Googleによる新たなプロトコールソリューション
Googleは2022年10月11日に新たなソリューション、PAIR(Publisher Advertiser Identity Reconciliation)を発表しました。これは、広告主とパブリッシャーが両者のファーストパーティデータを安全に照合するためのプロトコルで、GoogleのDSPであるディスプレイ&ビデオ360(以下、DV360)で活用可能です。具体的には、広告主が取得した顧客のファーストパーティデータ、つまり電子メールアドレスを暗号化し、それをパブリッシャーのファーストパーティデータと照合します。個人をウェブ上で追跡することを避けるとともに、プライバシーを尊重した已下、関連性の高い広告が表示され、広告パフォーマンスの向上とマーケティング目標の達成を支援します。データは3種類のキーで3回暗号化され、データ漏えいから保護されます。
PAIRの特徴と課題
PAIRの特徴的な点は、ファーストパーティデータの所有権や管理権を広告主やパブリッシャーが持ち続ける点です。そうした保証が、データの安全性を確保する上で重要となります。しかし、成功を収めるためには広告主やパブリッシャーのファーストパーティデータの質と量や、彼らがPAIRの仕組みへの参入を決定するかどうかが重要なファクターとなります。また、新規顧客を獲得するための施策ではないため、必然的にボリューム感は大きくなりづらい点も課題とされています。
暗号化とデータの管理
ファーストパーティデータの利用のために、広告主やパブリッシャーはデータクリーンルームを活用します。データクリーンルームは、安全にデータを共有し、暗号化されたデータだけがDV360に共有されます。さらに、データクリーンルームがデータのアップロードと暗号化を手掛けるため、広告主やパブリッシャーが個別にこれらを処理する必要はありません。Habu、InfoSum、そしてLiveRampの3社がPAIRの初期のパートナーとして提携を開始し、2023年半ばに利用開始予定です。
今後の見通し
PAIRが提唱されるに至った背景には、広告主やパブリッシャーの間でファーストパーティデータの重要性が高まっていることが挙げられます。GoogleがサードパーティCookieを2024年後半から段階的に廃止する予定になっているため、広告主およびパブリッシャーは個々の顧客との接触ポイントとそのデータを整理し、それをどのように活用していくかを模索しながら前進する必要があると言えます。PAIRの登場はその一例であり、その概念自体がその動きを証明しています。