IM-UIDでオフラインCV自動連携:Cookieレス時代の精度を保つ測定テクニック

Cookie規制・プライバシー関連
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3rd Party Cookie廃止後も効果的なマーケティング測定を実現するIM-UIDを活用したオフラインコンバージョンの自動連携について解説します。実装のポイントから運用ノウハウまで、次世代マーケティングに備えましょう。

IM-UIDとオフラインCVの基礎知識

デジタルマーケティングの世界では、2024年夏から始まった3rd Party Cookieの規制により、広告配信や効果測定の方法が大きく変わりつつあります。そんな中、注目を集めているのが「IM-UID」というCookieに依存しない共通IDソリューションです。

IM-UIDとは、3rd Party Cookieを利用せずに異なるドメイン間で3rd Party Data(サードパーティデータ:自社以外の第三者が収集したデータ)を連携する、プライバシーに配慮した広告配信を提供する共通IDソリューションです。IPアドレスやWebサイトのアクセス情報などから統計的な推定処理を行い、ユーザーを識別します。

一方、オフラインCV(コンバージョン)とは、ウェブサイトから行う問い合わせや購入とは違い、実店舗での購入など、オフライン上でしか行えないビジネスとして重要な行動のことを指します。例えば、オンラインで商品を見たユーザーが実店舗に来店して購入するような場合、オンライン広告の効果をどう測定するかが課題となります。

これまでのオフラインCVの計測は、クリックID(Google広告ではGCLID、Yahoo!広告ではYCLID)を使って手動でデータをインポートするといった手間のかかる方法が中心でした。しかし、IM-UIDを活用することで、このプロセスを自動化し、特に3rd Party Cookieが制限されているiOSデバイスなどでも正確な効果測定が可能になるのです。

Cookieレス時代におけるIM-UIDの役割

Cookieレス時代におけるIM-UIDの役割は非常に重要です。現在、デジタルマーケティングは「ハイブリッドCookie時代」と呼ばれる移行期にあり、従来のサードパーティCookieが使用できるブラウザと、Cookieの使用に制限がかかるブラウザが混在しています。

この環境下において、IM-UIDは以下のような役割を果たします:

まず、iOS対応の強化が挙げられます。SafariやiOSデバイスでのCookie規制に対応し、これまでリーチが難しかったユーザー層へのアプローチを可能にします。実際に、IM-UIDを活用した結果、プロモーション全体のターゲティングボリュームが向上した事例があります。

また、プライバシー保護と広告効果の両立も重要な役割です。ユーザーの同意を得た上でデータを活用し、個人を特定しない形でターゲティングを行うため、プライバシーを守りながら効果的な広告配信が可能です。

さらに、クロスデバイス対応により、複数のデバイスを跨いだユーザー行動の把握が容易になり、一貫性のあるマーケティング施策を展開できます。

これらの特徴は、特にオフラインCVの測定において、3rd Party Cookieに依存せずにユーザーの行動を追跡できるため、オンラインからオフラインへの顧客の動きを正確に把握するのに役立ちます。

オフラインCVの自動連携の仕組み

オフラインCVの自動連携は、どのような仕組みで実現されるのでしょうか。従来のオフラインコンバージョンインポートでは、広告からウェブサイトへのアクセスに繋がったすべてのクリックに付与されるクリックIDを保存し、そのユーザーがオフラインでコンバージョンした際に、クリックIDとコンバージョン情報を手動で関連付けてインポートする必要がありました。

これに対し、IM-UIDを使ったオフラインCVの自動連携では、IM-UIDという共通の識別子を活用して、オンライン行動とオフラインコンバージョンを自動的に結びつけます。

具体的な仕組みとしては、まずIM-UIDがユーザーのブラウザやデバイスに対して発行されます。ユーザーがウェブサイトを訪問した際、このIM-UIDが記録され、同じユーザーがオフラインでコンバージョンした際(例えば店舗で購入した際)に、そのユーザー情報とIM-UIDが照合されます。

照合の方法としては、例えばユーザーがオンラインで入力した情報(メールアドレスや電話番号など)と店舗での購入時に入力した情報を照合する方法や、アプリのログイン情報と店舗での会員情報を照合する方法などがあります。これにより、オンラインでの広告接触からオフラインでのコンバージョンまでの一連の流れを自動的に追跡することが可能になります。

この自動連携の最大の利点は、3rd Party Cookieが利用できない環境(SafariやiOSなど)でも効果測定が可能になることと、手動でのデータインポート作業が不要になることにあります。これにより、よりリアルタイムかつ正確な効果測定が実現します。

IM-UIDを活用したオフラインCV連携の導入ステップ

IM-UIDを活用したオフラインCV連携を導入するためのステップを見ていきましょう。

Step 1: 導入準備と現状分析
まずは、現在のマーケティング環境を分析し、オフラインコンバージョンがどのように発生しているかを把握します。店舗での購入、電話での問い合わせ、イベント参加など、どのようなオフラインアクションを計測したいのかを明確にしましょう。

Step 2: IM-UIDの導入
ウェブサイトにIM-UIDを実装します。Prebid.jsのUser IDモジュールを利用する方法2など、サイトの構成に合わせた導入方法を選択します。導入に関する技術的な詳細は、提供元への問い合わせが必要です。

Step 3: データ収集の仕組み構築
オフラインでのコンバージョンデータを収集する仕組みを整えます。POSシステムや顧客管理システムとの連携が必要になることが多いでしょう。ここでは、オフラインデータとIM-UIDを紐づけるための共通のキー(メールアドレスや電話番号など)を設定します。

Step 4: データ連携の設定
IM-UIDと広告プラットフォームとの連携を設定します。例えば、Google広告の場合は、PPIDを使った連携が可能です。また、拡張コンバージョン機能などと併用することで、より精度の高い測定が可能になります。

Step 5: テストと検証
小規模なテストから始め、データの連携が正しく行われているかを検証します。オンラインでの広告クリックからオフラインでのコンバージョンまでの流れが正確に追跡できているかを確認しましょう。

Step 6: 本格運用と最適化
テスト結果に基づいて、必要な調整を行った上で本格運用を開始します。定期的にデータの品質をチェックし、連携の精度を向上させていくことが重要です。

導入にあたっては、プライバシーポリシーの更新も忘れずに行いましょう。ユーザーデータの収集と利用について透明性を確保することが、プライバシー保護の観点からも重要です。

導入による効果と成功事例

IM-UIDを活用したオフラインCV連携の導入により、どのような効果が期待できるのでしょうか。実際の成功事例と合わせて見ていきましょう。

効果①:iOSユーザーへのリーチ拡大と測定精度の向上
IM-UIDの最大の特徴は、3rd Party Cookieが制限されているiOSユーザーに対しても、効果的な広告配信と測定が可能になることです。フィットネスクラブの体験申込みの事例では、iOSへの配信でAndroidと比較して申込み単価が改善し、TOTAL配信金額と申込み件数が向上しました。

効果②:競合の少ないiOS配信面での効率改善
iOSは競合が少ないため、CPM(インプレッション単価)が低く、CVR(コンバージョン率)も高い傾向にあります。これにより、全体的なCPA(顧客獲得単価)の改善が見込めます。メディカルダイエットの事例では、iOSの申込み単価が改善したことにより、TOTAL申込み単価も改善し、目標達成につながりました。

効果③:クロスデバイスでのユーザー行動把握
IM-UIDを活用することで、PCでの閲覧、スマートフォンでの検索、そして実店舗での購入といった、デバイスを跨いだユーザー行動を一元的に把握することができます。アパレルブランドの事例では、クロスデバイスでのユーザー行動把握が可能になり、パーソナライズされたレコメンド精度が向上し、客単価が上昇しました。

効果④:データ活用の幅の拡大
オフラインデータとオンラインデータの連携により、より包括的な顧客理解が可能になります。これにより、ターゲティングの精度向上、広告クリエイティブのパーソナライズ、顧客体験の改善など、データ活用の幅が広がります。Criteoとの連携事例では、CPC(クリック単価)が改善し、リーチが拡大するなど、サードパーティ・クッキーを活用したターゲティングソリューションと遜色ない成果が出ています。

実際に、2024年3月に対応した「IM-UID」ベースの計測機能連携と最適化の精度向上により、効果的なターゲティングが実現し、獲得効率が改善した結果、導入広告主数が累計300アカウントを突破するなど、多くの企業で効果が実証されています。

これらの事例から、IM-UIDを活用したオフラインCV連携は、特にiOSユーザーが多いターゲット層や、オンラインとオフラインの両方のチャネルを活用している企業にとって、効果的なソリューションであることがわかります。

注意点と課題への対応策

IM-UIDを活用したオフラインCV連携を導入する際には、いくつかの注意点や課題があります。それらを理解し、適切に対応することで、より効果的な運用が可能になります。

注意点①:データ統合の品質管理
異なるソースからのデータを統合する際には、データの品質管理が重要です。例えば、メールアドレスの表記揺れや電話番号のフォーマットの違いなどにより、同一ユーザーの情報が正しく紐づかない可能性があります。定期的なデータクレンジングや、統一されたデータ形式の採用などが対応策として有効です。

注意点②:プライバシーへの配慮
ユーザーデータの収集と利用に関しては、プライバシー保護の観点から慎重な対応が必要です。適切な同意取得プロセスの確立や、プライバシーポリシーの明確な説明など、透明性の確保が重要です。IM-UIDは個人を特定する情報を含まず、オプトアウトも可能な設計になっているため、プライバシーに配慮したソリューションと言えますが、運用面での配慮も忘れないようにしましょう。

注意点③:技術的な実装の複雑さ
IM-UIDの導入やオフラインCVとの連携には、一定の技術的知識や実装作業が必要です。特に既存のシステムとの連携や、データの流れの設計などには、専門的なサポートが必要になる場合があります。段階的な導入や、外部パートナーとの協力などが対応策として考えられます。

注意点④:測定精度の限界
どんなに優れた技術でも、完全な測定は難しいことを理解しておく必要があります。例えば、ユーザーが複数のデバイスを使い分けている場合や、広告接触から購入までの期間が長い場合などには、正確な紐づけが難しくなることがあります。複数の測定手法を組み合わせたり、統計的な補正を行ったりするなどの対応が必要です。

これらの注意点を理解した上で、データ統合戦略を構築し、プライバシーポリシーを見直し、段階的な導入を進め、クリエイティブの最適化を図ることが、IM-UIDを活用したオフラインCV連携を成功させるポイントになります。

他のCookieレスソリューションとの比較

IM-UIDだけでなく、Cookieレス時代に向けた様々なソリューションが登場しています。それぞれの特徴を比較し、自社の状況に最適なソリューションを選ぶための参考にしましょう。

IM-UID(推定ID型)
IM-UIDは、Web上で得られるユーザーの行動やIPアドレスなどから生成される「推定ID」の一種です。個人情報ではなく、ブラウザの種類や訪問サイト・検索履歴などの一般的なデータを基に生成されるため、大量に生成が可能です。導入がしやすい一方で、確定IDに比べると精度が若干低い場合があります。

確定ID型ソリューション
確定IDは、ユーザーから同意を得られたメールアドレスなどの確定データを暗号化して生成されるIDです。確定データをキーとしているため、非常に精度の高いターゲティングが可能となります。ただし、広告配信の際の配信ボリュームが少ないというデメリットがあります。

Google Privacy Sandbox
GoogleのPrivacy Sandboxは、ユーザーのプライバシー保護と広告による収益の両立を目指すための仕組みです。3rd Party Cookieを使用せずにCV計測を行えるというメリットがありますが、Googleのエコシステム内での利用に限られるという制約があります。

拡張コンバージョン
拡張コンバージョンは、既存のCookieによるCV計測を補完する機能で、3rd Party Cookieを使用できない場合でも正確なCV計測を行えます。ユーザーの同意を得て取得した情報をプライバシー保護に配慮した識別子に変換し、広告配信およびCV計測に活用します。

これらのソリューションは競合するものではなく、併用で活用していくことも有効です。実際に、確定IDと推定IDの両方のソリューションに対応し、併用で活用している広告主も増えています。

選択の際には、自社のマーケティング目標、対象ユーザー、技術的な環境、プライバシーへの配慮などを総合的に考慮し、最適なソリューションまたはソリューションの組み合わせを選ぶことが重要です。

今後の展望とデジタルマーケティング戦略

Cookieレス時代が本格化する中、IM-UIDを活用したオフラインCV連携は、デジタルマーケティングの新たな標準になりつつあります。今後の展望と、それを踏まえたマーケティング戦略について考えてみましょう。

展望①:AIとの連携強化
IM-UIDで収集したデータをAIが分析し、より高度なターゲティングや予測モデルの構築が可能になるでしょう。例えば、オンライン行動からオフラインでの購買確率を予測したり、最適なタイミングでのアプローチを提案したりするなど、AIを活用した意思決定支援が進化すると予想されます。

展望②:リアルタイムパーソナライゼーション
ユーザーの行動をリアルタイムで把握し、瞬時に最適なコンテンツや広告を提供する技術が発展することが期待されます。オンラインでの検索履歴や閲覧履歴に基づいて、実店舗でのおすすめ商品を提案するなど、オンラインとオフラインを横断したシームレスな顧客体験の提供が可能になるでしょう。

展望③:クロスチャネルマーケティングの進化
オンラインとオフラインのデータを統合し、よりシームレスな顧客体験を提供できるようになることが期待されます。例えば、オンラインで閲覧した商品を実店舗で試着できるようにしたり、実店舗での購入履歴に基づいてオンライン広告をパーソナライズしたりするなど、チャネルを横断した一貫性のあるマーケティングが実現するでしょう。

これらの展望を踏まえた上で、今後のデジタルマーケティング戦略として以下のポイントに注目することが重要です。

戦略①:データ統合基盤の整備
オンラインデータとオフラインデータを統合する基盤を整備し、顧客の全体像を把握できる環境を作りましょう。IM-UIDのような共通IDソリューションを中心に、各種データソースを連携させる仕組みを構築することが重要です。

戦略②:プライバシーファーストの姿勢
データ活用とプライバシー保護のバランスを取りながら、ユーザーの信頼を獲得することが今後ますます重要になります。透明性の高いデータ収集と利用、明確な同意取得プロセス、オプトアウト機能の提供など、プライバシーファーストの姿勢を貫くことが、長期的な関係構築の鍵となります。

戦略③:テクノロジーパートナーとの協業
急速に進化するテクノロジー環境において、すべてを自社だけで対応することは難しくなっています。IM-UIDを提供するパートナーやデータ分析のスペシャリストなど、専門性の高いパートナーとの協業を通じて、最新のテクノロジーを効果的に活用する体制を整えましょう。

「IM-UIDを使ったオフラインCVの自動連携」は、Cookieレス時代におけるマーケティング計測の有力な解決策の一つです。プライバシーに配慮しながら効果的な広告配信と正確な効果測定を実現するこのソリューションを活用し、変化する環境に適応したマーケティング戦略を展開していきましょう。