな話題をどう扱うか
を慎重に検討する必要がある一年だったといえます。
食:甘辛ブームを象徴する「ホットハニー」がトップ
フード/レシピカテゴリでは、はちみつと唐辛子を組み合わせた調味料「hot honey(ホットハニー)」がトップに。
2位・3位には「Marry Me Chicken(マリーミーチキン)」「Chimichurri(チミチュリソース)」が入り、 家庭料理のアレンジや、簡単に“映える一皿”を作れるレシピが引き続き人気であることがわかります。
食関連ブランドやECにとっては、
- 特定の味付けトレンド(甘辛、スパイシーなど)に合わせた商品開発・レシピ提案
- 「SNS映え」と「簡単さ」を両立したコンテンツ設計
が引き続き有効なアプローチとなるでしょう。
映画と俳優:『Anora』とMikey Madisonが躍進
映画カテゴリでは、インディペンデント作品として高い評価を受けた「Anora」がトップトレンドに。続いて「Superman」「Minecraft Movie」がランクインし、 大作IPとインディー作品が同時に注目される構図となりました。
俳優カテゴリでも、「Anora」の主演である Mikey Madison がトップトレンドを獲得。 2位はマーベル映画『Thunderbolts』に出演した Lewis Pullman、 3位は新作『Superman』に出演した Isabela Merced と、 作品との連動で俳優への注目が高まっていることが見て取れます。
映画・ドラマとのタイアップやエンタメ文脈でのプロモーションを考える際には、 こうした「作品と俳優のセットで検索される」構造を意識すると、 キーワード設計やコンテンツ企画が行いやすくなります。
スポーツ:国際大会とクラブチームが検索を牽引
スポーツカテゴリでは、「FIFA Club World Cup(クラブW杯)」がトップ、 次いで「Asia Cup(アジアカップ)」「ICC Champions Trophy(クリケットのトーナメント)」がランクイン。
チームでは、フランスの「Paris Saint-Germain(パリ・サンジェルマン)」が最もトレンドとなり、 2位にポルトガルの「S.L. Benfica」、3位に野球チーム「Toronto Blue Jays」が続きました。
グローバル市場を見据えたブランドにとっては、
- 国際大会・クラブチームを軸にしたキャンペーンやコラボレーション
- スポーツ観戦とデジタル体験(配信・SNS・コミュニティ)を組み合わせたファンマーケティング
が依然として重要なテーマであることが確認できます。
ポッドキャストと書籍:インフルエンサーと小説作品が強い
ポッドキャストでは、「The Charlie Kirk Show」がトレンド1位となり、 NFL選手の兄弟がホストを務める「New Heights」が続き、 さらに「This Is Gavin Newsom」と、政治・スポーツ・エンタメが混ざり合ったランキングになりました。
書籍では、Colleen Hoover の小説『Regretting You』がトップ、 Rebecca Yarros の『Onyx Storm』、Navessa Allen の『Lights Out』が続き、 フィクション作品への関心が依然として高いことがうかがえます。
コンテンツマーケティングやブランドジャーナリズムを展開する企業にとっては、
- 「インフルエンサー × ポッドキャスト」というフォーマット
- 物語性のあるコンテンツ(小説・ドラマ)的なストーリーテリング
が、引き続きユーザーとのエンゲージメントを高める有力な手段であると言えます。
Gemini首位から見える、検索・情報行動の構造変化
ここまでのランキングを俯瞰すると、 「AIチャットボット」「スポーツ」「エンタメ」「政治・国際情勢」「食」という複数のテーマが混在しているように見えます。
しかし、その中でトップに立ったのが「Gemini」であったことは、 検索・情報行動の構造変化を象徴しています。
“検索する相手”としてのAIへの期待
従来の検索は、「ブラウザを開き、検索窓にキーワードを入力する」行為でした。 ところが、Geminiのようなチャットボットが普及すると、
- ブラウザを開く前に、AIアシスタントに質問する
- 複数の検索結果を読む代わりに、AIの要約や提案を参考にする
- 検索キーワードではなく、「相談文」に近い文章を投げかける
というスタイルが一般化していきます。
2025年のトレンド1位がGeminiだったという事実は、 多くのユーザーが「AIにどう質問すればいいのか」「どのように使いこなせるのか」を模索し始めた年だった、と読み替えることもできるでしょう。
検索エンジンから“アンサーエンジン”へのシフト
Geminiは単なる検索窓の置き換えではなく、「自分専属のアンサーエンジン」という役割を担いつつあります。
その結果、企業やブランドが向き合うべき“インターフェース”も変わります。
- 従来:検索結果ページ(SERP)で、検索キーワードに対するコンテンツを最適化する
- これから:AIアシスタントがユーザーに回答する際の「情報源」として、自社コンテンツをどう認識させるかを考える
つまり、SEOの対象が「検索エンジン」から「アンサーエンジン」へと広がっていくイメージです。
デジタルマーケティング担当者への実務的な示唆
ここからは、Year in Search 2025とGeminiのトレンド首位という事実を踏まえ、 デジタルマーケティング担当者が意識しておきたいポイントを整理します。
「AI経由の検索トラフィック」を前提にコンテンツを設計する
すでに多くのユーザーが、Google検索とAIチャットボットを併用しています。 今後は、
- AIの回答の中に、自社ブランドやサービスがどのような文脈で登場するか
- AIが引き合いに出しやすい形で、情報を構造化して提供しているか
が、従来のSEOに加えて重要になります。
たとえば、
- FAQ形式・How-to形式のコンテンツを充実させる
- 価格・機能・導入事例などの基本情報をわかりやすく、更新頻度高く保つ
- 業界キーワードと自社独自キーワード(ブランド名・プロダクト名)をセットで説明する
など、「AIがユーザーの質問に答えるときに引用しやすい情報構造」を意識したコンテンツ設計が求められます。
AIそのものを「マーケティングチャネル」として捉える
Geminiや他のAIチャットボットがトップトレンドに入ったことは、 AIそのものがユーザーとのタッチポイントになっていることを意味します。
企業側も、
- 自社サイト内にAIチャットボットを設置し、カスタマーサポートや商品案内を行う
- 社外のAIプラットフォームに、自社データを連携して「公式な情報源」として登録する
- AIを使ったキャンペーン(AI診断コンテンツ、AIとの対話を前提とした施策など)を企画する
といった形で、AIを「検索の延長」ではなく「独立したチャネル」として扱う視点が重要になります。
トレンドデータを“感情”とセットで読み解く
Year in Searchは、単なるランキング表として眺めるだけではもったいないデータです。
マーケターは、
- そのキーワードが「どのような感情」と結びついているか
- 「不安」「期待」「楽しさ」「不満」など、どの感情を強く喚起しているか
を考えながら見ることで、コミュニケーションの方向性を描きやすくなります。
例えば、
- GeminiやDeepSeek:新しいテクノロジーへの期待と、「ついていけるだろうか」という不安
- ニューストピック:政治・国際情勢への不安や怒り
- ホットハニーやレシピ:日常の楽しみ・プチご褒美・家族や友人との時間
- 映画やスポーツ:熱狂・共感・コミュニティ意識
など、キーワードの裏側にある感情を読み解くことで、広告メッセージやコンテンツのトーン&マナーを調整しやすくなります。
グローバルとローカルのバランスを意識する
今回TechCrunchが取り上げたランキングは、世界全体のトレンドを扱っています。
実際には、Google TrendsのYear in Searchページから、各国ごとのランキングを確認することも可能です。
グローバルなトレンドは「世界全体の空気感」を把握するために有効ですが、 実際のマーケティング施策では、
- 自社が展開している国・地域ごとのトレンド
- 自社の顧客セグメントごとの興味・関心
と組み合わせて考えることが重要です。
その意味で、Year in Searchは「グローバルな地図」であり、 そこから自社の「ローカルな地図」を描き起こしていくイメージで活用するとよいでしょう。
今からできるアクションの例
最後に、デジタルマーケティング担当者がすぐに取り組めるアクションの例を、いくつか挙げておきます。
自社ドメインの「Year in Search」を作ってみる
GoogleのYear in Searchと同様に、
- 自社サイト内検索のログ
- 自社メディア記事の閲覧データ
- 問い合わせ・チャットボットの質問ログ
などをもとに、「今年もっとも伸びたキーワード」「今年よく聞かれた質問ランキング」を作成してみるのは有効です。
それを社内共有するだけでも、「自社にとっての2025年トレンド」が可視化され、 2026年以降のプロダクト戦略やコンテンツ戦略を議論する材料になります。
Geminiや他のAIチャットボットで自社ブランドを検索してみる
実際にGeminiや他のAIチャットボットに対して、
- 「◯◯というサービスについて教えて」
- 「◯◯の競合を教えて」
- 「◯◯の評判は?」
といった質問を投げてみると、「AIの目線から見た自社ブランド」が見えてきます。
その結果をもとに、
- 公式情報が十分に整っているか
- 第三者のレビュー・比較記事などが、どのような文脈で引用されているか
- 誤解や古い情報が残っていないか
をチェックし、必要に応じてコンテンツの整備や情報発信を行うとよいでしょう。
「AI×◯◯」のテーマで自社なりの価値提供を整理する
2025年のトップトレンドがGeminiだったという事実は、 しばらくの間「AI」が検索トピックの中心であり続けることを示しています。
その中で、
- 「AI×広告運用」「AI×EC」「AI×顧客対応」など、自社の事業領域にAIを掛け合わせたテーマ
- 既存サービスにAI機能を組み込む際の価値仮説と、ユーザーへの伝え方
を整理しておくことは、2026年以降の戦略にとっても重要な下準備になります。
まとめ:Gemini首位は“AI時代の生活者インサイト”を可視化するシグナル
本記事では、TechCrunchが報じた「Geminiが2025年のGoogle検索トレンド首位になった」というニュースと、 Year in Search 2025のカテゴリ別トレンドを手がかりに、 デジタルマーケティング担当者が押さえておきたいポイントを整理しました。
改めて、キーとなるポイントをまとめると、
- Year in Searchは「検索回数の多さ」ではなく、「前年からの伸び」をもとにトレンドを可視化する
- 2025年はAIチャットボット「Gemini」が世界のトップトレンドとなり、「AIにどう質問し、どう使いこなすか」が生活者の主要テーマになった
- ニュース、スポーツ、エンタメ、食など、複数カテゴリで多様なトピックがランクインし、「不安・期待・楽しみ」が交錯する一年だった
- マーケターは「検索エンジンだけでなくアンサーエンジンを前提にしたコンテンツ設計」「AIをチャネルとして扱う発想」が求められる
- 自社版Year in Searchや、AIチャットボットでのブランド確認など、今日からできるアクションも少なくない
2025年のトレンドをいち早く読み解き、2026年の戦略に活かすかどうかは、 競争環境の中でのポジショニングに直結します。
AI時代の検索行動は、もはや「キーワードを打ち込む」だけではありません。 「誰に」「どのように」質問するのか—— そのインターフェースの一つとしてGeminiがトップに踊り出た今、 企業と生活者のコミュニケーション設計も、大きな転換点を迎えています。
参考サイト
TechCrunch「Gemini was Google’s top trending search term in 2025」

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。

