Google検索の「AIモード」に、フライトやイベントの予約までつなぐ新機能が追加されました。 これにより、ユーザーは検索画面から旅行プランを組み立て、そのまま予約まで進められるようになりつつあります。 旅行・イベント・ローカルビジネスに関わるマーケターにとって、集客導線の設計を見直すタイミングと言えます。
2025年11月、Googleは検索の「AIモード」において、旅行計画と予約体験を大きく拡張しました。 キーワード検索ベースだったフライト・ホテル・イベント探しが、対話型のAI体験の中で完結に近づきつつあります。
新機能では、旅行プランをホワイトボードのように整理できる「Canvas」、柔軟な条件からお得な航空券を探せる「Flight Deals」、 さらにレストランやイベント、ビューティサロンなどの予約までサポートする「エージェント型」AIが連携します。
本記事では、これらのアップデートを踏まえながら、 旅行・イベント・ローカルビジネスのマーケターがどのように集客とコンバージョンの設計を見直せばよいかを、 実務目線で整理していきます。
- AIモードのフライト・イベント予約機能の全体像を理解する
- 旅行・イベント・ローカルサービスにおける具体的な活用シナリオを把握する
- 自社サイト/外部プラットフォームをどう整備すべきか、初期アクションを明確にする
まず、Google検索の「AIモード」がどのようなものかを整理しておきます。 AIモードは、従来の検索結果とは別タブで表示される、Geminiベースの会話型インターフェースです。 ユーザーは長文の質問や追加質問を続けながら、AIと対話するように情報を深掘りできます。
- 通常の検索結果とは別に、AIとのチャット画面が表示される
- テキスト・画像・音声などを組み合わせた複雑な質問にも対応
- 回答は、関連サイトや地図情報を引用しながら要約・提案される
今回のアップデートのポイント
今回のフライト・イベント予約機能の拡張は、大きく次の3つに整理できます。
- Canvas:AIモード内で旅行プランを組み立てるワークスペース 行き先・日程・目的を伝えると、フライト、ホテル、アクティビティがボード状に整理されます。
- Flight Deals:柔軟な条件で航空券のお得な組み合わせを検索 「冬に1週間、美味しい料理のある街へ」など、曖昧な希望から候補地とフライトをまとめて提示します。
- エージェント型予約:イベントやローカルサービスの予約をサポート レストラン、イベントチケット、美容・ウェルネス予約などについて、複数プラットフォームを横断して候補と空き状況を探します。
ユーザー視点では、 ➡️「情報収集」から「比較検討」「予約直前」までを、ひとつのAIセッションの中で進められるようになった、 と捉えるとイメージしやすいはずです。
- 「検索結果ページ」が、旅行・イベントの計画ツール+予約アシスタントに近づいている
- ユーザーの検討プロセスの一部が、AIモード内部で進むようになる
- 自社サイトへの流入だけでなく、AIモード内での「候補への載り方」を考える必要がある
では、これらの拡張はマーケターにとってどのような利点につながるのでしょうか。 ここでは、旅行・イベント・ローカルビジネスそれぞれの観点から整理します。
旅行領域:早い段階から「候補テーブル」に乗れる
AIモードのCanvasやFlight Dealsでは、ユーザーが行き先を決める前の段階から、 条件に合う都市・ホテル・アクティビティがセットで提案されます。
- 「どこに行こうかまだ決めていない」段階のユーザーにリーチしやすくなる
- 航空会社・OTA・ホテル・現地ツアーが、同じボード上で比較される
- ブランド名だけでなく、価格・レビュー・体験内容などが並べて評価される
イベント領域:チケット販売プラットフォーム経由の露出強化
イベントやライブ、スポーツ観戦などは、AIモードがチケット販売プラットフォームと連携して候補を提示します。 TicketmasterやStubHubなどのパートナー経由での掲載情報が重要な入り口になります。
- 「この週末、家族で行けるイベント」などの曖昧な検索に対しても候補に上がる
- 座席・価格帯・会場位置など、比較軸が整理された形で表示される
- 公式サイトだけに依存しない販売経路の強化につながる
ローカルサービス:予約導線をシンプルにできる
美容院、エステ、ネイルサロンなどのローカルサービスは、 BooksyやFreshaなどの予約サービスと連携することで、AIモードからの予約候補として提示されます。
- 営業時間や空き枠が、他店舗と並列で比較される
- 「職場の近く」「自宅から30分以内」などの条件にも対応しやすい
- 新規客が地域単位で探したときの接点として期待できる
AIモードは、「どのサイトにアクセスするか」を選ぶ前に、 候補となる選択肢をAIがいったん整理してくれる場になっています。 このテーブルに自社のプランやイベントを並べてもらえるかが、新しい競争の起点です。
ここからは、より具体的な活用シナリオを、業種別にスケッチしてみます。
旅行会社・OTA向け:AIモードを「新しい送客チャネル」として捉える
典型的なユーザーシナリオは次のような流れです。
- ユーザー:「夏休みに家族3人で、2泊3日で海外ビーチに行きたい。ほどほどの価格で、子ども向けのアクティビティがある場所」
- AIモード:条件に合う都市、フライト、ホテル、現地ツアーをCanvas上に整理
- 各候補の横に、価格帯・レビュー・立地・体験の特徴がメモのように並ぶ
このとき、自社が扱う商品が候補として表示されるかどうかは、
- 提携している予約プラットフォーム上の情報が整理されているか
- ホテル・ツアー詳細のテキストと構造化データが十分か
- 地図・レビューなど外部情報との整合が取れているか
といった要素に影響されます。 SEOだけでなく、「AIに読み取られやすい商品カタログ」としての整備が重要になります。
航空会社・LCC向け:柔軟な検索条件に対応できる料金・路線設計
Flight Dealsは、特定の行き先を指定せずに「この予算でどこかへ行きたい」といった検索にも対応します。
- 特定路線に偏らない、エリア単位・テーマ単位のプロモーション
- 期間・曜日・出発時間など、柔軟な条件を変数として扱う料金設計
- 「家族向け」「ワーケーション向け」など、目的に応じた付帯サービスの整理
こうした情報を、検索結果や予約サイトの説明文・構造化データにわかりやすく反映することで、 AIモードが候補として認識しやすくなります。
イベント主催者向け:チケットプラットフォームとの連携を強化する
イベントやコンサートの場合、AIモードはTicketmasterやSeatGeekなど、 既存のチケット販売プラットフォームから候補を取得します。
- チケット販売プラットフォーム側のイベントページ情報を最新に保つ
- タイトル・会場・時間・出演者・ジャンルなどを明確に記載する
- 重要キーワード(地域名・音楽ジャンル・対象層など)を自然な形で含める
- 公式サイトと情報が食い違わないように整合性を確認する
これにより、「この週末に行ける親子向けイベント」などの対話型検索に対して、 AIモードが自社イベントを候補に含めやすくなります。
ローカルビジネス向け:予約パートナーの選定と情報整理
美容室やサロンの場合、AIモードは予約プラットフォーム上の情報を基に候補を提示します。
- どの予約プラットフォームと連携しているか(例:OpenTable系、Booksy系など)
- 店舗情報(場所・設備・価格帯・強み)の記載が整理されているか
- 口コミの内容と評価が安定しているか
AIモードのエージェントは、「駅から徒歩5分以内」「明日18時以降の空き」など、 条件に合う候補を一気に探します。 その検索条件にきちんとマッチするよう、カテゴリ設定や住所表記、営業時間の登録を丁寧に整えることが重要です。
ここでは、「AIモードのフライト・イベント予約機能に備える」ための、具体的な導入ステップを整理します。
ステップA:自社の露出ポイントを棚卸しする
まず、「ユーザーの旅行・イベント検討プロセスのどこに自社が関わっているか」を図にしてみましょう。
- 自社サイト(ランディングページ、カタログページ)
- 外部予約サイト・旅行プラットフォーム・チケット販売サイト
- 地図・レビューサービス(Googleマップなど)
- SNSやメディア記事からの導線
AIモードは、これら複数の情報源を組み合わせて回答を生成します。 どの情報源が弱いかを把握することが、最初の一歩です。
ステップB:構造化データとテキスト情報を整備する
AIモードは、検索結果に付随する構造化データを手掛かりに、 イベント日程・場所・価格・在庫などを理解しやすくなります。
- イベントページ:日付・開場時間・会場・出演者・カテゴリを明記
- 旅行商品ページ:出発地・到着地・期間・含まれるサービスを整理
- ローカルサービス:住所・営業時間・メニュー・所要時間を明確に
そのうえで、マークアップ仕様に沿った構造化データ(schema.orgなど)を可能な範囲で実装しておくと、 AIモードにとって理解しやすいコンテンツになります。
ステップC:予約パートナーとの連携を戦略的に選ぶ
AIモードのエージェントは、主に予約プラットフォームやパートナーサイトを経由して、実際の予約画面につなぎます。
- 自社のターゲットに強い予約プラットフォームはどこか
- プラットフォーム側のブランドページ/店舗ページが整っているか
- レビューや写真が最新で、内容が魅力的に見えるか
- 複数プラットフォームに分散しすぎていないか(運用負荷とのバランス)
ステップD:計測とレポートの設計を見直す
AIモード経由のコンバージョンは、従来の検索広告や自然検索とは異なる経路をたどります。 たとえば、
- AIモード → 外部予約サイト → 自社に送客(バウチャーやチェックイン時など)
- AIモード → チケットプラットフォーム → 当日来場(会場での接点)
といったように、自社サイトを経由しないケースも増えることが想定されます。 そのため、
- 予約プラットフォームから共有されるレポート項目の確認
- キャンペーン別のトラッキングパラメータ(URLパラメータ)の設計
- オフラインでの来場・利用データとの突き合わせ
といった観点で、レポート設計をアップデートしておくことが有効です。
すでに多くの専門メディアは、「AIモードが将来的にGoogleの標準的なインターフェースになる可能性」を指摘しています。フライトやイベント予約機能の拡張は、その流れの中で「日常の実務にAIモードを組み込む」試みと言えます。
キーワードから「相談内容」へのシフト
検索クエリは、「東京 大阪 新幹線 安い」といった単語の羅列から、 「週末に家族で東京から大阪に行きたい。子どもが喜ぶ観光地があるルートで、なるべく移動時間を短くしたい」のような、 相談ベースの文章へとシフトしていきます。
- コンテンツや商品説明も、「どんな相談に答えるか」の軸で設計する
- 体験価値(誰と・どんな目的で・どんな気分で楽しめるか)を言語化する
- テキストだけでなく写真や動画も合わせて、AIに伝わりやすい形を意識する
「AIに選ばれる情報設計」が新しい競争軸に
これからのマーケターは、「ユーザーに見せたい情報」と同じくらい、 「AIに理解してほしい情報」を意識した情報設計が求められます。
- 構造化データやカタログ情報を、マシンが読んでも分かりやすい形に整理する
- レビューやUGCを含め、体験の特徴が一貫したストーリーとして伝わるようにする
- AIモードでどのように自社が紹介されるかを定期的にチェックし、改善する
フライトやイベント予約機能の拡張は、AIモードが「調べる場所」から「動き出す場所」に変わりつつあるサインです。 いまから準備を進めておくことで、将来の大きなインターフェースシフトにも対応しやすくなります。
最後に、マーケターとして「まずはここから着手したい」ポイントを3つに整理します。
- 露出ポイントの棚卸し 自社サイト・外部予約サイト・チケット販売・地図・レビューなど、AIモードが参照しそうな情報源を洗い出す。
- 情報設計のアップデート 商品・イベント・店舗情報のテキストと構造化データを整理し、「AIが理解しやすいカタログ」を目指す。
- 予約プラットフォームとの連携強化 ターゲットに強い予約サービスを選び、ページ内容・レビュー・写真を整えてAIモードに候補として拾われやすくする。
フライトやイベント予約機能の拡張は、AIモードが本格的に「行動のハブ」として進化していることを示しています。 いまのうちから、AIモードを前提にした集客設計へ少しずつシフトしていくことで、 旅行・イベント・ローカルサービスのいずれにおいても、新しい成長の余地を見つけやすくなるはずです。
AIモードはGoogle側の機能であり、サイト側からインストールするものではありません。 マーケターとしては、AIモードが参照する検索結果・予約プラットフォーム・地図情報などを整備することで、 AIモード内での見え方を改善していくことが主なアクションになります。
直接のフライト・イベント予約機能は、旅行・イベント・ローカルサービスが中心ですが、 「AIモードが日常の意思決定をサポートする」という流れは、他業種にも広がっていくと考えられます。 たとえば、BtoBイベントやセミナー、店舗を持つ小売業なども、今後AIモードとの接点が増える可能性があります。
AIモードは、必ずしも大手ブランドだけを優先するわけではなく、 条件に合うプランや店舗を広く候補に含めようとします。 そのため、地域密着型のイベントやローカルサービスでも、情報を丁寧に整備しておけば、 新しい流入経路としての効果が期待できます。
現時点では、AIモードと検索広告の関係は発展途上の領域です。 ただし、AIモードが旅行やイベントの検討プロセスを支えるようになるほど、 上流での認知や興味喚起と、下流での予約・来場をどうつなぐかが重要になります。 広告だけでなく、コンテンツ・レビュー・予約プラットフォームといった複数の接点を組み合わせた設計が有効です。
「Google検索の中に、旅行コンシェルジュやイベント案内役のようなAIがいて、 ユーザーと一緒にプランを組み立て、そのまま予約サイトへ案内してくれるイメージ」と説明すると、 非エンジニアのメンバーにも伝わりやすくなります。 そのうえで、自社がこの流れのどこに関われるかをホワイトボードに描き出すと、議論が進めやすくなります。

「IMデジタルマーケティングニュース」編集者として、最新のトレンドやテクニックを分かりやすく解説しています。業界の変化に対応し、読者の成功をサポートする記事をお届けしています。
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