マーケティングミキシングモデル(MMM)のメリットとデメリットとは?
はじめに
現代のビジネス環境において、マーケティング活動の効果を正確に把握し、限られた予算を最大限に有効活用することは、企業の成長に不可欠です。マーケティングミキシングモデル(MMM)は、この課題に対する有効な解決策として注目されています。MMMは、統計分析手法を用いて、様々なマーケティング活動が売上やKPIに及ぼす影響を定量化し、可視化するモデルです。
MMMとは
MMMは、過去の売上データやマーケティング活動のデータ、そして外部要因などを組み合わせて分析し、それぞれの要素が売上にどれだけの影響を与えたのかを明らかにする分析手法です。 この分析結果に基づいて、将来のマーケティング計画を最適化したり、予算配分を効率的に行ったりすることができます。
MMMは、従来の広告効果測定手法とは異なり、ユーザーレベルの行動追跡に依存しないため、近年注目されています。 特に、サードパーティCookieの利用規制が強化されている状況下では、プライバシー保護の観点からも有効な手段と言えるでしょう。
MMMでは、一般的に過去2~3年分の週次データを用いますが、日次や時間単位のデータを用いることで、よりリアルタイムに近い分析結果を得ることも可能です。
MMMのメリット
MMMを導入することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
- マーケティングROIの最大化: MMMは、各マーケティングチャネルの貢献度を定量的に評価することで、どのチャネルに投資を集中すべきかを明確にします。 これにより、限られた予算をより効果的に活用し、マーケティングROIの最大化を目指せます。
- マーケティング活動の全体像の把握: MMMは、テレビCM、デジタル広告、ソーシャルメディアなど、オンライン・オフラインを問わず、様々なマーケティングチャネルを網羅的に分析できます。 各チャネルの相互作用を考慮することで、より正確な効果測定と最適化が可能になります。
- 長期的なブランド効果の可視化: MMMは、短期的な売上への影響だけでなく、ブランド認知度や顧客ロイヤルティといった長期的な指標への影響も分析できます。 これにより、ブランド価値向上のための施策の効果を測定し、長期的な成長戦略に役立てることができます。
- 外部環境変化への対応力強化: MMMは、経済状況、季節変動、競合の活動など、マーケティング活動に影響を与える可能性のある外部要因を考慮することができます。 これらの要因をモデルに組み込むことで、より精度の高い予測が可能となり、外部環境の変化にも柔軟に対応できるマーケティング戦略を立案できます。
- データに基づいた意思決定の促進: MMMは、勘や経験に基づいた意思決定ではなく、客観的なデータに基づいた意思決定を促進します。 これにより、マーケティング部門内だけでなく、経営層に対しても説得力のある説明が可能となり、より戦略的なマーケティング投資を推進できます。
MMMのデメリット
MMMは強力な分析手法ですが、いくつかのデメリットも存在します。
- 高品質なデータの準備が必要: MMMの精度は、分析に使用するデータの質と量に大きく依存します。 正確な分析結果を得るためには、過去数年間分の網羅的なデータを収集し、クリーニング、統合する必要があり、多大な時間と労力がかかる場合があります。
- 専門知識と高度な分析スキル: MMMの実施には、統計学やモデリングに関する専門知識、そして分析ツールの操作スキルが必要です。 専門のデータサイエンティストや分析者を雇用するか、外部のコンサルティング会社に委託する必要がある場合もあり、導入コストが高額になる可能性があります。
- モデルの構築・運用・改善の継続的な effort: MMMは、一度モデルを構築すれば終わりではありません。 マーケティング環境やビジネスの変化に合わせて、定期的にモデルを見直し、データの更新、パラメータの調整、新たな変数の追加などを行う必要があります。 この維持・運用にも、一定のコストと時間が必要です。
- 複雑なモデルの解釈: MMMで構築されるモデルは複雑になる場合があり、分析結果の解釈には、専門的な知識や経験が必要です。 結果をマーケティング施策に落とし込むためには、分析結果を分かりやすく可視化し、関係者に説明するスキルも求められます。
MMMの導入が適している企業
MMMは、全ての企業にとって万能な解決策ではありません。特に、以下のような企業は、MMMの導入効果が高いと考えられます。
- 成熟した市場で、十分な過去のデータを持つ企業: MMMは過去のデータに基づいて分析を行うため、長期間にわたるデータが蓄積されている企業ほど、精度の高い分析結果を得られます。
- 複雑なマーケティングミックスを持つ企業: 多様なマーケティングチャネルを組み合わせている企業にとって、MMMは各チャネルの効果を分析し、最適なミックスを導き出すための強力なツールとなります。
- 高額なマーケティング支出を行っている企業: マーケティング予算が大きいほど、MMMによるROI改善効果も大きくなる可能性があります。 MMMを導入することで、無駄な支出を抑え、より効果的な投資配分を実現できます。
MMMの将来展望
テクノロジーの進化は、MMMの可能性をさらに広げています。特に、AIや機械学習の進化は、MMMの自動化、高速化、高精度化に貢献しています。
- AIと機械学習の活用: 大規模なデータセットを高速かつ効率的に処理できるAIや機械学習は、MMMの分析プロセスを自動化するだけでなく、より高度なモデル構築や予測精度向上に役立ちます。
- リアルタイムMMMの台頭: 従来のMMMは、過去のデータに基づいて分析を行うため、リアルタイムでの意思決定には不向きでした。しかし、リアルタイムデータ分析技術の発展により、MMMをリアルタイムマーケティングに活用する動きも出てきています。
- 新たな指標への応用: 従来、MMMは主に売上やコンバージョンといった直接的な指標の分析に用いられてきました。しかし、近年では、ブランド認知度や顧客満足度といった間接的な指標への影響を分析する取り組みも進んでいます。
結論
MMMは、マーケティング活動の効果を最大限に高め、ROIを向上させるための強力なツールです。導入には、データの準備、専門知識、費用などの課題もありますが、テクノロジーの進化により、MMMはより身近で効果的なものになりつつあります。
企業は、自社の状況や課題に合わせて、MMMの導入を検討していくことが重要と言えるでしょう。
株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
インティメート・マージャーでアドテクノロジーの事業領域で収集したオルタナティブデータを他の事業領域でも活用していく取り組みにトライしています。
この記事の中ではオルタナティブデータのセールステック領域での活用(インテントデータ)、小売領域での活用(リテールデータ)、金融領域での活用(クレジットスコア)、リサーチ用のデータ(インサイトデータ)などでの活用事例や海外での事例をご紹介させていただいています。
もしも、アライアンス・データ連携などに興味がある方はお気軽にメール下さい。