モバイルコマース時代のAmazon戦略とLTVの向上法
本記事は、株式会社ウフル マーケティング&セールス部 部長 番 優仁氏、株式会社ウブン Executive Consultant 藤田 由来氏、株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島 亮次氏の3名によるセミナーの内容をまとめたものです。
登壇者紹介
- 株式会社ウフル マーケティング&セールス部 部長 番 優仁氏大学卒業後、株式会社オプトに入社し、小売業界に特化したオムニチャネル支援を実現する組織の立ち上げに携わりました。アカウントエグゼクティブとして、小売クライアントのデジタルマーケティング支援に従事した経験を持ちます。2021年には株式会社ウブンに入社し、さまざまなクライアントのAmazonでの売上拡大に貢献しました。現在は、マーケティングとセールス領域の責任者として活動しています。
- 株式会社ウブン Executive Consultant 藤田 由来氏ソニーグループのアドテク会社で、約4年間ダイレクトマーケティングに従事しました。2021年からは、同社が保有するWeb行動データを活用した分析ソリューション事業の立ち上げに携わりました。2022年より株式会社ウブンにSenior Account Executiveとして参画し、前職での経験を生かして、Amazonの購買データ分析を活用し、メーカー様の成長を支援しています。
- 株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島 亮次氏株式会社インティメート・マージャーを創業し、2019年10月に東証マザーズへ上場を果たしました。上場後は、クッキー規制や個人情報保護法に関する総務省のワーキンググループで講演を行うなど、多くの大手新聞社で有識者として取り上げられています。国内外の大手プラットフォーマーに向けて、クッキー規制に対するソリューションを提供しています。
Amazon市場の現状と消費者動向
藤田氏によると、EC化率の上昇に伴い、Amazonの市場は拡大しており、出店するメーカーも増加傾向にあるそうです。特に、スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアで商品を販売しているメーカーが、EC化率を高めるためにAmazonや楽天に出店するケースが増えているとのことです。
個人情報の観点から、最初の購入を自社ECサイトで行うことに抵抗を感じる若い方が増えてきているようです。そのため、新規顧客を獲得する際には、こういったモールを活用することが消費者やメーカーの双方にとって有効な手段になりつつあると感じています。
株式会社ウブン Executive Consultant 藤田 由来氏
顧客獲得・維持の課題
簗島氏は、自社ECとモールの役割分担について言及しました。自社ECは、ファンサイトやコミュニティサイトのように、自社商品を優先的に紹介する場として活用される一方で、Amazonでは競合商品への乗り換えが容易であるため、LTV(顧客生涯価値)が低くなりやすいと指摘しています。
AmazonのLTVが低い理由は非常にシンプルで、競合が多く、ブランドスイッチが非常に容易であるためです。特定の商品を検索すると、スポンサード広告に新しい魅力的な商品が表示され、それを購入してしまうことがよくあります。こうした浮気心を刺激するユーザーインターフェースは、Amazonが自社の顧客価値を高めるためには重要ですが、その一方で、メーカーが自社商品のLTVを上げるという視点とは異なる方向性になってしまうことがあると考えられます。
株式会社インティメート・マージャー 代表取締役 簗島 亮次氏
データ活用によるLTV向上の可能性
藤田氏は、自社ECとAmazonのデータ連携の重要性を強調しました。自社ECのデータをAmazon Marketing Cloud(AMC)にアップロードし、休眠ユーザーに対してAmazonのビッグセール時にアプローチするなど、シームレスな施策を行うことで、LTVの向上が期待できると述べています。
自社ECのデータをAMCにアップロードすることで、自社ECも含めたLTVの状況を把握しやすくなります。また、Amazon広告のROAS(広告費用対効果)を自社ECの貢献分も加味して評価することで、より積極的な投資判断が可能になります。さらに、自社ECで既に獲得している既存顧客に対しては、アプローチを制限するための除外設定にも活用できるでしょう。特に、自社ECの休眠顧客に対しては、Amazonのビッグセールのタイミングで再度アプローチを行うことが今後の重要な鍵となると考えています。
株式会社ウブン Executive Consultant 藤田 由来氏
簗島氏も、インティメート・マージャーが保有する多くの自社ECサイトの休眠ユーザーデータをAMCと連携させ、Amazonのセール時期に休眠ユーザーを再活性化させる施策を提案しました。これにより、効率的なユーザー復帰を図ることが期待されています。
まとめ
モバイルコマース時代において、自社ECとAmazonをはじめとするモールの使い分けがますます重要になっています。自社ECは、顧客とのコミュニケーションやロイヤリティを高める場として活用し、Amazonは新規顧客を獲得する場として位置づけることで、それぞれの役割を明確にすることがLTVの向上につながります。さらに、自社ECとAmazonのデータを連携することで、休眠ユーザーの再活性化など、より効果的なマーケティング施策が可能になるでしょう。