ターゲットが成果を上げる! ウォルマート広告API活用で実現する顧客エンゲージメント向上戦略

海外記事
著者について

進化するリテールメディア:ウォルマートコネクトの新戦略

近年、小売企業の提供するリテールメディアは、デジタルマーケティングにおいて重要な地位を確立しています。特に、購買データに基づいた精度の高いターゲティングや、実店舗とオンラインを連携させた広告展開は、広告主にとって大きな魅力となっています。ウォルマートコネクトは、この分野において新たな一手を打ち出しました

オフサイトとオンサイト広告を繋ぐDisplay Advertising APIの登場

ウォルマートコネクトは、新たにDisplay Advertising APIを公開しました。このAPIにより、広告主は自社の広告プラットフォームを通じて、ウォルマートのオンサイトディスプレイ広告をより柔軟に展開できるようになります。これまで、ウォルマートのショッピングアプリ内ディスプレイ広告は、ウォルマートコネクトのインターフェースを通じてのみ購入可能でしたが、今回のAPI公開により、Pacvue、Skai、DataCaciquesといった広告テクノロジー企業とのベータテストを経て、より使い慣れた環境でのキャンペーン管理、レポート作成、最適化が可能になります
この動きは、複数のeコマースプラットフォームで商品を販売する広告主の複雑性を解消することを目的としています。ウォルマートコネクトのセールス担当シニアバイスプレジデントであるライアン・メイワード氏は、「これらの企業の目的は、複数のeコマースプラットフォームで製品を販売している広告主の複雑さを解決することです。私たちはそれをサポートしたいと考えています」と述べています

広告パフォーマンスの向上:検索広告とディスプレイ広告の連携

Display Advertising APIのベータテストでは、検索広告とオンサイトディスプレイ広告を組み合わせて実施したブランドにおいて、「非常に大きな」パフォーマンスの向上が確認されました。メイワード氏によると、一般的に、あるブランドの広告を検索とディスプレイの両方のチャネルで見た顧客は、検索広告のみを見た顧客と比較して、そのブランドの商品を購入する可能性が平均で3倍高くなり、支出額も40%増加する傾向があります
特定の商品カテゴリーにおいても同様の効果が見られました。ハードライン製品のキャンペーンでは、検索広告のみと比較して、検索広告とディスプレイ広告を同時に実施することで、売上が39%増加しました。また、エンターテインメント、玩具、季節商品のカテゴリーでは、その増加率は67%に達しました

ファネル全体をカバーする広告戦略へ

ウォルマートコネクトは、以前は主に高性能な有料検索プラットフォームの構築に注力していましたが、その後、自社内で技術基盤を構築し、セルフサービス購入ツール、キャンペーン管理API、セカンドプライスオークションなどを提供してきました
同時に、The Trade Deskとの提携によるWalmart DSPの立ち上げや、ソーシャルプラットフォームや主要メディア企業との連携を通じて、オフサイトメディア事業も成長させてきました。特にコネクテッドTV(CTV)広告は、過去数年間で最も急速に成長している分野です
これらの取り組みにより、広告主はウォルマートの顧客をオフサイトでリーチし、アプリに誘導し、有料検索を通じて購入を完了させるといった、ファネルの上部と下部に対応した広告戦略を展開できるようになりました。しかし、これまでマーケティングファネルの中間層、つまり「検討」段階へのアプローチが課題となっていました
メイワード氏は、「中間層のコネクティブティッシュ、つまりファネルの検討要素は、私たちの最も強い分野ではありませんでした。オンサイトディスプレイは、そのコネクティブティッシュなのです」と説明しています。オフサイトメディアが潜在顧客でファネルの上部を満たし、ショッピングアプリ内のディスプレイ広告が、購入というファネルの底に至るまでのギャップを埋める役割を果たします。クリック課金型広告は、売上の増加とインクリメンタリティ(広告によって生じた追加の売上)を促進し、消費者をより購入意欲の高い検索やその他のショッピング体験へと誘導します

データ活用とCTVの進化

ウォルマートコネクトは、標準的なレポート機能では提供できない、より詳細なオーディエンスセグメンテーションやパフォーマンスに関するインサイトを求めるブランドのために、広告代理店パートナーや複数の大手CPG(日用消費財)クライアントと協力して、クリーンルーム環境のテストも行っています。メイワード氏は、「クリーンルームは、標準的なレポート指標ではすぐに答えられない質問に対して、より粒度の高いデータをどのように活用するかをブランドが理解するのを支援する、新しい分野となるでしょう」と述べています
近年組み込まれたCTVプロダクトは、ウォルマートコネクトのデータ活用をさらに複雑にしていますが、同時に大きな可能性も秘めています。特に大手食品・消費財ブランドを中心に、CTV広告への強い需要があり、購買シグナルを活用したターゲティングや、クローズドループ計測による効果測定への期待が高まっています。NBCUniversal、Disney、ParamountなどからCTVインベントリにアクセスし、長年にわたってテストと学習を重ねてきたウォルマートは、スマートTVメーカーVizioの買収完了(12月)により、CTV事業をさらに拡大する見込みです。メイワード氏は、「Vizioは成長のすべてを補完するものです。彼らは明らかに独立して運営されており、当面はその状態が続きます。NewFrontsの際には、私たちの計画についてより詳しくお話する予定です」と述べています

まとめ:データとテクノロジーで進化するリテールメディア

ウォルマートコネクトのDisplay Advertising APIの導入は、オフサイト広告とオンサイト広告を連携させ、マーケティングファネル全体を最適化するための重要な一歩と言えるでしょう。広告主は、より使い慣れたツールを活用しながら、ウォルマートの持つ豊富な顧客データに基づいた効果的な広告戦略を展開し、顧客エンゲージメントと売上の向上を実現することが期待されます。リテールメディアの進化はまだ始まったばかりであり、ウォルマートコネクトの今後の展開から目が離せません。

参考サイト