売るから選ばれる時代の戦略
短期売上から脱却し、選ばれ続ける関係性へ。データと共感でファンを生むマーケティング戦略を解説します。
登壇者紹介
本セミナーには、株式会社インティメート・マージャー代表取締役社長の簗島亮次氏と、株式会社EmpaC代表取締役社長の松山真衣氏が登壇しました。簗島氏は、DMP(データマネジメントプラットフォーム:複数のデータを統合しマーケティングに活用する基盤)を中心に、データとAIを活用したマーケティング支援を行っており、国内有数のデータ活用の専門家です。一方の松山氏は、SNSマーケティングを軸に企業と顧客の関係構築を支援し、共感を軸としたブランドづくりに強みを持つ実践者です。
セミナーの背景と問題意識
本セミナーは「売るマーケティングから選ばれ続ける関係づくりへ」をテーマに開催されました。多くの企業が抱える課題として、新規顧客は獲得できるもののリピーターが増えない、キャンペーン施策に依存しブランド資産が積み上がらない、SNS運用を行っても成果につながらないといった問題が挙げられています。
これらの背景には、短期的な売上を追う施策と、中長期的な信頼構築やファン化といった価値創出が分断されているという構造的な問題があります。現代のマーケティング環境では、商品や情報が溢れており、ユーザーは「選ぶ」のではなく「おすすめされる」体験に慣れています。その結果、一時的に売れる商品は増えている一方で、継続的に選ばれ続けるブランドを作る難易度が高まっています。
キーメッセージと発言ハイライト
本セミナーにおける重要なメッセージは、「売れる仕組み」と「選ばれ続ける仕組み」は本質的に異なるという点です。
商品が売れることと、また買いたくなることは全く別の体験です。(簗島氏)
この発言が示す通り、短期的な購買は需要のタイミングに依存する一方で、リピートは体験価値や信頼に依存します。特にデジタルマーケティングでは、CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)が混同されやすい傾向があります。
LTVとは、顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の総額を指し、ファン化や継続利用の指標として重要です。しかし、CPAを最適化する施策は必ずしもLTVの最大化につながるわけではありません。
目の前の成果を追うほど、長期的な価値が見えなくなる構造が存在しています。(松山氏)
また松山氏は、現代の購買行動の変化についても言及しています。SNSやレコメンドの影響により、ユーザーは深く検討する前に商品を購入する傾向が強まっています。その結果、ブランドへの愛着が形成されにくく、リピートにつながりにくい状況が生まれています。
実践的な取り組みと事例
では、企業はどのようにして「選ばれ続ける関係」を構築すればよいのでしょうか。その鍵となるのが「コミュニケーションの質」と「顧客理解の深化」です。
松山氏は、SNSを単なる発信ツールではなく「接客の場」として捉える重要性を強調しています。
SNS上でのやり取り一つひとつが、ブランドとの距離を縮める接点になります。(松山氏)
具体的には、コメントへの返信やユーザー投稿へのリアクションなど、双方向のコミュニケーションを積み重ねることが重要です。これにより、ユーザーは「自分を見てくれている」という実感を持ち、ブランドへの信頼が醸成されます。
さらに簗島氏は、データとAIを活用した顧客理解の重要性を指摘しています。従来のような「30代男性」といった粗いペルソナではなく、興味関心や行動履歴に基づいた詳細な顧客像を構築することが求められています。
例えば、Web行動データやSNS流入経路を分析することで、「どのコンテンツから来たユーザーがどのような課題を持っているか」を把握することが可能になります。このようなデータ活用により、顧客ごとに最適化されたコンテンツ提供が実現されます。
また、生成AIの活用により、分析から施策実行までのサイクルが高速化しています。従来は分断されていた「データ分析」「コンテンツ制作」「施策実行」が一体化し、PDCAを高速で回すことが可能になっています。
今後の展望とまとめ
今後のマーケティングにおいては、「売る力」だけでなく「選ばれ続ける力」が競争優位の鍵となります。そのためには、短期成果と中長期価値を統合した戦略設計が不可欠です。
特に重要なのは、顧客との接点を単なる購買に限定せず、継続的な関係構築の場として設計することです。SNSやコンテンツを通じて共感や信頼を積み重ねることで、ブランドは単なる商品提供者から「選ばれる存在」へと進化します。
また、データとAIの活用により、顧客理解と施策実行の精度は飛躍的に向上しています。これらを活用することで、再現性のあるマーケティングが可能となり、属人的な判断から脱却することができます。
本セミナーが示したのは、マーケティングの本質が「売る」から「関係を築く」へと移行しているという事実です。この変化を捉え、顧客との長期的な関係性を構築できる企業こそが、これからの時代において持続的な成長を実現できるといえるでしょう。

