営業成果を伸ばすAI×インテント活用
インテントデータとAIで営業はどう変わるのか。B2Bの現場事例をもとに、成果につながるターゲティングと次世代営業の実践法を整理します。
登壇者紹介
本セミナー「インテントデータとAIで実現する未来のマーケティング営業戦略」には、3名が登壇しました。株式会社インティメート・マージャーの代表取締役社長である簗島亮次氏は、Web閲覧履歴や法人単位の行動データを活用し、営業やマーケティングを高度化する立場から、インテントデータの可能性と今後の進化について語りました。エッジテクノロジー株式会社 AIプロダクト事業部 エヴァンジェリストの五十嵐政貴氏は、モデレーターとして全体を進行しながら、自社プロダクトの営業現場で得た知見も交えつつ、マーケティングと営業の融合という視点から議論を深めました。さらに、株式会社ネオキャリア BPO事業部 SOユニットリーダーの志禮田裕貴氏は、営業代行と新規セールスの現場責任者として、インテントデータを活用した営業DXの具体的な成果や運用上の工夫を共有しました。
セミナーの背景と問題意識
本セミナーでは、リードは集まるものの受注や商談につながらない、営業活動の優先順位付けが感覚頼みになっている、AIやデータを活用したいが成果に結びつく運用設計が分からないといった悩みが共有されました。対象は、B2Bマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの担当者だけではなく、新しいテクノロジーを現場に導入し、短期間で成果を出したい企業全般です。
特に印象的だったのは、営業活動がまだ「上から順番に架電する」「保有リードを空いた時間で処理する」といった旧来型のやり方にとどまっている企業が少なくないという指摘です。リードを持っていても活用できていない、ツールを導入しても定着しない、部門ごとに営業のやり方がばらばらで再現性がないといった問題が、売上機会の損失を生んでいます。
この状況に対して、セミナーでは「インテントデータ」と「AI」を組み合わせることで、営業はもっと戦略的かつ再現性の高いものに変えられるのではないか、というテーマが据えられました。インテントデータとは、企業や顧客がいま何に興味を持ち、どの課題を抱えているかを示す行動データのことです。たとえば、特定のキーワード検索や競合サービスの閲覧履歴などから、購買の兆しを捉える活用が想定されています。
キーメッセージと発言ハイライト
志禮田氏は、現場で寄せられる相談として、ハウスリードを持ちながら放置してしまっている企業や、質の低い大量架電に依存している企業が多いと説明しました。営業担当ごとにターゲット解像度が異なり、結果としてアポイントの質や売上へのつながり方に差が出てしまう状態です。その問題に対する解決策として、インテントデータを用いたターゲティングが有効であると語られました。
顧客行動から購買の気兆しを検知して、最適なタイミングでアプローチできるのがインテントデータです。(志禮田氏)
この言葉が示すように、営業の成否は「誰に」「いつ」接触するかで大きく変わります。従来のように業界名だけで広く対象を取るのではなく、競合サービス名や特定課題に関する検索行動から、いま課題が顕在化している企業を見つけることで、営業の精度が一気に高まります。
一方、簗島氏は、インテントデータは営業の世界で急に現れたものではなく、もともと広告業界でターゲティングに使われていたデータ活用が営業領域に展開されたものだと整理しました。DMPとは、データマネジメントプラットフォームの略で、複数のデータを収集・整理・活用するための基盤です。インティメート・マージャーは、こうした基盤の上で、PCやスマートフォンに紐づくWeb閲覧履歴を中心に、法人単位の興味関心を推定するサービスを提供しています。
多領域でうまくいっていたターゲティングの考え方が、営業にも追いついてきたということです。(簗島氏)
この発言から見えてきたのは、営業が属人的な勘や経験だけに依存する時代から、マーケティングのようにデータで優先順位を付ける時代へ移行しているということです。営業とマーケティングの境界が薄れ、データを介して一体化が進んでいるとも言えます。
また、五十嵐氏は、問い合わせフォーム営業ツール「GeNi」を例に挙げながら、営業の入口である接点作りそのものもデータ化・自動化されてきたと補足しました。興味のある企業に対して、適切な文面でアプローチし、反応した企業へすぐに電話をかけるという一連の流れも、すでに運用されている世界になっています。
営業もマーケティングも、結局はターゲットの解像度をどこまで上げられるかが勝負です。(五十嵐氏)
実践的な取り組みと事例
志禮田氏からは、製造業向けAIツールを販売する企業の事例が紹介されました。この企業では、従来「製造業全般」を対象にした広いアプローチを行っていたため、1件あたりの獲得単価(CPA)が高く、アポイント率も低く、商談化までのリードタイムも長期化していました。CPAとは、1件の成果を獲得するためにかかった費用のことです。
そこで実施したのが、インテントデータを活用したターゲットの絞り込みでした。競合サービス名や「コスト削減」といった課題ワードを検索している企業を抽出し、その企業に対して課題に直結した提案を行う形へ切り替えました。その結果、商談設定率は2倍に向上し、CPAは30%削減、リードタイムも30%短縮されたと共有されました。
ネオキャリア自身の営業組織でも同様の成果が出ていると志禮田氏は説明しています。インテントデータ導入前は、反響営業に依存し、新規開拓数も限られていました。しかし導入後は、新規獲得件数が大幅に増加し、組織人数が半減したにもかかわらず、生産性はむしろ高まったと語られました。
人数は半分になりましたが、新規獲得件数は4倍になっています。(志禮田氏)
この変化は、単にアポ数が増えたというだけではありません。架電先に対する心理的な手応えが大きく変わった点も重要です。無差別に電話をかけるのではなく、すでに課題意識を持っていそうな企業へ話しかけるため、相手から「ちょうど調べていました」と返ってくることもあると紹介されました。これは営業担当者の心理的負荷の軽減にもつながります。
ただし、データやツールを持っているだけでは成果にはつながりません。志禮田氏は、CRMを導入しても入力ルールが定まっていなかったり、営業が活用しなかったりすれば意味がないと述べ、自社でも一度頓挫した経験があると率直に共有しました。CRMとは、顧客情報を管理し、関係構築や営業活動の最適化に活用する仕組みです。
ツールを入れるだけでは駄目で、使い方を定義して現場に定着させるところが一番大変でした。(志禮田氏)
この話は、営業DXが「ツール導入競争」ではなく、「運用設計」と「定着支援」が本質であることを示しています。戦略立案、ツール選定、実行支援を一体で見なければ、データ活用は途中で止まりやすいという現場感が伝わってきました。
さらに簗島氏は、データ活用で見落とされがちな論点として、「取りたいユーザー」と「実際に取れるユーザー」は必ずしも一致しないと指摘しました。競合比較が進んでいる顧客を狙っても、自社がその土俵で勝てないなら成果は出にくく、もう少し手前の課題段階の企業を狙うべき場合もあります。つまり、インテントデータは万能の正解ではなく、自社の戦略と噛み合って初めて成果が出るものです。
今後の展望とまとめ
セミナー後半では、AIが営業の次のステージをどう変えるかについても議論が広がりました。簗島氏は、営業職そのものが消えるとは考えていない一方で、AIを武装した営業担当者の生産性は大きく上がり、結果として営業組織の人数構成や役割は変わっていくと述べました。
営業がなくなるのではなく、AI武装した営業とそうでない営業の差が大きくなると思います。(簗島氏)
たとえば、議事録の要約、提案書の下書き、面談準備、企業分析などは、すでにAIでかなり高速化できます。志禮田氏も、面談前の事前調査や議事録作成、フィードバックまでAIを活用していると説明しており、営業活動の前後工程は今後さらに自動化が進むと考えられます。
ただし、AIが一般化するほど、各社の提案が似通う危険もあります。だからこそ、自社のファーストパーティーデータ、つまり自社が直接収集した顧客データに加え、外部のインテントデータを掛け合わせ、相手にとって意味のある一言を作れるかどうかが差になります。自社データだけでは見えない「今この会社は何に関心があるか」を補足できる点が、サードパーティーデータの大きな価値です。
営業の未来は、単純な自動化ではなく、データとAIによって「優先順位付け」と「個別最適化」が進む世界です。ターゲットを見極める精度、接触のタイミング、メッセージの個別化、そのすべてがこれまで以上に重要になります。その前提として、CRMの定着、自社データの整備、そして必要に応じた外部データの活用が欠かせません。
今回のセミナーは、インテントデータが単なる新しい流行語ではなく、営業活動の意思決定を変える基盤であることを実感させる内容でした。マーケティングと営業が分断されたままではなく、データでつながり、AIで加速する。その流れに早く乗った企業ほど、次の数年で大きな差をつけていくはずです。

