国内のリテールメディア市場規模と今後の予測

デジタルマーケティング

はじめに

デジタルマーケティングの世界では、常に新しいトレンドが生まれています。近年、特に注目を集めているのが「リテールメディア」です。リテールメディアとは、小売業者が自社の販売チャネルを活用して広告を配信するメディアのことを指します。ECサイトや店舗アプリ、店頭のデジタルサイネージなどが代表的な例です。本記事では、株式会社インティメート・マージャーのデジタルマーケティング担当者の視点から、国内のリテールメディア市場の現状と今後の予測について解説します。市場規模の推移やトレンドを把握することで、自社のマーケティング戦略に活かしていただければと思います。

国内リテールメディア市場の現状

まずは、国内のリテールメディア市場の現状を見ていきましょう。株式会社CARTA HOLDINGSと株式会社デジタルインファクトが共同で実施した調査によると、2023年のリテールメディア市場規模は推計3,625億円とされています。内訳を見ると、EC事業者(EC専業の小売企業)が3,405億円、小売企業(店舗事業者)が220億円で、EC事業者が全体の約94%を占めています。これは、ECの普及により、オンライン上の購買データを活用したリテールメディアが急速に拡大していることを示しています。ただし、小売企業のリテールメディアも着実に成長しています。セブン-イレブン・ジャパンやファミリーマートなどのコンビニエンスストアや、ヤマダデンキなどの家電量販店が、店舗アプリやデジタルサイネージを活用した広告事業を展開し始めています。また、2024年のリテールメディア市場規模は420億円と言われており、国内の小売企業におけるインストアリテールメディアの導入率は63%ということが判明しています。導入検討における課題1位は「運用ノウハウがない」ということですが、リテールメディアへの関心の高まりがうかがえます。

リテールメディアが注目される理由

では、なぜリテールメディアが注目を集めているのでしょうか。その理由は大きく3つあります。

購買データを活用した高度なターゲティング

リテールメディアの最大の強みは、小売業者が保有する購買データを活用できる点です。ECサイトでの購入履歴や、店舗での会員カード利用データなどを分析することで、ユーザーの興味関心や購買行動を詳細に把握できます。これにより、広告主は自社の商品やサービスに関心の高い層に、効果的にリーチすることが可能になります。

購買直前の消費者にアプローチできる

リテールメディアは、消費者が購買行動を起こす直前の接点に広告を配信できるのが特徴です。ECサイトで商品を探している時や、店舗で商品を手に取った瞬間に、関連性の高い広告を表示することで、購買意欲を高めることができます。これは、他の広告メディアでは実現が難しい、リテールメディアならではの強みと言えます。

広告効果の可視化が容易

リテールメディアでは、広告がどの程度売上に貢献したのかを直接的に測定できます。ECサイトでの購買データや、店舗での会員カード利用データと、広告接触データを紐付けることで、広告の効果を可視化できるのです。これにより、広告主は投資対効果(ROI)を把握しやすくなり、予算配分の最適化につなげることができます。

国内リテールメディア市場の今後の予測

それでは、国内のリテールメディア市場は今後どのように成長していくのでしょうか。電通が発表した「2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」によると、2024年のインターネット広告媒体費は前年比108.4%の2兆9124億円になると予測されています。この中でも、高い成長率を示しているのがビデオ(動画)広告です。コネクテッドTVの利用拡大やソーシャル広告の増加により、前年比112.2%の7697億円まで伸長すると見込まれています。リテールメディアにおいても、動画広告の活用が進むことが予想されます。また、CARTA HOLDINGSの調査では、2027年のリテールメディア市場規模を9,332億円と予測しています。2027年にはEC事業者の市場シェアが約85%に低下し、小売企業の市場シェアが2023年時点の約2.7倍に拡大する見通しです。つまり、実店舗を持つ小売企業のリテールメディアが、今後大きく成長していくと考えられます。

日本のリテールメディアの課題と可能性

日本のリテールメディア市場は、米国と比べるとまだ発展途上の段階にあります。米国では、リテールメディアが広告市場全体の約20%を占めるまでに成長しており、デジタル広告の新たな柱となりつつあります。一方、日本ではリテールメディアの認知度はまだ低く、本格的な普及にはまだ時間がかかりそうです。ただし、日本には米国にはない強みもあります。それは、小売業者とメーカーの緊密な関係性です。日本では、小売業者とメーカーが協力して商品開発や販促活動を行う「JBP(Joint Business Planning)」の取り組みが盛んです。この関係性を活かすことで、リテールメディアにおいても、単なる広告枠の販売ではなく、データを活用した戦略的な協業が可能になるでしょう。また、日本の消費者は、店舗での購買とオンラインでの購買を柔軟に使い分ける傾向があります。この「OMO(Online Merges with Offline)」の環境は、リテールメディアにとって追い風になると考えられます。オンラインとオフラインの購買データを統合的に分析することで、より精度の高いターゲティングや、店舗とECサイトを横断したシームレスな顧客体験の提供が可能になるからです。

まとめ

本記事では、国内のリテールメディア市場の現状と今後の予測について解説しました。2023年の市場規模は推計3,625億円で、そのうちEC事業者が約94%を占めています。一方、2027年には小売企業の市場シェアが拡大し、全体で9,332億円まで成長すると予測されています。リテールメディアが注目される理由は、購買データを活用した高度なターゲティング、購買直前の消費者へのアプローチ、広告効果の可視化が容易な点にあります。日本のリテールメディアは、米国と比べるとまだ発展途上ですが、小売業者とメーカーの緊密な関係性やOMOの環境を活かすことで、独自の成長を遂げる可能性を秘めています。デジタルマーケティング担当者の皆さまには、自社の強みを活かしつつ、リテールメディアの可能性を検討いただければと思います。購買データを活用した効果的な広告展開により、売上の向上や顧客エンゲージメントの強化につなげることができるでしょう。

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