採用プロセスを超えた候補者体験のインパクト: 企業ブランディング、顧客満足度、従業員エンゲージメント、ビジネス成果の向上

デジタルマーケティング

採用プロセス以外への候補者体験(Candidate Experience)の影響

「Candidate Experience(候補者体験:採用CX)」は、近年、人事・採用領域において注目を集めているキーワードです。多くの企業が、採用プロセスにおける候補者への対応やコミュニケーションを改善することで、優秀な人材を獲得しようと試みています。

しかし、採用CXの影響は、採用プロセスだけに留まりません。採用活動全体はもちろんのこと、企業ブランディング、顧客満足度、従業員エンゲージメント、ひいては事業成果に至るまで、企業活動の様々な側面に影響を与える可能性があります。

本稿では、採用プロセス以外の場面における採用CXの影響について、具体的な事例を交えながら解説していきます。

企業ブランディングへの影響

採用CXは、企業のブランドイメージを形成する上で重要な役割を果たします。応募者は、採用プロセスを通じて、企業の文化、価値観、社員の人間性などを感じ取ります。そして、その経験に基づいて、企業に対する印象を形成していきます。

もし、応募者が採用プロセスにおいて、不誠実な対応をされたり、情報提供が不足していたりする場合、その企業に対してネガティブな印象を持つ可能性があります。

例えば、応募書類を送付後、数週間経っても連絡がない場合や、面接の約束を何度も変更された場合、応募者は「この企業は、応募者を軽視しているのではないか」という印象を抱きかねません。

このようなネガティブな採用CXは、企業のブランドイメージを著しく損なう可能性があります。現代社会において、情報は口コミやSNSを通じて瞬く間に拡散します。企業の評判は、一度傷つけられると、回復までに多大な時間と労力を要します。

一方、応募者一人ひとりに寄り添った丁寧な対応や、企業の魅力が伝わるようなコミュニケーションを心がけることで、応募者は企業に対してポジティブな印象を抱くようになります。

例えば、選考結果の連絡に際し、合否に関わらず、応募者一人ひとりの個性や強みを認める言葉を添えたり、今後のキャリアに役立つフィードバックを提供したりすることで、応募者は企業の誠実さを感じ、好印象を持つでしょう。

このようなポジティブな採用CXは、企業のブランドイメージ向上に大きく貢献します。そして、企業理念やビジョンに共感した優秀な人材が、積極的に応募してくるという好循環を生み出すことができるのです。

顧客満足度への影響

採用CXは、企業の顧客満足度にも影響を与える可能性があります。

応募者の中には、すでにその企業の顧客である場合や、将来的に顧客となる可能性がある場合があります。彼らが採用プロセスで不快な思いをした場合、その企業の製品やサービスに対する印象が悪くなり、顧客となること自体をためらったり、購入を控える可能性も出てきます。

例えば、あるECサイトを利用している人が、その企業の採用に応募したとします。そこで、採用担当者の対応が横柄で、企業文化にも疑問を感じたとします。その場合、その応募者は、たとえ採用プロセスとは関係なくとも、そのECサイトの利用を躊躇するようになるかもしれません。「この企業は、顧客に対してもこのような対応をするのではないか」という不安を抱くからです。

逆に、採用プロセスを通じて、企業の理念やビジョン、社員の行動規範などに共感し、好印象を抱いた場合、その企業の製品やサービスに対しても、ポジティブなイメージを持つようになり、顧客となる可能性が高まります。

このように、採用CXは、顧客満足度、ひいては企業の売上や利益にも影響を与える可能性があるのです。

従業員エンゲージメントへの影響

採用CXは、従業員のエンゲージメントや定着率にも影響を与える可能性があります。

採用プロセスでのポジティブな経験は、入社後の従業員満足度やエンゲージメントを高めることにつながります。 企業理念への共感、透明性の高い選考プロセス、そして、入社後のキャリアパスに対する期待感などが、従業員のモチベーションやエンゲージメントを向上させます。

一方、採用プロセスでのネガティブな経験は、従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させ、離職率の増加につながる可能性があります。 入社前に抱いていた企業や仕事内容に対する期待と現実とのギャップや、入社後のサポート体制の不足などが、従業員のエンゲージメントを低下させる要因となります。

従業員のエンゲージメントは、企業の業績に大きく影響します。エンゲージメントの高い従業員は、企業目標の達成に積極的に貢献し、生産性も高まります。

事業成果への影響

上記のような影響から、採用CXは企業の事業成果にも間接的に影響を与えます。

企業ブランディングの向上は、顧客獲得や売上増加、優秀な人材の確保につながります。また、従業員エンゲージメントや定着率の向上は、生産性向上や人材育成コストの削減につながります。

このように、採用CXは、採用活動の成果だけでなく、企業全体の成長や発展にも大きく寄与するのです。

終わりに

採用CXは、単なる採用活動の一環として捉えるべきではなく、企業活動全体を左右する重要な要素として認識する必要があります。

企業は、採用活動のみならず、企業活動全体を通して採用CXを向上させるための取り組みを行うことが重要です。

具体的には、応募者一人ひとりに寄り添った丁寧な対応、企業の魅力が伝わるコミュニケーション、そして、透明性の高い選考プロセスを構築することで、応募者満足度を高め、企業のブランドイメージ向上、顧客満足度の向上、従業員エンゲージメントの向上、そして、最終的には事業成果の向上へと繋げていくことができるでしょう。

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