近年、採用マーケティングにおいてもデータドリブンな意思決定が求められるようになっています。従来型の採用活動は、経験や勘に頼った属人的な手法が主流でしたが、変化の激しい現代においては、データに基づいた戦略的な採用活動が不可欠です。
本稿では、採用マーケティングと求人ジャーニーにおけるデータ活用の未来について、具体的な事例を交えながら解説します。
採用マーケティングと求人ジャーニーにおけるデータ活用の現状と課題
採用マーケティングとは、企業理念やビジョン、事業内容、求める人物像などを求職者に効果的に伝え、共感を得ることで、母集団形成から入社、その後の活躍までを促進するマーケティング活動です。
求人ジャーニーは、求職者が企業と出会い、応募、選考を経て入社に至るまでのプロセスを指します。
従来の採用活動では、求人広告や人材紹介会社に依存するケースが多く、効果測定や改善が難しい点が課題でした。一方、デジタル化が進んだ現代においては、企業ウェブサイトや求人情報サイト、SNSなど、様々なチャネルを通じて求職者へアプローチすることが可能になっています。
デジタル化の進展は、個人情報保護の観点からも変化が激しくなっています。サードパーティークッキー規制の廃止はその一例であり、従来の方法では、求職者の行動履歴を取得し、パーソナライズ化された広告配信を行うことが困難になりつつあります。
データ活用がもたらす採用マーケティングの進化
このような状況下において、データ活用は、採用マーケティングを進化させるための重要な鍵となります。具体的な例を挙げながら、その可能性を探っていきましょう。
(1)データに基づくターゲット設定とペルソナ設計
従来の採用活動では、経験や勘に基づいてターゲットを設定することが多く、ミスマッチが発生する可能性もありました。しかし、データ分析を通じて、自社に最適な人材の属性や行動パターンを把握することで、より精度の高いターゲティングが可能になります。
例えば、**DMP(Data Management Platform)**を活用することで、ウェブサイトへのアクセス履歴や資料ダウンロード、応募者の属性情報などを分析し、自社にマッチする可能性の高い求職者を特定できます。
さらに、機械学習などの技術を用いることで、膨大なデータの中から潜在的な優秀人材を発見することも期待されています。
(2)最適なチャネル選定と効果的なアプローチ
求職者は、企業ウェブサイト、求人情報サイト、SNS、企業紹介動画など、様々な情報源を通じて企業と接触します。データ分析によって、それぞれのチャネルにおける求職者の行動履歴や属性を把握することで、より効果的なチャネル選定とアプローチが可能になります。
(3)応募者体験の向上と最適化
求人ジャーニー全体を通じて、応募者にとって魅力的な体験を提供することは、優秀な人材を獲得する上で非常に重要です。データ分析によって、応募者の行動履歴や属性、企業との接点を分析することで、応募者一人ひとりに最適化された情報提供やコミュニケーションが可能になります。
例えば、応募者のウェブサイト閲覧履歴に基づいて、興味関心の高い求人情報や企業コンテンツをレコメンドしたり、応募プロセスにおける疑問点を解消するためのFAQを提供したりすることで、応募者の不安や疑問を解消し、応募率の向上に繋げることが可能になります。
(4)採用活動の効果測定と改善
データに基づいた効果測定は、採用活動のROI向上に不可欠です。データ分析を通じて、採用コスト、応募数、採用率、早期退職率などの指標を可視化し、分析することで、採用活動のボトルネックを特定し、改善策を講じることができます。
例えば、BIツールを活用することで、Googleアナリティクスよりもコンバージョンをより正確に測定でき、広告効果を適切に評価することが可能になります。
データ活用によって拓かれる採用マーケティングの未来
今後、AI(人工知能)機械学習などの技術革新によって、データ分析の精度が向上し、より高度な採用活動が可能になることが期待されています。
AIによるマッチングの高度化
AIを活用することで、求職者のスキルや経験、志向性などを分析し、企業の求める人物像とのマッチング精度を高めることができます。これにより、採用プロセスにおけるミスマッチを減らし、採用効率を飛躍的に向上させることが期待されます。
まとめ
データ活用は、採用マーケティングと求人ジャーニーを大きく変革する可能性を秘めています。
今後、AIや機械学習などの技術革新が進む中で、データ活用の重要性はますます高まっていくでしょう。企業は、これらの変化を的確に捉え、データドリブンな採用マーケティングを実践していくことが、優秀な人材の獲得、ひいては企業の成長に不可欠な要素となるでしょう。
株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長。
インティメート・マージャーでアドテクノロジーの事業領域で収集したオルタナティブデータを他の事業領域でも活用していく取り組みにトライしています。
この記事の中ではオルタナティブデータのセールステック領域での活用(インテントデータ)、小売領域での活用(リテールデータ)、金融領域での活用(クレジットスコア)、リサーチ用のデータ(インサイトデータ)などでの活用事例や海外での事例をご紹介させていただいています。
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