近年、リテールメディアネットワーク(RMN)は、消費者の購買行動を捉えるメディアとして、広告市場で急速に存在感を増しています。この成長をさらに加速させ、次世代型「リテールメディア3.0」へと進化させるために、重要な要素は何でしょうか?本稿では、この問いに向き合い、リテールメディア3.0で重要視されるべきポイントを解説していきます。
データ共有:信頼関係構築の要
従来、小売業者は消費者データを囲い込み、「データを持つ者」として優位性を保ってきました。しかし、サードパーティクッキーの廃止が進む中、RMNはデータを独占するのではなく、ブランドと共有することでエコシステム全体を活性化し、市場全体の成長を促進する必要性に迫られています。
信頼関係を築くためには、RMNはファーストパーティデータを活用し、顧客とビジネスに関する詳細なインサイトをブランドに提供する必要があります。ブランドは、従来の小売業者のマーチャンダイジング部門からは得られなかったような、データとインサイトに基づく深い分析を求めています。
リテールメディア3.0で求められる進化
ブランドの期待に応え、リテールメディア3.0を実現するためには、RMNは従来の枠組みを超えた進化を遂げなければなりません。具体的には、以下の4つの領域における向上が求められます。
メディアとしての卓越性
RMNは、広告配信プラットフォームとしての機能を高め、大手広告企業と同等以上のメディアとしての卓越性を提供する必要があります。
プログラマティック広告購入: 広告枠の自動買い付けを可能にすることで、広告配信の効率化と最適化を実現します。
リアルタイムレポート: 広告配信状況をリアルタイムで把握できるレポート機能を提供することで、広告効果の可視化と迅速な改善を支援します。
セルフサービスソリューション: ブランドが自ら広告配信の設定や管理を行えるようにすることで、利便性と柔軟性を向上させます。
戦略的パートナーシップの深化
ブランドとのパートナーシップを深化させ、単なるデータ提供者ではなく、ブランドのビジネス目標達成を支援する戦略的パートナーとしての役割を担う必要があります。
●ブランドのビジネス戦略の理解: ブランドの課題や目標を深く理解し、ニーズに合わせたカスタマイズされたソリューションを提供します。
●コミュニケーションの密化: 定期的な意見交換や共同プロジェクトなどを通じて、ブランドとのコミュニケーションを密にし、相互理解を深めます。
●プレミアムアカウント管理: 優良顧客であるブランドに対しては、専任のアカウントマネージャーによる手厚いサポートを提供します。
データに基づく実用的なインサイトの提供
ブランドがRMNに最も期待しているのは、独自のファーストパーティデータ、特に顧客行動に関するデータへのアクセスです。RMNは、これらのデータを分析し、顧客セグメンテーション、商品開発、マーケティング戦略策定などに活用できる実用的なインサイトをブランドに提供する必要があります。
●顧客行動に関する詳細な分析: 顧客の購買履歴、閲覧履歴、興味関心などを分析し、顧客を深く理解するための情報を提供します。
●競合分析、市場トレンド、消費者行動の変化などの提供: ブランドの戦略策定に役立つ、より広範な市場情報を提供します。
●フルファネルレポートの提供: 認知から購買行動までの全段階を網羅したフルファネルレポートを提供し、広告効果の可視化を進めます。
オムニチャネル戦略への貢献
消費者は、オンラインとオフラインをシームレスに行き来するオムニチャネル化が進んでいます。RMNは、オンラインとオフラインの購買データを統合し、消費者の行動全体を把握することで、ブランドのオムニチャネル戦略を支援することができます。
●オンライン行動に基づく実店舗での行動予測: 消費者のオンライン行動データに基づいて、実店舗での購買可能性を予測し、パーソナライズ化された販促施策を展開します。
●実店舗での購買体験のオンライン広告への反映: 実店舗での購買履歴や行動データに基づいて、オンライン広告をパーソナライズ化し、顧客体験の向上を図ります。
●オンラインとオフラインを統合したキャンペーンの実施: オンラインとオフラインの両方のチャネルを統合したキャンペーンを実施することで、相乗効果による広告効果の最大化を目指します。
実店舗におけるデータ活用の進化
実店舗は依然として重要な購買接点です。RMNは、デジタルサイネージ、センサー、インタラクティブキオスクなどのテクノロジーを活用し、実店舗における消費者行動に関するデータを収集・分析することで、より効果的なマーケティング施策を展開することができます。
●顧客の店内回遊ルート、滞在時間、商品閲覧履歴などの分析: これらのデータを分析することで、顧客のニーズを予測し、パーソナライズ化されたおすすめ商品やクーポンを提供することができます。
●実店舗データとオンラインデータの統合: 実店舗で得られたデータとオンラインデータを統合することで、消費者の行動をより深く理解し、オンライン広告や実店舗での販促活動に活用することができます。
●デジタルとリアルの融合による顧客体験の向上: デジタルサイネージやインタラクティブキオスクなどを活用することで、顧客に商品情報やクーポンなどをタイムリーに提供し、購買意欲の向上を促します。
データプライバシー:信頼の基盤
消費者データのプライバシー保護は、信頼関係構築の大前提です。RMNは、データの透明性とセキュリティを確保し、消費者に安心してデータを共有してもらえる環境を整備する必要があります。
●プライバシーポリシーの明確化: データの取得・利用目的、第三者への提供について、消費者に分かりやすく説明します。
●データ匿名化や仮名化などの技術活用: 個人情報保護に最大限配慮し、個人を特定できない形式でデータを扱います。
●データ利用状況の確認体制の提供: 消費者が自身のデータの利用状況を随時確認できる仕組みを提供することで、透明性を高めます。
まとめ:信頼に基づく未来へ
RMNは、消費者データの宝庫としての立場を利用し、ブランドとの信頼関係を構築することで、大きな成長を遂げることができます。データの共有、透明性、プライバシー保護を重視することで、RMNは、ブランド、消費者、そして小売業界全体にとって、より良い未来を創造することができるでしょう。
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株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
インティメート・マージャーでアドテクノロジーの事業領域で収集したオルタナティブデータを他の事業領域でも活用していく取り組みにトライしています。
この記事の中ではオルタナティブデータのセールステック領域での活用(インテントデータ)、小売領域での活用(リテールデータ)、金融領域での活用(クレジットスコア)、リサーチ用のデータ(インサイトデータ)などでの活用事例や海外での事例をご紹介させていただいています。
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