実店舗(In-Store)におけるリテールメディアの現状と将来展望
近年、デジタル広告市場においてリテールメディアが注目を集めています。特に、実店舗におけるリテールメディアは、EC化が進む一方で、依然として多くの消費者が商品を購入する場である実店舗をメディア化することで、新たな収益源を創出し、顧客エンゲージメントを高める可能性を秘めています。本稿では、実店舗におけるリテールメディアの現状と将来展望について考察します。
実店舗におけるリテールメディアの現状
従来、実店舗における広告といえば、チラシやポスター、店内放送などが主流でした。しかし、デジタル技術の進化に伴い、デジタルサイネージ、インタラクティブキオスク、ビーコン、センサーなどを活用した、より効果的かつパーソナライズ化された広告展開が可能になっています。
実店舗におけるリテールメディアの例
●デジタルサイネージ: 店頭のディスプレイや、通路の棚などに設置されたデジタルサイネージに、商品広告やプロモーション情報を表示します。顧客の属性や購買履歴に基づいたターゲティング広告の配信も可能です。
●インタラクティブキオスク: 顧客が商品情報や在庫状況などを検索できるインタラクティブキオスクに広告掲載が可能です。顧客の行動データを取得することで、広告効果の測定も期待できます。
●スマートフォンアプリとの連携: ビーコンやGPSなどの位置情報技術を活用し、顧客のスマートフォンアプリに、来店時や特定の売り場にいる際に、クーポンやおすすめ商品情報を配信します。
●センサーデータの活用: 店内カメラやセンサーによって、顧客の動線や商品棚の前での滞在時間などの行動データを収集し、分析することで、顧客の興味関心に基づいた広告配信や商品陳列の最適化などが可能になります。
実店舗におけるリテールメディアのメリット
実店舗におけるリテールメディアは、小売業者、ブランド企業、そして消費者のそれぞれに多くのメリットをもたらします。
小売業者にとってのメリット
●新たな収益源の創出: これまで費用対効果が不明瞭だった実店舗の広告スペースを収益化することができます。
●顧客エンゲージメントの向上: デジタル技術を活用した魅力的な広告展開により、顧客の来店動機を高め、購買意欲の促進を期待できます。
●店舗運営の効率化: 顧客の行動データに基づいた、商品陳列や在庫管理の最適化、スタッフの配置などが可能になります。
ブランド企業にとってのメリット
●購買意欲の高い顧客へのリーチ: 商品の購入場所である実店舗で、購買意欲の高い顧客に、ピンポイントに広告を配信することができます。
●オフラインデータの取得: これまで取得が困難だった、実店舗における顧客の行動データを収集、分析することで、顧客理解を深め、より効果的なマーケティング戦略の立案につなげることができます。
●オムニチャネル戦略の強化: オンライン広告と連携させることで、オンラインとオフラインを横断した、シームレスな顧客体験を提供し、ブランドロイヤルティの向上を図ることができます。
消費者にとってのメリット
●パーソナライズ化された情報提供: 自分の興味関心に基づいた、タイムリーな情報を受け取ることができ、より快適で便利な購買体験が可能になります。
●魅力的な購買体験: デジタル技術を活用したインタラクティブな広告や、エンターテイメント性の高いコンテンツは、顧客の購買体験を豊かにします。
実店舗におけるリテールメディアの将来展望
実店舗におけるリテールメディアは、今後ますますの発展が期待される分野です。
リテールメディア3.0
リテールメディアは、「リテールメディア3.0」と呼ばれる新たな段階へと進化しつつあります。リテールメディア3.0では、オンラインとオフラインの垣根を越えた、データ連携、顧客体験の統合、より高度な測定技術などが求められます。
●データ連携の強化: オンラインとオフラインの購買データを統合し、顧客の行動を包括的に分析することで、より精度の高いターゲティング広告やパーソナライズ化されたおすすめ商品の提供が可能になります。
●オムニチャネル体験の創出: 実店舗とECサイト、スマートフォンアプリなどをシームレスにつなぐことで、顧客一人ひとりに最適化された、購買体験を提供します。例えば、実店舗で気になった商品の詳細を、スマートフォンアプリで確認できる、といったサービスなどが考えられます。
●測定技術の高度化: これまで困難だった実店舗における広告効果測定を、AIやセンサー技術などを活用することで、より正確に測定し、広告効果の可視化を進めることが求められます。
課題と展望
実店舗におけるリテールメディアは、大きな可能性を秘めている一方で、いくつかの課題も抱えています。
●プライバシーの保護: 顧客の行動データの取得と活用には、個人情報保護の観点から、十分な配慮が必要です。
●測定の標準化: リテールメディアの効果測定の指標や方法は、まだ標準化されていません。業界全体で統一的な指標を策定することで、広告効果の比較や評価が容易になり、リテールメディア市場のさらなる発展につながります。
●技術の進化への対応: AIやセンサー技術など、日々進化するデジタル技術を、タイムリーに導入していくことが重要になります。
これらの課題を克服することで、実店舗におけるリテールメディアは、小売業者、ブランド企業、そして消費者にとって、より良いものへと進化していくでしょう。
株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
インティメート・マージャーでアドテクノロジーの事業領域で収集したオルタナティブデータを他の事業領域でも活用していく取り組みにトライしています。
この記事の中ではオルタナティブデータのセールステック領域での活用(インテントデータ)、小売領域での活用(リテールデータ)、金融領域での活用(クレジットスコア)、リサーチ用のデータ(インサイトデータ)などでの活用事例や海外での事例をご紹介させていただいています。
もしも、アライアンス・データ連携などに興味がある方はお気軽にメール下さい。