AI×インテントデータで相談率を高める方法
AIとインテントデータを掛け合わせ、相談率を高める営業リストを作る考え方と実務フローを解説します。フォーム営業の活用、ABM連携、生成AIでの自動リスト化まで、明日から使えるヒントを整理します。
登壇者紹介
本セミナーは、株式会社インティメート・マージャー 代表取締役社長の簗島亮次氏と、エッジテクノロジー株式会社 AIプロダクト事業部 エヴァジェリストの五十嵐政貴氏の2名が登壇し、「AI×インテントデータ」で営業活動の相談率(商談化につながる確度)を高める方法を議論する内容でした。五十嵐氏は、問い合わせフォーム営業を支援するツールを軸に、営業現場での実装と運用の視点から話を展開し、簗島氏は、データマネジメント領域の知見を背景に、法人の興味関心情報であるインテントデータの捉え方や、生成AIとの掛け合わせによる実務の変化を具体例で示しました。
セミナーの背景と問題意識
本セミナーの主題は「AI×インテントデータで相談率アップ、攻めの営業リスト作成術」です。参加対象としては、インテントデータを活用した営業戦略に関心がある方、営業リストの作成や精度向上に課題を感じている方、AIやデータをメール施策にどう活かすかを知りたい方、フォームメール配信ツールを活用中または導入検討中の方が想定されていました。
背景にある課題は明確です。営業は依然として非効率になりやすく、属性情報(企業規模や業種など)だけでは「今、誰に、どんな切り口で当たるべきか」が見えにくい状況があります。さらに、コロナ禍以降のリモート環境の浸透により、訪問や対面の機会が減り、「会えないなら、相手の状況をデータで把握し、確度を上げて当たりにいく必要がある」というニーズが強まりました。
この文脈で登場するのがインテントデータです。インテントデータとは、法人がWeb上で示す興味関心や行動履歴をもとに、「その企業が今何に関心を持っているのか」を推定するための情報です。従来のリストが静的な属性中心だったのに対し、インテントデータは「動いている関心」に近い点が特徴です。
キーメッセージと発言ハイライト
本セミナーで繰り返し語られたキーワードは、「相談率は、当たり先の精度で決まる」という発想でした。闇雲に件数を打つよりも、確度の高い企業を見極めてアプローチするほうが、結果的に効率も成果も上がりやすいという整理です。
インテントデータは、法人に関するWeb上での行動履歴や興味関心の情報を指すことが多いです。(簗島氏)
ここで重要なのは、インテントデータが単なる「ターゲティング」だけの話ではない点です。五十嵐氏は、米国の事情として移動距離が長く、訪問コストが高いからこそ、訪問前に「会う価値があるか」をデータで見極める文化があると説明しました。一方、日本でもコロナ禍を境に「会えないなら把握する」という理由で浸透が進んだと整理されました。
相談の角度を上げたり、成約率を上げたりするために、相手の状況を把握するデータへのニーズが背景にあります。(簗島氏)
また、マーケティング領域の「オーディエンスデータ」が、営業文脈では「インテントデータ」と呼ばれる、という対比も印象的でした。広告の世界では、過去の閲覧行動などから「おすすめ」が出てくるのが当たり前になっています。同じように、法人の行動データが蓄積されれば、営業も「おすすめの当たり先」を作れるようになる、という比喩が提示されました。
インテントデータは、裏側で大きなAmazonのような仕組みが動いているイメージで捉えると分かりやすいです。(簗島氏)
ただし、データがあるだけでは成果につながりません。キーワード単体での判断は危険であり、複数の情報を組み合わせて「コンテキスト(文脈)」を作る必要がある、という点が議論されました。例えば「Salesforce」という単語を調べているだけではニーズが特定できませんが、「SFA 営業戦略」「営業代行」「採用」など周辺情報と合わせることで、意図が推定しやすくなるという考え方です。
1個のキーワードだけでは判断できないことも多いので、複合的に見てコンテキストを作ることが大切です。(簗島氏)
ここで登場する注釈として、ABM(Account Based Marketing)にも触れておきます。ABMとは、重点的に攻略したい企業群をあらかじめ決め、その企業ごとに最適化したアプローチを設計する考え方です。セミナーでは「ABM×インテントデータ」の相性が良いという話が出ており、既存の重点リストに対して「今どの企業が熱い状態か」を見える化することで、優先度付けができると整理されました。
実践的な取り組みと事例
実務パートでは、問い合わせフォーム営業ツールの活用と、インテントデータの掛け合わせが具体的に語られました。問い合わせフォーム営業とは、企業サイトの問い合わせフォームに対して、営業文面を送信する施策です。フォームは入力項目が多く手間がかかりやすい一方、適切に運用できると「認知獲得」や「初回接点の創出」として機能します。
ツール側でできることとしては、フォームへの自動入力支援、文面のトーン調整、ABテスト(文面の比較検証)などが挙げられていました。ABテストとは、複数の文面を試し、どの表現が反応されやすいかを検証する手法です。反応率が厳しい環境でも、文面改善と運用の積み重ねで成果の底上げを狙う思想が共有されました。
文章のテイストを変えながらABテストして、何が反応が良いかを見ていけます。(五十嵐氏)
一方で、インテントデータを使うと何が変わるのかという点が、このセミナーの核心でした。従来は「業種」や「売上規模」などの大枠で釣り堀を決め、そこに糸を垂らすような営業になりがちでした。インテントデータは、同じ釣り堀の中でも「今、何を食べたがっている魚か」を推定し、優先度や切り口を調整するための材料になります。
さらに、本セミナーでは生成AIを使ったリスト生成の実演が行われました。生成AI(ChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデル)に対し、特定テーマに関心が高い企業を抽出する指示を出し、外部Web情報も参照しながら、優先度付きで100社リストを作成する流れが紹介されました。ここでのポイントは、「データを渡されても使えない」という従来の壁が、生成AIの介在で大きく下がるという点です。
250サイトを調べて、インテントデータと外部情報を掛け合わせて、関心の高い順に100社をリストアップするところまで一括でやってくれます。(簗島氏)
このプロセスにより、リスト作成が「プロジェクト」から「日次業務」へ近づく可能性が示されました。朝に「今日当たるべき10件」をAIに作らせ、そこから営業を始めるという運用は、従来の営業リズムを変える発想です。ここでいう「相談率アップ」は、単に件数を増やすのではなく、当たり先の質を上げて商談化確度を高めるという意味合いで語られていました。
今後の展望とまとめ
後半では、「SaaS is Z(サーズイズゼット)」という表現も登場し、SaaSの画面にログインして作業する時代が相対的に減っていく可能性が議論されました。これまでSaaSは、データを扱うためのインターフェイスとして重要でしたが、生成AIがデータ探索・加工・出力まで担えるなら、作業の中心がチャットUIへ移るという見立てです。
サーズの画面にログインして作業することは減っていき、データは生成AIを介してプラグイン的に使われる方向が増えると思います。(簗島氏)
一方で、実行の「発射台」としてのツール価値は残ります。生成AIがリストを作り、CSVとして吐き出し、フォーム営業や他施策へ連携するという分業が現実的であり、営業活動は「分析からアプローチまでが高速に回る」方向へ進むと整理されました。
最後に、セミナー特典として、フォーム営業ツールの無料トライアルや、インテントデータを活用したアタックリストの提供が案内されました。重要なのは、ツールやデータの導入そのものではなく、「文脈を作る」「優先度を付ける」「運用を回して改善する」という一連の型を持つことです。インテントデータは、相手の状況を推定する強力な材料になり、生成AIはその材料を誰でも扱いやすい形へ変換する手段になります。
営業の世界は、根性や件数勝負だけでなく、「確度の高い当たり先を、短時間で作る」競争へ移りつつあります。インテントデータと生成AIを組み合わせることで、これまで一部の分析担当者に依存していた作業が、現場の意思決定と直結しやすくなります。まずは小さく、重点リストや過去の実績企業を起点に、インテントの仮説を立て、反応の良い切り口を積み上げていくことが、相談率アップへの最短ルートになりそうです。

