ARマーケティングの未来 – 顧客体験を革新するデータ活用戦略
ARマーケティングの最新動向と、データ活用による顧客体験の向上について、株式会社palan CDO (チーフデザインオフィサー) 佐々木彩花氏と、株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島亮次氏のお二人にお話を伺いました。
登壇者紹介
株式会社palan CDO (チーフデザインオフィサー) 佐々木彩花氏は、ノーコードでARコンテンツを作成できるプラットフォーム「ARNOVEL」を提供する企業のCDOを務めています。
株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島亮次氏は、データ活用の専門家集団であるインティメート・マージャーの代表取締役を務めています。データ分析や機械学習の分野で多くの実績を持っています。
ARとデータ活用の最新動向
佐々木氏によると、ARの最新動向は以下の3つです。
- ARによるパーソナライズされた体験の実現: SNSのフィルターや広告などで、ブランドイメージを伝えるパーソナライズされたARコンテンツが増えています。
- 観光と地域活性化へのAR活用の広がり: ビジュアルポジショニングシステム(VPS)の登場により、屋外でのARナビゲーションなどが可能になってきました。
- ウェアラブルデバイスの進化: AppleのVision Proなど、高解像度のARグラスの登場により、没入感の高いARコンテンツ体験が可能になります。
物や場所を拡張する技術だと考えています。たとえば、形がある商品の場合はもちろんですが、形がないものにも応用できます。具体的には、香りのように視覚化しづらいものがありますよね。商品そのものだけを見ても伝わりにくい場合があります。そのような場合に、ARを使って香りを視覚的に表現することが可能です。ARで香りをビジュアル化する取り組みも行われています。あと、ARは商品だけでなく、地域や史跡などの場所とも非常に相性が良い技術だと感じます。たとえば、観光地や歴史的な遺跡などをARで補完することで、より魅力的な形で情報を伝えることができるでしょう。
株式会社palan CDO 佐々木彩花氏
ARとデータ活用の普及における課題と本当のニーズ
ARの普及を阻む課題としては、3つあります。1つ目は、コスト感が不明確で高そうだと思われることです。2つ目は、どのような企画を立てれば成功するのか分からないことです。3つ目は、性格が変わるときに成果がどこまで出るのか見えにくいことです。
一方で、ARに対する本当のニーズとしては、2つあります。1つ目は、現実のイベントやSNSでの集客、友達登録の獲得です。2つ目は、来場者の顧客体験の強化と差別化、スタンプラリーなどによる地域回遊の促進です。
現在、ARは販促やキャンペーンといった領域での利用が中心になっている印象です。そのため、多くの場合、LTV(顧客生涯価値)よりも短期的な成果を重視するKPIを掲げるチームが多いように見受けられます。一方で、CRM(顧客関係管理)やファンコミュニティの運営を担当するチームでは、LTVやエンゲージメントを重視する傾向があります。このように、ARを導入する際には、目的に応じた適切なKPIの設定が非常に重要であると考えられます。
株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島亮次氏
ARマーケティングの未来予想
簗島氏は、今後のARマーケティングの可能性について以下のように述べています。
未来のARについて考えると、よりリアルタイムで個々にパーソナライズされたリアルな体験を提供できるようになるのではないかと感じました。これにより、ユーザーひとりひとりに合った体験をリアルタイムで楽しめる可能性が広がっていくのではないかと思います。
株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島亮次氏
また、佐々木氏は、ARデータ活用のためのツール開発の重要性を指摘しています。
株式会社palan CDO 佐々木彩花氏
まとめ
ARマーケティングは、パーソナライズされた体験の提供や、観光・地域活性化への活用など、大きな可能性を秘めています。一方で、コスト感の不透明さや、効果測定の難しさなど、普及における課題も存在します。
今後は、ARデータ活用のためのツール開発や、LTVなどの長期的な指標の設定など、課題解決に向けた取り組みが求められるでしょう。そうすることで、ARマーケティングは更なる発展を遂げ、顧客体験の革新に大きく貢献していくことが期待されます。