ハイブリッドCookie時代とは?
インターネット広告は、ユーザーの行動履歴に基づいたパーソナライズ化が進み、企業はより効果的なマーケティング活動を行うことが可能になりました。このパーソナライズ化の中心的な役割を担ってきたのがCookieです。しかし近年、ユーザーのプライバシー保護の観点から、Cookieの利用を制限する動きが世界的に加速しています。
従来型のCookieである3rd Party Cookieが制限される一方で、ユーザーのプライバシーに配慮した新たな技術も登場しています。これらの技術が共存する時代、それが「ハイブリッドCookie時代」です。
なぜCookie規制は起こったのか?
Cookie規制の背景には、ユーザーのプライバシー意識の向上と、それを受けて制定された法規制の強化があります。
- 個人情報保護の観点から、ユーザーは自らの情報がどのように収集・利用されているかについて、高い関心を持つようになりました。個人情報の重要性に対する意識が高まっていることが、Cookie規制の大きな要因となっています。
- EUのGDPR(一般データ保護規則)を皮切りに、改正個人情報保護法、電気通信事業法の改正など、Cookie利用を制限する法規制が世界的に強化されています。日本でも、企業は個人情報保護法への準拠が求められており、Cookieの利用についても適切な対応が求められます。
3rd Party Cookieとは?そのマーケティング手法
3rd Party Cookieとは、ユーザーがアクセスしたWebサイトとは異なるドメインによって設定されるCookieです。 広告配信やアクセス解析などに広く利用されてきました。
例えば、ユーザーがサイトAを訪問した際に、サイトAとは異なるドメインを持つ広告会社が設定するCookieが、3rd Party Cookieです。
3rd Party Cookieを用いることで、以下のようなマーケティング手法が可能になります。
- 行動ターゲティング広告: 複数のWebサイトでユーザーの行動履歴を蓄積し、興味関心に基づいた広告を配信します。例えば、旅行サイトで航空券を検索したユーザーに対して、旅行予約サイトや航空会社の広告を表示するといったことが可能です。
- リターゲティング広告: 過去に自社のWebサイトを訪問したユーザーに対して、再度広告を表示する手法です。商品に興味を持っている可能性の高いユーザーに対して、再訪や購入を促すことができます。
- サイト横断分析: ユーザーが複数のWebサイトをどのように回遊しているかを分析することができます。これにより、ユーザーの興味関心や購買行動のプロセスを把握し、マーケティング戦略に活用することができます。
3rd Party Cookie規制の影響
Googleは、WebブラウザであるChromeにおける3rd Party Cookieのサポートを2024年に終了することを発表していました。 3rd Party Cookieが使えなくなると、以下のような影響が予想されます。
- 正確な広告効果の把握が困難に: 広告接触後のコンバージョン計測が難しくなり、広告効果の正確な把握が困難になります。
- 広告配信の効率低下: ユーザーの興味関心に基づいたターゲティング広告の精度が低下し、広告配信の効率が低下します。
- リターゲティング広告の制限: Webサイトを横断したユーザーの行動履歴を追跡することが困難となるため、リターゲティング広告の配信が制限されます。
すでにSafariやEdgeなどのブラウザでは、3rd Party Cookieの利用が制限されています。 今後、3rd Party Cookieに依存したマーケティング手法は、その効果を大きく減退させる可能性があります。
ハイブリッドCookie時代のソリューション
ハイブリッドCookie時代においては、Cookieに依存しない、新しいマーケティング手法が求められます。
1. 1st Partyデータの活用
企業が自社のWebサイトやアプリで直接取得したユーザーデータである1st Partyデータの活用が重要になります。 具体的には、会員登録情報や購買履歴、Webサイト上の行動履歴などを活用し、ユーザーのセグメント化やパーソナライズ化を進めることができます。
- 同意取得の徹底: 1st Partyデータを活用する際には、ユーザーに対してCookieの利用目的を明確に伝え、同意を得ることが不可欠です。 プライバシーポリシーやCookieポリシーを整備し、ユーザーにわかりやすく情報提供を行う必要があります。
- データ連携基盤の整備: Webサイト、アプリ、MAツール、CRMツールなど、様々なシステムに散在する1st Partyデータを統合的に管理・分析できる基盤の整備が求められます。
2. コンテキストマッチ広告
表示中のWebページの内容に関連性の高い広告を配信するコンテキストマッチ広告は、Cookie規制の影響を受けにくい手法として注目されています。 ユーザーの行動履歴に依存しないため、プライバシー保護の観点からも有効です。
3. 共通IDソリューション
複数のWebサイトやアプリを横断してユーザーを識別できる共通IDソリューションの活用も進んでいます。
- IM-UID (Intimate Merger – Universal Identifier): 株式会社インティメート・マージャーが提供する、独自の共通IDソリューションです。 インターネット行動や属性データなどを元に、ユーザーを識別します。 国内最大規模の10億のオーディエンスデータを保有しており、多くの企業に導入されています。
- Unified ID 2.0: The Trade Desk社が主導する共通IDです。ユーザーがメールアドレスなどの情報提供に同意することで、より精度の高いターゲティングを実現します。
- LiveRamp: オフラインデータとオンラインデータを統合するデータ連携プラットフォームです。ユーザーの同意に基づき、オフラインデータとオンラインデータを紐づけることで、より精度の高いターゲティング広告を実現します。
4. コンバージョンAPI
広告プラットフォームが提供するコンバージョンAPIを活用することで、Cookieに頼らないコンバージョン計測が可能になります。 サーバー間で直接データ連携を行うため、Cookie規制の影響を受けません。
5. ポストCookieに対応した広告配信プラットフォームの活用
すでに多くの広告配信プラットフォームがポストCookieに対応したソリューションを提供しています。 これらのプラットフォームを活用することで、Cookie規制に対応しながら、効果的な広告配信を行うことができます。
まとめ
ハイブリッドCookie時代においても、ユーザーのプライバシーに配慮しながら、効果的なマーケティング活動を行うためには、これらの新しい技術や手法を積極的に活用していくことが重要です。
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株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
インティメート・マージャーでアドテクノロジーの事業領域で収集したオルタナティブデータを他の事業領域でも活用していく取り組みにトライしています。
この記事の中ではオルタナティブデータのセールステック領域での活用(インテントデータ)、小売領域での活用(リテールデータ)、金融領域での活用(クレジットスコア)、リサーチ用のデータ(インサイトデータ)などでの活用事例や海外での事例をご紹介させていただいています。
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